質問主意書

第207回国会(臨時会)

質問主意書

質問第二二号

日本軍「慰安婦」問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十二月十七日

紙 智子


       参議院議長 山東 昭子 殿



   日本軍「慰安婦」問題に関する質問主意書

 日本軍「慰安婦」問題の解決は、日本政府と日本社会が解決しなければならない歴史的課題の一つである。韓国、朝鮮、中国、台湾、フィリピン、インドネシア、東ティモール、オランダの日本軍「慰安婦」被害者とその遺族、支援者は、日本政府に対し被害事実を認め、再び繰り返すことのないように歴史を学び継承すること、日本政府が謝罪し賠償することを求めている。日本軍「慰安婦」問題は日本政府が解決しなければならない女性に対する人権問題として存在している。

 岸田内閣総理大臣は、令和三年十二月九日の衆議院本会議において、いわゆる「河野談話」に関わる質問に対し、「政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話を継承しているというものであります。この談話について見直すことは考えておりません」と答弁している。この課題を解決する立場に立って、以下質問する。

一 岸田内閣総理大臣は、平成二十七年十二月二十八日の「日韓両外相共同記者発表」において、当時の外務大臣として、「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」と述べている。日本の内閣総理大臣としてあらためて日本軍「慰安婦」被害者に対し、数多の苦痛及び心身にわたり癒やしがたい苦痛を与えた事実とその責任を認め謝罪することが適切と考えるが如何か。

二 日本軍「慰安婦」問題について、河野談話作成過程においての調査結果である平成五年八月四日の内閣官房内閣外政審議室の「いわゆる従軍慰安婦問題について」では、慰安婦の出身地として「今次調査の結果慰安婦の出身地として確認できた国又は地域は、日本、朝鮮半島、中国、台湾、フィリピン、インドネシア及びオランダである」と認定している。さらに、その後の民間の調査で、ミクロネシアや東ティモールなどこれらの地域以外の各地に日本軍「慰安婦」被害女性が存在していることが分かっている。日本政府は、韓国だけでなくこれらの地域の被害女性とも向き合い、「慰安婦」問題の解決を進めなければならないと考えるが如何か。

 とりわけ、韓国以外の朝鮮民主主義人民共和国や中国、台湾、フィリピン、インドネシア、オランダ、ミクロネシア、東ティモールなどの日本軍「慰安婦」被害者も日本政府に対して解決を求めており、岸田内閣は、これらの国、地域の被害者に今後どのように対応するのか、その考えを明らかにされたい。

三 私は、第二百四回国会において「日本軍「慰安婦」関連文書に関する質問主意書」(第二百四回国会質問第一一六号。以下「前回質問主意書」という。)を提出し、令和三年六月二十五日に答弁書(内閣参質二〇四第一一六号。以下「前回答弁書」という。)を得た。この前回答弁書に関し、以下のとおり質問する。

1 平成五年八月四日の慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話において、従軍慰安婦問題については「国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい」と述べている。これに関し、前回質問主意書の七では、「政府として「民間の研究」に基づく資料の収集も行うべきではないか。また、民間の研究者からの「慰安婦」関連文書の提供の申し出がある場合は、政府として受け入れることにしているか」と質問した。あらためて「慰安婦」関連文書の民間からの情報提供の申し出に対する政府の対応を具体的に述べられたい。

2 前回質問主意書の四における「この国外移送誘拐被告事件判決概要には判決理由として「いわゆる上海事件の勃発により多数帝国海軍軍人の駐屯を見るに至ったことをもって、海軍指定慰安所なる名称の下に従来の営業を拡張することを欲し、(中略)、当該営業所において醜業に従事すべき日本婦女を日本内地において雇入れ移送することを担当し、(中略)、婦女雇入れに際しては専ら醜業に従事するものであることの情を秘し、単に女給又は女中として雇うもののように欺罔し勧説誘惑して上海に移送することを謀議し、(中略)長崎港出帆の船舶にa女ないしo女十五名を順次乗船させ、もって同女等を帝国外に移送したものである」と述べられているか示されたい」との質問に対し、政府は「国外移送誘拐被告事件判決概要には、長崎控訴院が認定した犯罪事実の概要として、御指摘の記述とおおむね同様の内容が記載されている」と答弁した。

 この国外移送誘拐被告事件判決概要(以下「当該文書」という。)は、女性を誘拐などだまして「慰安婦」として海外に送出することが、当時の日本国刑法に違反する犯罪行為であったことを認めたものである。

 また、当該文書は、検察庁が保管する判決の内容を法務省が何らかの形で入手し、概要文書として作成した「国外移送誘拐事件判決概要」の公文書である。

 国外移送誘拐事件概要の判決理由として「単に女給又は女中として雇うもののように欺罔し勧説誘惑して上海に移送することを謀議し、(中略)長崎港出帆の船舶にa女ないしo女十五名を順次乗船させ、もって同女等を帝国外に移送したものである」の部分をもってしても、欺罔は強制性をあらわし、その上での移送は連行(本人の意志にかかわらずどこかへ連れていくこと―新明解国語辞典)に当たり強制連行だと考える。よって、政府が令和三年三月三十一日に当該文書を入手したことを認めたということは、政府が「強制連行を示す文書」を入手したと考えられるが、それに間違いはないか。

3 前回質問主意書の九において、「慰安婦」関連文書の「調査・研究を行っている政府の部署はどこか」と質問したが、明確な答弁がなかった。政府に「慰安婦」関連文書の調査や検証を含めた研究を行う機関が必要と考えるが如何か。

  右質問する。