質問主意書

第206回国会(特別会)

質問主意書

質問第九号

消費者を誤認させるステルスマーケティングの手法によるアフィリエイト広告等の是正に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十一月十日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   消費者を誤認させるステルスマーケティングの手法によるアフィリエイト広告等の是正に関する質問主意書

 インターネットを用いた通信販売(ネットショッピング)については、新型コロナウイルス感染症への対策として、「新しい生活様式」において、その利用が拡大している。総務省が公表している家計消費状況調査においても、令和二年五月にはネットショッピングを利用する二人以上の世帯の割合は、調査を開始した二〇〇二年以降で初めて五割を超えた。こうした中で、消費者を誤認させるステルスマーケティングの手法によるアフィリエイト広告等の事例が問題となっており、消費者庁においてもこのような問題への対策について、令和三年中を目途に一定の結論を得るよう、「アフィリエイト広告等に関する検討会」(以下「検討会」という。)で対策の検討を進めることとしている。

 右を踏まえ、次の事項について質問する。

一 米国では、広告主がニュース形態などの出所、性格を誤認させる広告、アフィリエイトによる報酬を受け取った事実を隠した推奨や、ステルスマーケティングの手法により、「広告でない」と誤認させる広告については、連邦取引委員会法第五条に違反すると明示されており、連邦取引委員会が措置を講じている。また、連邦取引委員会は、「広告における推薦及び証言の使用に関するガイドライン」(二〇〇九年)において、広告主と推奨者との関係の有無や金銭授受の有無を開示する義務を課すことによる規制を設けている。「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(平成二十四年五月九日一部改定)において、連邦取引委員会のガイドラインを引用していることから、消費者庁では、内容把握をしているものと思われる。我が国においても、同様の規制を広告主及び推奨者に課すことが必要であると考えるが、現在、規制対象としていない理由は何か。政府の見解を問う。

二 EU(欧州連合)では、不公正取引方法指令(二〇〇五年)において、誇大広告やおとり広告等の不公正とみなされる取引方法を列挙した附属書一がある。この中の項目十一で、ステルスマーケティングの手法について、「販売業者が広告費を支払ってメディアのコンテンツを作成させ、かつ、その事実を消費者が明確に識別できるよう明示していない場合」として、具体的に挙げて禁止している。我が国の現行の、不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号。以下「景品表示法」という。)では、優良誤認表示などを伴う広告が不当表示として規制対象とされているが、「公正な市場秩序を乱す行為」として、例えば金銭を受け取っていながら公平な消費者や専門家の独立した意見であるかのように装って推奨表現している広告などについて、EUのような具体的な列挙による規制を行っていない理由は何か。政府の見解を問う。

三 検討会においては、アフィリエイト広告が不当表示につながりやすい点への懸念が示されている。しかし、一般的にはアフィリエイターは商品販売をしないため、現行の景品表示法の規制では、その適用対象とならず、あくまで広告主を対象とした規制にとどまるものとなっている。

1 消費者庁においては「広告も創作物に当たり、表現の自由を損なわないよう慎重な対応が必要」という姿勢であるが、報酬を得る目的で不当表示を行うことを、表現の自由として認めることは、消費者への不当行為を放置することになりかねないのではないか。検討会において、報酬等利益を得る目的で作成された不当表示について、商品を供給する事業者以外の者に対しても罰則を科すなど悪質な行為を防止するような対策を検討する必要があるのではないか、政府の見解を問う。

2 消費者に対し、中立な第三者の見解であると誤認させるステルスマーケティングの手法については、事業者又は第三者が行う場合のいずれについても、不当に顧客を誘引し、消費者の合理的な選択を阻害する表示にほかならず、景品表示法第五条第三号の規定にある内閣総理大臣の指定により、当該表示を不当表示として禁止することで対策を講じる必要があるのではないか、政府の見解を問う。

3 景品表示法第五条は、事業者が「自己の供給する商品又は役務の取引について」、優良誤認表示などをすることを禁止しており、推奨者のような事業者以外の者が、事業者の供給する商品又は役務の取引について不当表示を行うことは規制の対象とはなっていない。しかし、景品表示法第一条の「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護する」との目的を踏まえれば、事業者であるか推奨者であるかを問わず、消費者の合理的な選択を阻害する行為自体を規制すべきではないか、政府の見解を問う。

4 表示規制の対象について、現行の景品表示法では、「自己の供給する商品又は役務の取引について」として、自己の供給に限定している。この限定を残した表示規制では、消費者の合理的な選択を阻害する要因を残すことになるものと考えるが、検討会においてはこの点を検討しているか。また、消費者庁としては、現時点で消費者の合理的な選択を阻害する要因を解消するための方策としてどのようなものを考えているか、政府の見解を問う。

四 ステルスマーケティングの手法は、著名人等に自らの体験談を語らせる方法等により、インターネット以外の場であるテレビ番組や雑誌等においても行い得るものであり、また、人を雇って入店待ちの行列を作らせて人気店を装うなど、実店舗においても行われ得るものである。米国及びEUでは、インターネット以外でのステルスマーケティングについても規制があることから、このような場合についても規制することが必要ではないのか。また、事業者と推奨者以外にも、代理店やフランチャイズの店舗といった関係者(アフィリエイト広告においてはアフィリエイトサービスプロバイダーなど)が、ステルスマーケティングの手法に関与することが考えられるが、このような者についても規制が必要ではないか、政府の見解を問う。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。