質問主意書

第206回国会(特別会)

質問主意書

質問第一四号

HPVワクチンの積極的勧奨の再開に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十一月十一日

塩村 あやか


       参議院議長 山東 昭子 殿



   HPVワクチンの積極的勧奨の再開に関する質問主意書

 ヒトパピローマウイルスワクチン(以下「HPVワクチン」という。)については、平成二十五年四月に定期接種が開始されたが、同年六月に開催された平成二十五年度第二回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成二十五年度第二回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)(以下「平成二十五年六月合同会議」という。)において定期接種を積極的に勧奨すべきではないとされたことを踏まえ、各都道府県知事宛てに、HPVワクチンの接種の勧奨を行うに当たって「市町村長は、接種の積極的な勧奨とならないよう留意すること」とする通知(「ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について(勧告)」(平成二十五年六月十四日健発〇六一四第一号 厚生労働省健康局長通知)。以下「厚生労働省健康局長通知」という。)が発出された。その後、現在に至るまで八年間以上にわたりHPVワクチン接種の積極的な勧奨は差し控えられたままであり、その間、HPVワクチンの接種率は極めて低い水準で推移していると承知している。

 HPVワクチンの定期接種対象者が年齢により限定されている以上、積極的な勧奨の再開を急ぐべきであると考える。あわせて、HPVワクチンの接種を希望する者が安心して接種を受けるためにも、科学的根拠に基づき再開を判断することも重要である。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 厚生労働省健康局長通知によりHPVワクチン接種の積極的な勧奨が差し控えられることとなった平成二十五年六月以降の子宮頸がんの累計罹患数を示されたい。また、平成二十五年六月以降に子宮頸がん検診において子宮頸がん前がん病変が発見された者の数を示されたい。

二 HPVワクチンの定期接種対象者は「十二歳となる日の属する年度の初日から十六歳となる日の属する年度の末日までの間にある女子」(以下「HPVワクチン定期接種対象者」という。)と定められているところであるが、前記一の累計罹患数のうち、平成二十五年六月以降にHPVワクチン定期接種対象者に該当した者が占める割合を示されたい。また、前記一の子宮頸がん前がん病変が発見された者の数のうち、平成二十五年六月以降にHPVワクチン定期接種対象者に該当した者が占める割合を示されたい。

三 厚生労働省健康局長通知によると、平成二十五年六月合同会議において「ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛がヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン接種後に特異的に見られたことから、同副反応の発生頻度等がより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではないとされた」とのことだが、令和三年十月一日に開催された第六十九回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和三年度第十八回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)(以下「令和三年十月合同会議」という。)において、現在、HPVワクチンの定期接種の積極的な勧奨が差し控えられていることについてどのように考えるか議論がなされ、「積極的勧奨の再開を妨げる要素はない」との方向性が示されていると承知している。

1 三に示した厚生労働省健康局長通知の記述を踏まえると、積極的な勧奨の再開に向けて、HPVワクチンに係る副反応の発生頻度等が明らかになり、国民に適切な情報提供ができるようになる必要があると考える。ついては、HPVワクチンに係る副反応について、平成二十五年六月以降の国内外の主な報告等から政府が得た知見を明らかにされたい。

2 令和三年十月合同会議において「積極的勧奨の再開を妨げる要素はない」との方向性が示されたことから、HPVワクチン定期接種の積極的な勧奨の再開に向け進んだことは評価したい。一方で、これまで積極的な勧奨を差し控えていたことにより生じた課題にも対処する必要がある。すなわち、平成二十五年六月以降にHPVワクチン定期接種対象者であったにもかかわらず未接種のまま接種の機会を失ってしまった方々が、定期接種と同程度の金銭的負担で接種を受けられるよう対応していくことも併せて検討すべきであると考える。

 HPVワクチン定期接種の積極的な勧奨の再開に向けては引き続き検討がなされるものと承知しているが、その検討過程において、平成二十五年六月以降にHPVワクチン定期接種対象者であったにもかかわらず、未接種のまま定期接種対象外となり接種の機会を失ってしまった方々への救済措置について検討する必要性を政府としてどのように考えているか、見解を伺う。

四 国立感染症研究所による「九価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンファクトシート」(第十七回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会資料二―三。以下「ファクトシート」という。)によると、「世界で使用されているHPV感染予防ワクチンには、二価、四価、九価ワクチン」がある。日本においては、二価ワクチン及び四価ワクチンが定期接種に使用されている一方、九価ワクチンについては昨年七月に承認されているものの、定期接種では使用されていないものと承知している。ファクトシートによると、現在存在する三種のHPVワクチンの二〇一九年時点の世界全体での推定されるシェアのうち九価ワクチンのシェアは三十%であり、九価ワクチンは標的とするヒトパピローマウイルスが二価ワクチン及び四価ワクチンよりも多いことからも、定期接種に用いるようにすべきではないかと考えるが、政府として定期接種に用いるHPVワクチンを九価ワクチンに変更することを検討しているのか、現在の検討状況を伺う。

  右質問する。