質問主意書

第207回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二〇七第三九号
  令和四年一月七日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員山添拓君提出東京外かく環状道路事業、リニア中央新幹線事業及び大深度地下使用法に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山添拓君提出東京外かく環状道路事業、リニア中央新幹線事業及び大深度地下使用法に関する質問に対する答弁書

一の1の(1)について

 御指摘の「支持地盤がなく、したがって大深度地下の範囲が特定されているとは言えない地域」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、一般的に、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法(平成十二年法律第八十七号。以下「大深度地下法」という。)第二条第二項に規定する事業者が、大深度地下法第十六条の規定によって使用の認可を受けようとする場合において、申請に係る事業が同条第二号に掲げる要件に該当しないときは、国土交通大臣は、使用の認可をすることはできない。

一の1の(2)について

 御指摘の「ボーリング調査の結果N値五十に達しなかった地域」が具体的にどのような範囲を指すのか明らかではないが、東京外かく環状道路のうち東京都練馬区から同都世田谷区までの区間(以下「東京外環(関越~東名)」という。)の工事における同都調布市での地表面の陥没及び地中の空洞に関する事故(以下「陥没事故」という。)が発生した箇所の周辺において、東日本高速道路株式会社が原因究明のために実施したボーリング調査の結果によれば、陥没事故が発生した箇所の周辺の地盤において、地盤強度を示す指数であるいわゆるN値(以下「N値」という。)について、多くの地点においてN値五十以上の数値が見られることから、N値五十以上の数値を満たさない地点があるからといって、直ちに大深度地下法第十六条第二号に掲げる要件に該当しないこととなるとは考えていない。

一の1の(3)について

 一般的に、工事を原因として地盤の緩みが生じ、土地所有者の土地利用に影響が生ずるなど土地所有者へ被害を与えた場合には、当該工事の施工者において適切に対応すべきものと認識している。

 その上で、陥没事故が発生した箇所の周辺においては、陥没事故の原因究明のため実施した地盤調査及びその後に実施した坑内調査の結果から地盤の緩みが生じている範囲が特定されており、東日本高速道路株式会社が、この範囲の地盤を対象として、元の地盤強度に戻すことを基本に、地盤補修を実施するものと承知している。

一の2の(1)及び(2)について

 東日本高速道路株式会社が陥没事故を受けシールドトンネル工事を停止した後から現時点までに、陥没事故が発生した箇所の周辺において、御指摘の「建物」の「変状が生じている」事象は確認されていないものと承知している。また、同社が陥没事故が発生した箇所の周辺で実施している水準測量の結果によると、令和二年十月三十一日以降、陥没事故が発生した箇所の周辺における御指摘の「地盤の変状」について有意な変位は確認されていないものと承知している。

一の2の(3)及び(4)について

 東日本高速道路株式会社において、調布市及び調布市議会から、地域の不安の解消のため、入間川東側エリアの地盤の調査を実施し、その結果について速やかに公表することを求められたため、有識者にも相談の上、「調布市域(入間川東側エリア)における追加調査」(以下「追加調査」という。)を実施し、その結果を令和三年十二月十四日に公表したものと承知しており、引き続き、同社が地域住民の御意見を個別に伺いながら、有識者にも相談しつつ、必要な調査について検討していくものと承知している。

 また、追加調査においては、過去の地盤状況についても、地歴調査や既往のボーリング調査の結果により、確認がなされているものと承知している。

一の2の(5)について

 東日本高速道路株式会社及び中日本高速道路株式会社においては、地盤の調査を行うに当たって、調査に伴う交通規制による影響を受ける周辺の住民に対し、調査の目的、内容、日程等について、事前に説明しているものと承知している。

 また、東日本高速道路株式会社において、令和三年十二月十七日及び十八日に、陥没事故が発生した箇所の周辺地域の住民に対する説明会を実施し、追加調査の結果について説明を行っているものと承知している。

一の2の(6)について

 お尋ねの理由については、地域の地盤に対する不安の解消のため、中日本高速道路株式会社が深層ボーリング調査を実施することにより、速やかな対応をするためのものと承知している。また、当該調査の調査費用の負担については、東日本高速道路株式会社と御指摘の「本線トンネル(南行)東名北工事」の受注者との間で、今後、調整がなされるものと承知している。

一の3の(1)について

 陥没事故が発生した箇所の周辺で影響を受けた家屋等の補修及び地盤補修への対応並びに「東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会」(以下「有識者委員会」という。)が令和三年三月十九日に取りまとめた再発防止対策の確実な実施については、事業費の増加要因となる可能性があると認識している。

 また、事業費の具体的な増加額について、現時点ではこれらの対策の具体的な内容が決まっていないため、見通しをお示しすることは困難である。当該増加額に係る負担の在り方については、事業者と受注者との間で、今後、調整がなされるものと承知している。

一の3の(2)及び(3)について

 東京外かく環状道路のシールドトンネル工事については、陥没事故を受けて、各シールド掘削工事を一時中止しているところであり、お尋ねの「手続き」に関しては、工事の一時中止に当たって、工事請負契約書に基づき、発注者である関東地方整備局、東日本高速道路株式会社及び中日本高速道路株式会社から各受注者に対して工事の中止内容を通知するとともに、各受注者から各発注者に対して、中止期間中の工事現場の管理等に関して記載した基本計画書が提出されているところである。

 その上で、全てのシールド掘削工事に関する「文書名」、「発出日」及び「工事の中止期間」に係るお尋ねについて網羅的にお答えすることは、「文書」の量が膨大であることから困難である。

一の3の(4)について

 そもそも、事業評価においては、貨幣換算した便益を費用で除した費用便益比は重要な要素の一つであるが、事業評価は、これに限らず、環境への影響、災害時における人や物資の輸送の確保といった貨幣換算が困難な効果、さらには、事業の実施環境等の視点により総合的に実施するものである。その上で、今後、東京外環(関越~東名)の工事を進める中で、現場の状況変化等により、事業費の変更が見込まれる場合には、適切に事業評価を実施してまいりたい。

一の4の(1)及び(2)について

 御指摘の電子メールを調布市から受信した部署については、国土交通省においては、関東地方整備局東京外かく環状国道事務所計画課であったが、当該電子メールについては、個人情報が含まれていたことに加え、保存期間を一年未満とすることができる行政文書に該当していたことから、国土交通省行政文書管理規則(平成二十三年国土交通省訓令第二十五号)に基づき、同課の課長の判断で既に廃棄されている。また、同省においては、「メールとそれに含まれる情報を共有した他の部署」はなく、「メールの全部又は一部を転記した文書を作成したこと」もない。なお、一般的に、同省においては、「請求者の個人情報が漏えい」することは不適切であると認識しているが、同市における個人情報の取扱いについては、同市において判断すべきものであり、同省として同市に対し意見を述べる立場にはないと考えている。

 当該電子メールを同市から受信した部署(同省における部署を除く。)については、東日本高速道路株式会社においては関東支社東京外環工事事務所工務課、中日本高速道路株式会社においては東京支社東京工事事務所工務課であるが、当該電子メールについては、各会社の規程にのっとり、既に廃棄されたものと承知している。また、これらの部署についても、「メールとそれに含まれる情報を共有した他の部署」はなく、「メールの全部又は一部を転記した文書を作成したこと」もないものと承知している。東日本高速道路株式会社及び中日本高速道路株式会社の「認識」に関するお尋ねについては、政府としてお答えする立場にない。

 当該電子メールに関するこれ以上の詳細に係るお尋ねについては、当該電子メールが既に廃棄されており、また、詳細な事実関係が明らかではないことから、お答えすることは困難である。

一の4の(3)から(6)までについて

 国土交通省において、御指摘の電子メール以外に、「情報公開請求者名などの個人情報の漏えいに当たる情報を受け取った」という事実や、当該電子メールより前に、「情報請求者名を含む情報開示請求に関する情報の提供を受けていた」という事実は確認されていない。また、御指摘の「意見照会書による通知」を調布市から受け取った事実や、同市に対し、「情報公開請求者の氏名、住所などの個人情報や、情報公開請求書の提供を求めた」という事実はない。

 さらに、これらについては、東日本高速道路株式会社及び中日本高速道路株式会社においても同様であったと承知している。

一の4の(7)について

 御指摘の「外環道事業をめぐる情報公開請求者の個人情報の漏えいが明らかになったこと」を受けた調布市における個人情報の取扱いについては、同市において判断すべきものであり、国土交通省としては、対策を講ずる立場にないと考えている。また、東日本高速道路株式会社及び中日本高速道路株式会社に関するお尋ねについては、政府としてお答えする立場にない。

二の1の(1)について

 東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」という。)によれば、JR東海が実施している調査掘進は、令和三年十一月二十九日現在、北品川工区における北品川非常口近傍において行われているとのことである。

二の1の(2)について

 JR東海が実施している調査掘進については、外形的には御指摘の「初期掘進」に相当すると考えられるが、JR東海によれば、調査掘進は、本格的な掘進の実施に先立ち、掘進時の地表の変位や振動等を計測することで、予定している施工方法の安全性や周辺への影響の有無等を確認するものであり、また、調査掘進の結果がまとまり次第、中央新幹線の東京都品川区から愛知県名古屋市までの区間(以下「中央新幹線(品川~名古屋)」という。)の計画路線周辺の関係住民に対して説明を行い、当該説明を行う前に本格的な掘進を開始することはないとのことを踏まえれば、御指摘の「初期掘進」とは位置付けが異なるものと認識している。

二の1の(3)について

 お尋ねについては、JR東海が判断すべきものであると認識しており、政府としてお答えする立場にない。

二の2の(1)について

 お尋ねの「家屋調査を実施する理由」は、JR東海の判断によるものであって、政府としてお答えする立場にない。

二の2の(2)について

 JR東海によれば、大深度地下法第二条第一項に規定する大深度地下(以下「大深度地下」という。)における中央新幹線(品川~名古屋)のシールドトンネル工事に伴う事前の家屋調査(以下「家屋調査」という。)の対象となる家屋の軒数については、令和三年十二月現在、市区町村ごとに次のとおりであるとのことである。

 東京都品川区 約千九百軒

 同都大田区 約千百軒

 同都世田谷区 約三百軒

 同都町田市 約千軒

 神奈川県川崎市中原区 約五百軒

 同市高津区 約五百軒

 同市宮前区 約千百軒

 同市麻生区 約九百軒

 愛知県春日井市 約千四百軒

 同県名古屋市守山区 約二百軒

 同市北区 約九百軒

 同市東区 約五十軒

 同市中区 約五十軒

 また、JR東海によれば、家屋調査は、対象となる家屋の住民の協力を得て、準備が整った箇所から順次実施しているとのことである。

二の2の(3)について

 お尋ねについては、JR東海が判断すべきものであると認識しており、政府としてお答えする立場にない。

二の3の(1)について

 JR東海によれば、①大深度地下における中央新幹線(品川~名古屋)のシールドトンネル工事に当たり支持地盤の特定に用いたボーリング調査の件数、②①のうちルートの直上で実施した件数及び③②のうち大深度地下のトンネルの下端まで達している件数については、市区町村ごとに次のとおりであるとのことである。

 東京都品川区 ①十九件 ②零件 ③零件

 同都港区 ①二件 ②零件 ③零件

 同都大田区 ①二十三件 ②一件 ③零件

 同都世田谷区 ①一件 ②零件 ③零件

 同都町田市 ①五十一件 ②二件 ③零件

 神奈川県川崎市中原区 ①二十一件 ②一件 ③一件

 同市高津区 ①六件 ②零件 ③零件

 同市宮前区 ①七十三件 ②五件 ③二件

 同市麻生区 ①三十二件 ②一件 ③一件

 愛知県春日井市 ①五十七件 ②零件 ③零件

 同県名古屋市守山区 ①十件 ②零件 ③零件

 同市北区 ①二十六件 ②一件 ③零件

 同市東区 ①三件 ②零件 ③零件

 同市中区 ①十六件 ②一件 ③一件

 同市西区 ①五件 ②零件 ③零件

 また、JR東海によれば、③に挙げたものの場所は、次のとおりであるとのことである。

 神奈川県川崎市中原区等々力一丁目

 同市宮前区梶ヶ谷

 同市宮前区犬蔵三丁目

 同市麻生区片平五丁目

 愛知県名古屋市中区丸の内一丁目

二の3の(2)について

 JR東海によれば、御指摘のような計画は有していないが、必要に応じて、二の3の(1)についてで述べたボーリング調査以外のボーリング調査を実施する予定であるとのことである。

二の4について

 政府としては、JR東海において地域住民の懸念と不安を払拭する努力が継続されることが重要であると認識しており、平成二十六年十月十七日付けで行った全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号)第九条第一項の規定による工事実施計画の認可の際に、「地域の理解と協力」を得るよう指導を行ったほか、その後も随時必要な助言及び指導を行ってきているところである。JR東海においては、これまでも地域住民向け説明会を行ってきたところであり、これらの助言及び指導を踏まえた対応に努めているものと承知している。

三の1及び2について

 御指摘の「本線トンネル工事はシールド工法を採用しており、地上への影響は生じないと考えております」、「強固な支持地盤上面より更に深い大深度地下部分を、数多くの実績があるシールド工法で施工するため、地盤沈下が発生することはないと考えています」及び「適切な施工管理を行えば、地上の土地利用に支障は生じないものと考えております」との説明については、シールドトンネル工事については、適切に工事が行われれば地上への影響は生じないという趣旨であり、適切に工事が行われることを前提とした説明であると認識している。

 他方、陥没事故については、有識者委員会において、シールドトンネル工事の施工がその要因と推定され、当該施工に課題があったことが確認されたところであり、適切に工事が行われていなかったと認識している。

三の3について

 陥没事故は、有識者委員会において、シールドトンネル工事の施工がその要因と推定され、当該施工に課題があったことが確認されたものであり、大深度地下法について「廃止すべき」とは考えていない。