質問主意書

第206回国会(特別会)

質問主意書

質問第一二号

老朽化等マンションの建替え等促進策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十一月十日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   老朽化等マンションの建替え等促進策に関する質問主意書

 老朽化が進行したマンションは、外壁の剥落等によって居住者や近隣住民の生命、身体、財産に危険を及ぼすおそれがあり、また周辺地域の景観や治安の悪化にもつながるなど、その弊害は極めて大きい。令和二年末時点において築四十年超のマンションは約百三万戸存在し、その数は十年後には約二百三十二万戸、二十年後には約四百五万戸へと急速に増加することが見込まれており、適切な対応がなされなければ、我が国の経済社会全体に深刻な悪影響をもたらす懸念がある。令和二年にはマンションの老朽化等に対応するための「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、除却の必要性に係る認定(以下「要除却認定」という。)の対象の拡充等が措置されたが、赤羽国土交通大臣が自ら答弁で認めたように「一歩前進」に過ぎず(第二百一回国会参議院国土交通委員会会議録第九号、令和二年四月七日)、更なる対策強化が不可欠である。

 上記を踏まえ、以下質問する。

一 老朽化等マンションの建替え等に対する容積率緩和特例の効果等について

1 国土交通省の資料によれば、平成二十六年の「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(以下「マン建法」という。)の一部改正で導入された耐震性不足のマンションを対象とした容積率緩和特例の許可の実績は、令和二年四月時点で三件とされている。令和二年四月以降の実績について政府として把握しているか、また把握しているならば何件か。

2 令和二年末時点において、築四十年超のマンションは約百三万戸存在し、その中には相当数の耐震性不足のマンションが含まれており、その建替え等を促進する必要性は高い。しかしながら、令和二年四月時点における実績を見る限りでは、容積率緩和特例の活用が進んでいるとは評価しがたい状況にある。その要因について政府としてどのように分析しているのか、また、今後の活用の見通しについて、政府の見解を問う。

3 令和二年のマン建法一部改正により、要除却認定の対象が拡充され、外壁の剥落等により危害が生ずるおそれがあるマンション等についても容積率緩和特例が活用できることとされた。新たに対象とされた類型における容積率緩和特例の活用の見通しについて、政府の見解を問う。

4 要除却認定の対象となり得るマンションであっても、容積率以外の斜線制限や日影規制等の建築規制により、容積率緩和特例が活用できない場合が生じ得る。特に既存不適格建築物については、建替え前と同規模のマンションでさえ建築できない可能性もある。そのような実例について把握しているのか、それらが容積率緩和特例の活用に及ぼす影響についてどのように分析しているのか、政府の見解を問う。

5 これまでの活用実績やその他の建築規制等を考慮すれば、容積率緩和特例による老朽化等マンションの建替え等の促進に対する効果は限定的なものにとどまると考えられる。容積率緩和特例が活用できない老朽化等マンションに対する建替え等促進策を早期に導入する必要があると考えるが、政府の見解を問う。

二 令和二年のマン建法一部改正で拡充された要除却認定の対象に係る要件の在り方等について

 令和二年のマン建法一部改正で拡充された要除却認定の対象の認定基準については、国土交通省に設置された「要除却認定基準に関する検討会」(以下「検討会」という。)において検討が行われ、令和三年八月二十七日には認定基準案の概要が検討会において概ね了承され、引き続き施行に向けた検討が進められている。

1 新たな要除却認定の対象のうち、外壁の剥落等により周辺に危害を生ずるおそれがあるもの及び配管設備の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものに関しては、容積率緩和特例を受けるために、故意に修繕等を行わずに劣化を放置するといった行為を誘発する懸念がある。検討中の認定基準は、この懸念に十分対応したものとなるのか、政府の見解を問う。

2 バリアフリー性能が確保されていないものに関する認定基準により要除却認定を受け、マンションを建て替える場合、建替え後のマンションがバリアフリー基準を満たすことは要件とはされない見込みである。この点について、検討会の議事要旨によれば「運用面での対応」がなされるとのことだが、具体的にはどのような対応が想定されているのか。また、「運用面での対応」で建替え後のマンションがバリアフリー基準を満たすことを確実に担保することができるのか、政府の見解を問う。

三 老朽化等マンションの建替え等促進策の抜本的強化の必要性について

 既に述べたように、現状においても、容積率緩和特例による効果は限定的である可能性が否定できない。さらに、我が国の世帯数は令和五(二〇二三)年をピークに減少局面に入ると推計されていることを踏まえれば、今後は容積率緩和特例の恩恵を受けることができるのはごく一部の好立地のマンションに限定されることとなり、中長期的に持続可能な施策ではない。急増する老朽化等マンションに対応するには、建替え等促進策を抜本的に強化する必要がある。

1 我が国ではマンションの建替えや敷地売却には区分所有者等の五分の四以上による決議を要することとされているが、韓国では、一定の場合、区分所有者等の四分の三以上による決議で足りるとされている。我が国でも少なくとも韓国並みに要件を緩和する必要があるのではないか、政府の見解を問う。

2 国土交通省は平成二十三年に「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を策定し、適正な修繕積立金の設定や積立てを促してはいるものの、同ガイドラインでは、建替えや除却などは想定されておらず、それらに要する費用に関する記載はない。また、実態として修繕積立金の水準が不十分なマンションも多数存在している。老朽化が進行したマンションが大きな外部不経済をもたらすことに鑑みれば、修繕や除却に要する最低限の費用の積立てを法的に義務付けることは十分に正当化され得る施策である。その導入に向けた検討を速やかに開始すべきと考えるが、政府の見解を問う。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。