質問主意書

第207回国会(臨時会)

質問主意書

質問第四四号

北海道太平洋沿岸における赤潮被害は災害級との認識に立った救済に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十二月二十一日

紙 智子


       参議院議長 山東 昭子 殿



   北海道太平洋沿岸における赤潮被害は災害級との認識に立った救済に関する質問主意書

 私は二〇二一年十月十二日に「北海道太平洋沿岸における漁業被害の調査と原因究明、救済に関する質問主意書」(第二百五回国会質問第三二号。以下「質問第三二号」という。)を、同年十一月十日に「北海道太平洋沿岸における赤潮被害から漁業・水産加工業を救済することに関する質問主意書」(第二百六回国会質問第三号。以下「質問第三号」という。)をそれぞれ提出した。

 質問主意書提出の前後、十月には釧路沿岸地域に二回調査に入り、畠山和也元衆議院議員が日高沿岸地域に、十一月には日本共産党北海道道議団と十勝沿岸地域に調査に入った。これらの調査を踏まえ、二〇二一年十一月二十六日には、岩渕友参議院議員、日本共産党北海道委員会、道議団とともに金子原二郎農林水産大臣に漁協と漁業者への特別支援を求める要請を行った。

 政府は二〇二一年十一月二十六日に令和三年度補正予算案を閣議決定し、北海道太平洋沿岸における赤潮被害対策として「北海道赤潮対策緊急支援事業」で十五億円が計上された。

 今回の北海道太平洋沿岸における赤潮被害は過去に例を見ない災害級の被害である。北海道庁の調査によると、赤潮の被害額は約八十一億九千万円(二〇二一年十二月十日時点)であるが、調査中とされる日高地方の被害額九十億円を加えると、約百七十億円にのぼる被害になる。

 国内で最もひどかった赤潮被害は一九七二年の播磨灘と紀伊水道海域で発生した被害であり、被害額は約七十一億円にのぼるが、今回の被害は、この額をはるかに上回る被害になる可能性がある。自治体や漁協、漁業者は「災害級の赤潮被害」、「激甚災害だ」と訴えているが、こうした認識に立って、既存の枠を超えた支援が必要だと考えるので、以下質問する。

一 「北海道赤潮対策緊急支援事業」は、「環境・生態系保全緊急対策事業」(十四億二千万円)と、赤潮被害の防止・軽減を図るための技術開発や調査を行う「漁場環境改善対策事業」(七千六百万円)の二本柱となっている。

 私が提出した質問第三二号及び質問第三号や、その後明らかになった被害を踏まえて、補正予算において、どのように具体化されたのか、以下質問する。

1 質問第三二号に対する答弁(内閣参質二〇五第三二号)について

(1) 「「漁業者が自前で行った調査への支援」を含むその他の国の支援策については、漁業被害の原因及び状況を把握した上で、政府として、どのような対応が可能か検討してまいりたい」との答弁であったが、補正予算で措置した内容を明らかにされたい。

(2) 「通常、コンブは茶色であるが、お湯をかけたように緑色に変色しており、乾燥させても黒くならず赤茶色や黄色になり、加工用にせざるを得ないほど質が低下している」こと、「コンブ漁も品質が低下し、収入が激減するだけにとどまらず、来年以降に水揚げ予定の若いコンブに被害が及べば、胞子が根付かなくなり、元に戻るには三年から四年かかるといわれる」ことを踏まえ支援策を求めたところ、「漁業災害補償法において、漁獲金額又は生産金額の減少について補填が行われる」旨の答弁であった。小規模沿岸家族漁業者は、コンブの質の低下による減収にとどまらず、漁場環境が改善しなければ、来年度のコンブ漁にも大きな影響が懸念される。補正予算で措置した内容を明らかにされたい。

2 質問第三号に対する答弁(内閣参質二〇六第三号)について

(1) 漁協への支援について、「今般の漁業被害により影響を受ける漁業協同組合に対しては、どのような対応が可能か検討してまいりたい」旨答弁しているが、補正予算で措置した内容を明らかにされたい。

(2) 水産加工業者、被用者への支援について、「今般の漁業被害が具体的にどのような影響を及ぼしているかについては、現時点において、北海道庁からも報告を受けておらず、承知していない」旨答弁しているが、水産庁が十月に派遣した調査で把握できなかったのか。また、北海道庁に聞き取りを行ったのか。さらには補正予算で措置したのか、明らかにされたい。

(3) 被害魚介類の死骸処理や漁場修復のために補正予算で措置した内容を明らかにされたい。

(4) サケの卵や稚ウニ、コンブ資源を確保し増殖するために補正予算で措置した内容を明らかにされたい。

二 総務省は、赤潮被害対策について特別地方交付税で措置する方針を示しているが、総額二十一億円とも言われる「北海道赤潮対策緊急支援事業」に関して、地方負担分はいくらになる見通しなのか、明らかにされたい。

三 今回の赤潮被害は災害級との認識に立った上で、今後の漁業と漁村地域の支援について質問する。

 質問第三号において「今後の漁業・水産業への影響をどのように認識しているか」と質問したところ、「「今後の漁業・水産業への影響」の意味するところが必ずしも明らかでないが、仮に将来分も含めた今般の漁業被害の総額を指すのであれば、現在、北海道庁において漁業被害の状況を調査中であることから、予断をもってお答えすることは困難である」旨答弁している。

 サケやウニで四年、ツブは七年と言われるように漁業が復興するまでに長い時間を要し、その間、収入が激減あるいは絶たれた状態が続く。

 潜水ウニ漁は、漁協内でウニ部会を組織して行っているが、再開の見込みがない中で漁業をやめる漁業者が出ればウニ漁の体制を維持できなくなる。また、十人前後で漁を行っている定置網についても漁業をやめる漁業者が出れば、定置網を継続することが困難になる。赤潮被害に燃油高騰が重なり経営に打撃を与えている中で、漁業を再建できる見通しと支援がなければ、漁村地域の崩壊を招きかねないと危惧する声が出ている。改めて質問するが「今後の漁業・水産業への影響をどのように認識しているか」、政府の見解を明らかにされたい。

四 私は、質問第三号において、二〇二〇年九月から十月にカムチャッカ沖で赤潮被害を発生させた「カレニア・セリフォルミス」がロシア海域から親潮に乗って流れ込んだ可能性があるとし、北海道周辺海域における海水のモニタリング調査などの観察や注意喚起をどのように行ったのかと質問したところ、「国立研究開発法人水産研究・教育機構から、地方独立行政法人北海道総合研究機構に対し、生物種及びその観察手法に関する情報提供や注意喚起を行っている」旨答弁するだけで内容を明らかにしなかった。

1 国から地方独立行政法人北海道総合研究機構に対して、情報提供や注意喚起を行ったとされる行政文書名、発出日、防止策を明らかにされたい。

2 水産庁は「都道府県が沿岸海域の調査を行い報告する」としているが、沖合海域の調査は行ったのかと確認したところ、「沖合海域の調査は行っていない」と答えている。ロシア海域から親潮に乗って流れ込んだ可能性があるのに、沖合海域における海水のモニタリング調査などの観察や注意喚起などの防止策をなぜとらなかったのか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。