質問主意書

第207回国会(臨時会)

質問主意書

質問第八号

天皇及び皇族が御結婚される際に例外的な対応を行う場合の処理等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十二月九日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   天皇及び皇族が御結婚される際に例外的な対応を行う場合の処理等に関する質問主意書

 令和三年十一月二十五日に行われた記者会見(以下「記者会見」という。)にて、秋篠宮皇嗣殿下(以下「殿下」という。)は次のように述べられている。

 「それでは最初に、私たちが十月二十六日に出しました感想に記した皇室への影響ということからお話をしたいと思います。いろいろあったと思いますけれども、私が感じるのは、主に二つです。その一つは、今回の長女の結婚が公になって以降、様々な媒体で、私たちの家、秋篠宮家以外の皇室にも影響が出たということを感じたからです。例えばそのことによって、天皇皇后両陛下がどういうふうに感じているとか、細かいことは私も記憶しておりませんけれどもありましたし、それからもっとはっきりしているのは、この娘の結婚に対して、上皇后陛下がいろいろ言われたとか、こういう考えを持っているというのが週刊誌に出たりもしました。このことは宮内庁のホームページでも二度か三度にわたってそういうことはなかった、実際に私もそういうことを聞いたことは一度もないわけですが、なかったということを説明しているのですけれども、それでもその後も続いたということがあり、やはり負担になったことには間違いないと考えています。それが、一つです。もう一つは、結婚に当たって普通であれば行われている三つの行事ですね。納采の儀と告期の儀と入第の儀、この三つの行事を行わなかったことで、これは私の判断で行わなかったわけですけれども、これは元々は、皇室親族令にあるものです。今はもうそれはありませんので、絶対にしなければいけないというものではないわけですけれども、慣習的に行われているものであり、私は本来であればそれは行うのが適当であると考えています。しかし、それを行わなかったそのことによって皇室の行事、そういう儀式というものが非常に軽いものだという印象を与えたということが考えられます。本来であれば、その三つを行うのが繰り返しますけれども良かったと思っております。それが、あそこに書いた影響ということであり、その後に迷惑をかけた方々に対して申し訳なく思っているというのもそこにつながります。」

 立法府としてこのお言葉を受け、政府の例外的対応等について法的根拠等を明らかにすることで、本来行われるはずであった儀式等は決して「非常に軽いもの」ではないことを示す必要があると考え、以下質問する。

一 納采の儀、告期の儀、賢所皇霊殿神殿に謁するの儀、朝見の儀、入第の儀及び結婚の儀等、天皇及び皇族が御結婚される際に行われる儀式(以下「儀式等」という。)について

1 「皇室制度に関する有識者ヒアリングに関する質問主意書」(第百八十回国会質問第七五号)に対する答弁(内閣参質一八〇第七五号)によれば「天皇の行為については・・・国事行為、・・・公的行為及びその他の行為に分類され、皇族の行為については・・・公的行為及びその他の行為に分類されると考えられる」ところ、国事行為、公的行為、その他の行為として行われた儀式等があれば、直近の例をそれぞれ一例ずつ示されたい。また、憲法第七条第十号に規定される「儀式」にどれが該当するのか示されたい。また、なぜ当該儀式等がその分類となるのか、理由を示されたい。

2 「憲法第二十四条と皇室典範第十条との関係に関する質問主意書」(第二百五回国会質問第一〇号)に対する答弁(内閣参質二〇五第一〇号)によれば「天皇については・・・基本的人権については、一般の国民とは異なる一定の制約があるものと理解している。また、皇族についても、皇族という特殊な地位にあることから、これに準ずるものと考えられる」ところ、天皇及び皇族は、儀式等への参加を辞退することを申し出ることができるのか。

3 前記一の2に関し、天皇及び特定の皇族が、天皇及び他の特定の皇族が参加する儀式等について、その儀式等を行わないことを申し出ることができるのか。当該申出には、内閣の助言と承認は必要か。また、当該申出は、「皇室経済法第六条に規定されている一時金不支給に関する質問主意書」(第二百六回国会質問第六号)に対する答弁(内閣参質二〇六第六号。以下「前回答弁書」という。)における「現行制度そのものの改変を意図するといった政治的見解を持つ、又は政治的な影響を持つような発言」に該当するか。

4 政府は儀式等を行わないとすることはできるのか。行わないとすることができる場合、国会での審議や議決は必要か。また、儀式等を行わないことは憲法第四条第一項に抵触するか。

二 昭和二十二年十月十四日の皇籍離脱(以下「皇籍離脱」という。)と皇室経済会議(皇室経済法(昭和二十二年法律第四号。以下「法」という。)第八条に規定される皇室経済会議をいう。以下同じ。)と一時金(法第六条第一項に規定する、皇族であつた者としての品位保持の資に充てるために、皇族が皇室典範の定めるところによりその身分を離れる際に一時金額により支出する皇族費をいう。以下同じ。)について

1 皇籍離脱する皇族(以下「旧皇族」という。)全員に対し、一時金は支出されたか。

2 昭和二十二年五月三日から昭和二十二年十月十四日までの間に、旧皇族に支出する一時金を議題とする皇室経済会議は開催されたか。また、旧皇族に対し一時金を支出する、又はしないことを議決した皇室経済会議は開催されたか。開催された場合は、開催日も併せて示されたい。

3 前記二の2に関し、当該皇室経済会議が開催された場合、「皇室経済会議が一時金の支出義務の存否の判断について役割を果たすことは制度上想定されていないと解される」(前回答弁書)ところ、皇籍離脱の際に開催された皇室経済会議は、一時金の支出義務の存否の判断について役割を果たしていないのか。また、前回答弁書を踏まえると「宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)第二条第七号に基づき・・・一時金の支出義務の存否の判断は、その長である宮内庁長官により行われるものと考えられ」るところ、皇籍離脱の際の一時金の支出義務の判断は、宮内庁の前身組織である宮内府の長である宮内府長官により行われたのか。宮内府長官でない場合は、誰がどのように判断したのか。昭和二十二年十月十四日時点での宮内府法の条文や同法趣旨説明「宮内府の権限・・・皇室関係の国家事務であります。すなわち皇室典範及び皇室経済法の施行等、皇室関係の国家事務を所掌するのであります」(第九十二回帝国議会衆議院行政官庁法案外一件委員会議録第一号)、総理府設置法の制定等に伴う関係法令の整理等に関する法律(昭和二十四年法律第百三十四号)第三条を踏まえ、理由も併せて答弁されたい。

三 一時金について

1 各議院の議長、副議長及び議員(以下「議員等」という。)は、文書通信交通滞在費(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(昭和二十二年法律第八十号)第九条に規定する文書通信交通滞在費をいう。以下「文通費」という。)の受領を辞退できるか。政府の見解を理由も併せて示されたい。

2 文通費と一時金には、その辞退に関し、法令による明文規定はない。前記三の1に関し、文通費を辞退できない場合、なぜ文通費の辞退はできず、一時金の辞退はできるのか。

3 文通費は、前回答弁書の一の1、3及び5についての「政府が一定の目的のために金銭等を支出することとされる場合」に該当するか。文通費の受領の辞退を申し出た議員等は「その目的が達成されないことがあらかじめ明らか」(前回答弁書)であるか。

4 前回答弁書の一の1、3及び5についてに関し、「当該皇族が一時金を品位保持の資に充てる意思を持っていないことが客観的に明らか」(以下「目的外使途の御意思」という。)の意味するところが必ずしも明らかではない。「客観的」かどうかを、誰がどのように判断するのか。

5 一時金の使途に関する御自身の御見解を何ら公言せず、その上で一時金を自らの意思で辞退された皇族の身分を離れる者は目的外使途の御意思であるか。

6 一時金を支出されなかった皇族であった者の「皇族であつた者としての品位」(法第六条第一項)は保持されるのか。政府の見解如何。

四 宮内庁の事務について

1 宮内庁は、皇族が一時金の使途について意思表示をされた旨の公文書等(公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号。以下「公文書管理法」という。)第二条第八項に規定される公文書等をいう。以下同じ。)の作成義務を負うか。また、皇族が御結婚される際に一時金を支出しない、又は儀式等を行わないことを決定する際に「経緯も含めた意思決定に至る過程」(公文書管理法第四条)を記載した公文書等(以下「当該公文書等」という。)の作成義務を負うか。当該公文書等は行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)第二条第二項に規定される行政文書に該当するか。

2 国民はどのような手段で政府が一時金を支出しないと決定した皇族の身分を離れる者が目的外使途の御意思であることを知ればよいのか。「最近の報道の中には、事実と異なる記事や誤った事実を前提にして書かれた記事が多々見られます。このことにより、事実でないことが事実として受け止められ、広く社会一般に誤った認識が生ずることが懸念されます。」(宮内庁ホームページ「皇室関係報道について」)とあることから、国民が報道のみで目的外使途の御意思であることを知ることは必ずしも適切ではないと考える。前記四の1を含め、一例を示されたい。

3 前記四の2に関し、国民が御意思を知る手段を持ちえない場合、憲法第一条に照らし、政府の見解如何。

五 小室眞子さん(以下「眞子さん」という。)が眞子内親王殿下であられた当時(以下「当時」という。)について

1 当時、政府は眞子さんが一時金を辞退される旨の報道を承知していたか。

2 当時、政府は眞子さんが一時金の使途について全額寄付されたい等、何らかの意思表示された旨の報道を承知していたか。

3 当時、政府は眞子さんが一時金の使途について何らかの意思表示されたことを承知していたか。承知していた場合、その詳細を明らかにされたい。

六 記者会見について

1 殿下の「娘の複雑性PTSD・・・私としてはそういう言葉は許容できるものではありません。」とのお言葉について、政府の見解如何。

2 殿下の「いろいろな報道がなされて中にはバッシングと取れるものもあります。・・・何かそういう基準作りをしていく必要が私はあると思います。今、おっしゃったように今後もこういうことは多分続くでしょう。その辺も見据えて宮内庁とも相談しながら何かその今言ったような基準であるとかそういうものをですね、考えていくことは私は必要だと思っております。」とのお言葉について、政府の見解如何。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十八日以内には答弁されたい。

  右質問する。