質問主意書

第207回国会(臨時会)

質問主意書

質問第二号

立法不作為等に係る訴訟への対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十二月六日

吉川 沙織


       参議院議長 山東 昭子 殿



   立法不作為等に係る訴訟への対応に関する質問主意書

 国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法第一条第一項の適用上違法である旨を主張する訴訟(以下「立法不作為等に係る訴訟」という。)が提起された場合の対応について、以下質問する。

一 国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律では、国を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が国を代表するとされており、具体的には同大臣が指定する者が訴訟を行っている。この枠組みの下で立法不作為等に係る訴訟も行われているという理解でよいか、法令の根拠条文等を示しながら説明されたい。

二 立法不作為等に係る訴訟が提起された場合、法務省はその旨を衆議院及び参議院に対して通報しているのか明らかにされたい。通報しているとき、その根拠を示すとともに、通報の際にどのような情報を伝達しているのか明らかにされたい。通報していないとき、その理由を明らかにされたい。

三 令和元年度以降に提起された立法不作為等に係る訴訟の件数及びそのうち法務省が衆議院及び参議院に対して通報したものの件数を年度ごとに明らかにされたい。

四 令和元年度以降に提起された立法不作為等に係る訴訟の地方裁判所における裁判について、訴えが提起されてから判決が下されるまでの平均日数を年度ごとに明らかにされたい。

五 立法不作為等に係る訴訟について判決が言い渡された場合、法務省はその旨を衆議院及び参議院に対して通報しているのか明らかにされたい。通報しているとき、その根拠を示すとともに、通報の際にどのような情報を伝達しているのか明らかにされたい。通報していないとき、その理由を明らかにされたい。

六 下級裁判所における立法不作為等に係る訴訟が国に不利益な結果となった場合、法務省は衆議院及び参議院に対して上訴の要否に関する意見照会を行っていると承知している。この意見照会を行う趣旨、意見照会を行わないことの有無及び理由並びに意見照会の根拠を明らかにされたい。

七 上訴期間は判決正本が送達された日の翌日から起算して二週間とされている。法務省から衆議院及び参議院への意見照会に対する回答は、上訴期間の終わる何日前までになされる必要があるのか、理由とともに明らかにされたい。

八 法務省からの意見照会に対する回答の内容が衆議院と参議院とで異なった場合、法務省はどのように対応することとなっているのか明らかにされたい。

九 立法不作為等に係る訴訟においては、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背するか否かが争点であり、その意味では、訴訟の第一義的な当事者は衆議院及び参議院であって政府ではない。その当事者たる衆議院及び参議院が法務省からの意見照会に対して回答を留保することについて見解を明らかにされたい。

十 前記九のように衆議院及び参議院が回答を留保した場合には、政府は、第一義的な当事者ではないものの、自らの判断で上訴の要否を決しなければならない。これを決するに当たり、賠償金の多寡以外では、どのような要素等を考慮しているのか明らかにされたい。

十一 立法不作為等に係る訴訟について国が上訴した場合、法務省はその旨を衆議院及び参議院に対して通報しているのか明らかにされたい。通報しているとき、その根拠を示すとともに、通報の際にどのような情報を伝達しているのか明らかにされたい。通報していないとき、その理由を明らかにされたい。

十二 立法不作為等に係る訴訟において国の敗訴が確定し、賠償金の支払が命じられた場合、国のどの組織の予算から支出するのかについて決まりが存在するのか明らかにされたい。明文の決まりが存在しない場合、支出する組織や組織ごとの支出額をどのように決定しているのか明らかにされたい。

十三 前記十二の賠償金について、衆議院及び参議院が支出することとした例があるか明らかにされたい。

十四 前記九のように立法不作為等に係る訴訟の第一義的な当事者は衆議院及び参議院であることから、前記十二の賠償金は、衆議院及び参議院が支出するべきとの主張もあり得る。立法不作為等に係る訴訟における賠償金の支出の在り方に対する見解を明らかにされたい。

  右質問する。