質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第三号

日本商工会議所が政府に導入を促している二対一ルールに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年一月十七日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   日本商工会議所が政府に導入を促している二対一ルールに関する質問主意書

 イギリスではキャメロン首相により「One in Two out」、アメリカではトランプ大統領により「Two for One rule」と称して、「新しい規制を一つ作るなら、いらない規制を二つ廃止しなければならない」というルールが導入された(以下、このようなルールを「二対一ルール」という。)。規制が増え続けると、それに対応するだけの体力がある企業はともかく、そのような体力がない中小企業にとっては、負担が重いため、このように規制を緩和していくルールを導入することは中小企業支援策として位置づけられる。

 時代や技術の進歩によって新しい規制は必要になる。しかし、単に増やし続けると、その規制に対応するためのコストも増大し、社会の非効率が大きくなることは容易に想像される。総務省行政評価局が平成三十年六月に公表した「許認可等の統一的把握の結果について」(以下「総務省資料」という。)によると、許認可等の根拠条項等数は平成十四年三月三十一日では一万六百二十一、平成二十九年四月一日では一万五千四百七十五と推移している。つまり、十五年間で五千近く増えており、日本では一日に約一本のペースで規制が増え続けていると考えられ、日本では規制がいとも簡単に作られる現状であると言える。一方、既存の規制を廃止にするためには事前調査や規制擁護派の説得など、多大な政治的コストを要するためにわが国ではなかなか規制が減りにくい状況である。前述の総務省資料によると、平成二十七年四月二日から平成二十九年四月一日までの間の法律の制定・改正による許認可等の根拠条項等の新設数は五百二十四、廃止数は百十四であり、前述の二対一ルールに対して、いわば逆五対一ルールが実施されていると言える。

 日本商工会議所が令和三年十月二十一日に公表した「二〇二一年度規制・制度改革に関する意見」(以下「商工会意見」という。)に「時代や環境の変化にそぐわなくなった規制の放置を防ぐとともに、事業者が負担する規制遵守費用の総量を増やさない効果を持つ「One-in/Two-out」といった米英等で採用されている制度の導入を検討されたい」という記述があり、日本で二対一ルールのようなルールを導入することに関する需要は大きいものと思われる。

 右を踏まえて、以下質問する。

一 日本商工会議所は商工会意見を「政府や関係省庁など関係先に提出し、実現を働きかけてまいります」と表明しているが、政府は、商工会意見を実際に受領したか。受領したのであれば、受領した部署を明らかにされたい。

二 商工会意見中「時代や環境の変化にそぐわなくなった規制の放置を防ぐとともに、事業者が負担する規制遵守費用の総量を増やさない効果を持つ「One-in/Two-out」といった米英等で採用されている制度の導入を検討されたい」という記述に関し、政府の見解如何。

三 二対一ルールを導入することで、法律の制定・改正による許認可等の根拠条項等の廃止よりも法律の制定・改正による許認可等の根拠条項等の新設が五倍近く多い状況を一変しうる可能性があると考えるが、政府の見解如何。

 また、二対一ルールを導入することで、政府が積極的に規制緩和と経済的コストの削減に取り組むことが期待されると考えるが、政府の見解如何。

四 規制の総数が減って簡素になることは、法知識分野にコストをかけづらい中小企業や、企業のスタートアップに対して有利となり、民間の新しいアイデアや挑戦を阻害しないことによって経済成長を促進させると考えるが、政府の見解如何。

五 法令上政府が導入する規制(行政機関が行う政策の評価に関する法律施行令(平成十三年政令第三百二十三号)第三条第六号の規制をいう。以下同じ。)について、努力義務や法令上の根拠を持つ要請(新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成二十四年法律第三十一号)に基づく政府対策本部長の要請などを指し、法令上の根拠がない要請は含まないものとする。以下同じ。)は含まれているか。また、行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成十三年法律第八十六号)第二条第二項の「政策」には、政府以外の者に対し努力義務のみを課す政策や、法令上の根拠を持つ要請のみを行う政策も含まれ得るか。

六 政府が、何らかの規制を廃止する際の「廃止の基準」を定めた法令はあるか。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。