質問主意書

第207回国会(臨時会)

質問主意書

質問第四〇号

先住民族の権利に関する国際連合宣言及びアイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十二月二十日

紙 智子


       参議院議長 山東 昭子 殿



   先住民族の権利に関する国際連合宣言及びアイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律に関する質問主意書

 国際連合は、二〇〇七年に「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(以下「先住民族宣言」という。)を採択した。この宣言を踏まえて、二〇〇八年に衆参両院で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」がそれぞれ全会一致で可決され、二〇一九年には「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(以下「アイヌ施策推進法」という。)が成立した。アイヌ施策推進法が「施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」としていることを踏まえ、以下、質問する。

一 先住民族宣言の前文に「先住民族が、特に植民地化並びにその土地、領域及び資源の略奪の結果として歴史的に不正に扱われてきたこと、それによって特に自己のニーズ及び利益に合致する発展の権利を行使することを妨げられていることを懸念し、先住民族の政治的、経済的及び社会的構造並びに先住民族の文化、精神的伝統、歴史及び哲学から生ずる先住民族の固有の権利(特に、土地、領域及び資源についての権利)を尊重し、及び促進することが緊急に必要であることを認識する」旨の記載があるが、この前文に対する政府の認識を示されたい。

二 二〇一九年四月十八日の参議院国土交通委員会におけるアイヌ施策推進法案の審査の際、石井啓一国土交通大臣は、先住民族宣言について「法的拘束は有しない性格のものでございます。したがいまして、宣言の内容を全て実施すべきものではない」と答弁し、「本法案におきましては、国会決議におきまして国連宣言の関連条項を参照しつつとされていることを踏まえまして、先住民族の文化に関する権利、差別を受けない権利、国民の理解の促進、土地資源に関する権利の規定を参照いたしまして、この趣旨に対応する措置を盛り込んだ」と四項目だけ答弁しているが、先住民族宣言には第一条から第四十六条まで四十六項目があるので、その具体化が急がれる。

 アイヌ施策推進法は「施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」としているが、先住民族宣言の履行をどのように進めるのか。検討状況を示されたい。

三 アイヌ施策推進法に基づき、アイヌ民族に関する自治体の事業に交付金を交付する事業が創設されたが、その決定プロセスが分かりにくいとの意見がある。交付金交付の決定プロセスや予算の使途を明らかにすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。