質問主意書

第206回国会(特別会)

質問主意書

質問第八号

災害時における地方公共団体の情報システムの継続性確保に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十一月十日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   災害時における地方公共団体の情報システムの継続性確保に関する質問主意書

 政府は、「地方公共団体におけるICT部門の業務継続計画(BCP)策定に関するガイドライン」(平成二十年八月)(以下「ICT―BCPガイドライン」という。)において、地方公共団体は、災害時に、地域住民の生命・身体の安全確保及び被災者支援並びに企業活動復旧のために、災害応急業務、復旧業務及び平常時から継続しなければならない重要な業務を実施していく責務を負っており、これらの業務の継続を確保するためには、災害時に情報システムが稼働することが極めて重要と明らかにしている。それに加えて、情報システムを所管するICT部門の業務継続計画(以下「ICT―BCP」という。)の策定に向けた地方公共団体の取組を支援するため、「ICT部門の業務継続計画〈初動版サンプル〉」(平成二十五年五月)等を作成・公表している。

 しかしながら、総務省の「地方自治情報管理概要」(平成二十六年三月及び令和三年八月)によれば、市区町村におけるICT―BCPの策定率は、平成二十五年四月時点の十・八%から令和二年四月時点で四十三・六%に上昇したものの、未だ半数以上の市区町村は未策定となっている。特に、町村においては、令和二年四月時点で六十八・九%が未策定であり、このうち五十・三%が策定予定はないとしている。

 これらについて、以下質問する。

一 災害に強い電子自治体に関する研究会「第八回ICT部門の業務継続・セキュリティWG」(平成二十四年九月二十七日)における配付資料「「災害発生時の業務継続及びICTの利活用等に関する調査」にかかる補足調査について」において、ICT―BCP未策定の理由などに関する調査(以下「補足調査」という。)の結果が取りまとめられている。

1 補足調査の結果によれば、ICT―BCPの策定推進に有効と思われる手段について、「ICT―BCPのサンプル提供」と回答した地方公共団体が八十%と最も多く、「ICT―BCPの意義、地域防災計画との関係性などの明確化」と回答した地方公共団体も六十七%となっている。

 政府は、平成二十五年五月に、ICT―BCPの初動版サンプル、初動版解説書、ICT―BCPとその意義に係る資料等を作成・公表し、地方公共団体における取組を支援している。そうであるにもかかわらず、市区町村におけるICT―BCPの策定率が四十三・六%にとどまり、中でも町村の六十八・九%がICT―BCPを未策定であり、このうち五十・三%が策定予定なしと回答している現状を、どのように評価しているか。また、策定が進んでいない理由をどのように認識しているか、見解を示されたい。

2 補足調査の結果によれば、ICT―BCP未策定の理由について、「ICT部門の要員不足」を理由とした地方公共団体が六十一%と最も多くなっている。そこで、ICT―BCPの策定率を向上させるため、ICT部門の要員不足解消に向けて行った人的支援について、実績も含めて回答されたい。また、更なる策定推進のため、地方公共団体に対し、より一層の人的支援を行うべきであると考えるが、見解を示されたい。

3 補足調査の結果によれば、ICT―BCPの策定推進に有効と思われる手段に係る「その他」の意見として、地方公共団体から財政措置を求める意見が挙げられている。このような意見も踏まえ、ICT―BCPの策定推進のため、これまで地方公共団体に対して行った財政的支援について回答されたい。行っていないのであれば、その理由について回答されたい。また、更なる策定推進のため、地方公共団体に対し、財政的支援を実施又は拡充すべきであると考えるが、見解を示されたい。

4 補足調査のようなICT―BCP策定の阻害要因等を把握するための調査について、平成二十四年以降に行った実績について回答されたい。また、直近の調査において、ICT―BCP未策定の理由及び策定推進に有効と思われる手段について、地方公共団体からどのような意見が寄せられたか回答されたい。調査を行っていないのであれば、その理由は何か。ICT―BCPの重要性に鑑みれば、早急に調査を行う必要はないか、見解を示されたい。

二 ICT―BCPガイドライン等においては、バックアップデータの保管場所に関して、「同時被災しない場所に保管する」ことが推奨されている。

 一方、本年二月、日本放送協会(NHK)が、国土交通省の公表している国土数値情報(津波浸水想定データ)等を用い、全国に津波で被災する可能性のある地方公共団体の庁舎がどの程度あるか調査を行ったところ、百八十二庁舎が該当したとのことである。さらに、該当する団体に対し、重要な行政データのバックアップの状況について聞き取り調査を行ったところ、百八十二庁舎のうち二十九庁舎について、「バックアップが終わっていない」、「保存場所が同じ庁舎内で、被災する可能性がある」などバックアップに課題があったとのことである。

1 政府は、地方公共団体のバックアップデータの保管場所、バックアップしているデータの範囲、具体的なバックアップの方法について把握しているか。把握している場合には、バックアップデータがサーバのある庁舎と同一庁舎内に保管され、同時被災の可能性がある地方公共団体の数を回答されたい。把握していないのであれば、早急に現状を把握する必要があると考えるが、見解を示されたい。

2 政府において把握している、津波浸水想定区域内にあるなど、津波で被災する可能性のある本庁舎を有する地方公共団体の数を回答されたい。加えて、このうち、バックアップデータが同庁舎内に保管されている地方公共団体の数を回答されたい。把握していないのであれば、なぜ把握していないのか回答を求めるとともに、今後把握する必要はないか、見解を示されたい。

三 政府は、地方公共団体の情報システムのうち、住民記録、税務、社会保障などの基幹系システムの標準化・共通化の取組を進めており、原則、全ての地方公共団体において、令和七年度末までに、ガバメントクラウド上で提供される標準準拠システムへの移行を目指していると承知している。一般的に、情報システムのクラウド化は、災害時の業務継続の観点から効果的とされているが、ガバメントクラウドに関しては現時点で不明な点も多い。このため、ガバメントクラウドに移行した場合の災害時の業務継続に係る以下の事項について、政府の見解を伺う。

1 ガバメントクラウド上のデータのバックアップを行う主体やその方法、バックアップデータの分散管理の方法について、現在の見通しを示されたい。また、ガバメントクラウドへの移行後、各地方公共団体は、基幹系システムのデータのバックアップや、バックアップデータの保管を行う必要がなくなるのか、見解を示されたい。

2 災害等によって、庁舎が利用できなくなった場合、庁舎への電力供給が停止した場合又はガバメントクラウドとのネットワークが切断された場合において、被災した地方公共団体は、どのようにガバメントクラウド上の基幹系システムに接続するのか。災害時等において、代替庁舎や他の地方公共団体の庁舎等からガバメントクラウド上の基幹系システムに接続することも可能となるのか、見解を示されたい。

3 ガバメントクラウドのデータセンターが被災した場合、多くの地方公共団体の業務に支障が生じることとなるが、このようなリスクに対して、どのような対策を講じるのか、見解を示されたい。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。