質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第一九号

電気主任技術者・電気管理技術者が不足する時代における電気保安業務に従事する者の確保等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年二月二十五日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   電気主任技術者・電気管理技術者が不足する時代における電気保安業務に従事する者の確保等に関する質問主意書

 経済産業省産業保安グループ電力安全課作成の「電気保安人材をめぐる課題の検討状況について」という資料によれば、電気保安業務に従事する者がこの十年で不足すると予想され、その対策として、政府は、若者向けの動画を作るなどして、電気保安技術者という職業そのものの知名度を向上させる取組を行っている。この取組は一定の成果を上げているが、知名度を向上させることが、入職者増加に結びつくとは限らない。

 その理由として、機械器具(平成十五年経済産業省告示第二百四十九号第二条の機械器具をいう。以下同じ。)の値段が高いこと、また、第三種電気主任技術者の試験難度は、高卒程度と言われるが、実際には電気系の科目を履修した大卒者ですら、かなり真面目に勉強しなければ容赦なく落ちる難関資格であることが挙げられる。その割に、電気管理技術者の平均年収は三百五十万円から五百万円程度であり、インボイス制度が施行されれば額面売上の一割を問答無用で消費税として持っていかれるのであるから、年収面のテコ入れがなければ、若者が難関資格の第三種電気主任技術者を取得して、三年間も誰かに弟子入りしながら、電気管理技術者を目指そうとは思わないであろう。とりわけ、二十代後半で転職歴がほとんどない第三種電気主任技術者資格を所持する者など、転職市場においてはめったにお目にかかれない存在であり、待遇面で電気保安技術者業界が対抗しろと言われても難しい。そうなると、電気保安ができる者を確保していく道は限られる。年収面の魅力を増やすか、有資格者が定年退職後も引き続き電気管理技術者としてがんばってもらうか、機械器具を安くする(校正に係る経費を含む)か、本格的に副業として認めるといった方策が必要となる。

 右を踏まえて、以下質問する。

一 電気管理技術者に対するインボイス制度の施行について

1 電気管理技術者であっても、売上如何にかかわらず消費税を納入しなければ取引するうえで不利となったが、政府は、なぜ電気管理技術者が将来不足すると分かっていながら、電気管理技術者をインボイス制度の例外としなかったのか。政府の見解如何。

2 インボイス制度から逃れるには、要するに買い手側が適格請求書を請求しなければよい話であるところ、政府は、電気工作物の保安を外部選任ないし外部委託した相手方に対し、適格請求書を請求しない予定はあるか。また、地方公共団体は、当該地方公共団体が設置した電気工作物の保安を外部選任ないし外部委託した相手方に対し、適格請求書を請求しないことができるか。

二 政府は、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成十一年法律第百十七号。以下「PFI法」という。)を活用するなどして、自らが利用する施設であっても、外部の民間企業に電気主任技術者の選任を求めることがある。しかし、電気主任技術者を外部に求めることは、政府職員が電気主任技術者資格を取得しても、選任される現場がなくなるということであり、定年退職後に電気管理技術者として活躍しようにも、実務経験が足りずに断念するということが起こりうる。PFI法ができたのは平成十一年であり、二十年以上の歳月が経ち、民間企業に十分な電気主任技術者がいた時代は終わりを迎えた。政府は、今後は自らが電気主任技術者を選任して、老後は電気管理技術者としてもう一花咲かせたい職員に実務経験を積ませるなどして、政府内部でも電気管理技術者となれる人材を育てておくべきではないか。政府の見解如何。

三 機械器具については、高価であることから、通常はレンタルで済ませることも多いが、そのレンタル料金すらかなり高い。電気管理技術者として働くに当たっては、機械器具の他に、機械器具を現場に運搬するための車を用意しなければならず、車と機械器具を要することが、先立つものがない若者が入職するハードルとなっている。

1 現時点で、若者が電気管理技術者として働くに当たり開業資金として利用できる給付型の制度があれば例示いただきたい。

2 インボイス制度が始まれば自営業者たる電気管理技術者は職業としての魅力が下がるのであるから、貸付では若者の入職がほとんど増えないと思われるが、今後、電気管理技術者の減少が見込まれる中、若者向けに開業資金の一部を政府から給付する予定はあるか。

四 電気主任技術者の確保に関して、最初から兼任を認めてしまうという緩和方法も考えられる。すなわち、兼任要件である最大電力が二千キロワット未満かつ受電電圧が七千ボルト以下の電気工作物の主任技術者であれば、常勤する場所又は自宅から二時間以内であることを条件に常駐要件をなくす形で、普段は電気保安業務とは直接関係のない業務に従事している者を電気主任技術者に選任するのである。このやり方が認められれば、機械器具の一部を自己負担で用意することはなくなるから、電気保安業務に従事する者の人数を増やすことはできるであろう。実際、過去に電気主任技術者に選任されていながら、人事ローテーションや転職等によって今は選任されていない者もいると思われる。

 政府は、主任技術者制度の解釈及び運用(内規)の六に掲げる要件の全てに適合する場合、当該電気主任技術者が他の事業場で選任されていなくとも、常勤する場所又は自宅から二時間以内であれば常駐要件を付さずに電気主任技術者の選任を認めることはあるのか。政府の見解如何。また、今後、主任技術者制度の解釈及び運用(内規)の六に掲げる要件の全てに適合する場合、当該電気主任技術者が他の事業場で選任されていなくとも、常勤する場所又は自宅から二時間以内であれば常駐要件を付さずに電気主任技術者の選任を認めるよう、規則を改正する予定はあるか。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。