質問主意書

第205回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二〇五第二六号
  令和三年十月十九日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員浜田聡君提出金融庁及び証券取引等監視委員会の公益通報制度が機能不全に陥っているとの指摘に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出金融庁及び証券取引等監視委員会の公益通報制度が機能不全に陥っているとの指摘に関する質問に対する答弁書

一について

 前段のお尋ねについては、個別の事案であることから、お答えすることは差し控えたい。いずれにせよ、金融庁及び証券取引等監視委員会(以下「金融庁等」という。)において公益通報を受理した場合には、「公益通報者保護法を踏まえた国の行政機関の通報対応に関するガイドライン(外部の労働者等からの通報)」(平成十七年七月十九日関係省庁申合せ。以下「ガイドライン」という。)に基づき、必要な調査を行うとともに、調査の結果、法令違反等の事実があると認めるときは、速やかに、法令に基づく措置等を行っているところである。

 また、後段のお尋ねについては、調査の結果について、検査及び監督の適切かつ効果的な実施、適切な法執行の確保のほか、金融機関等利害関係人の営業秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がない範囲において、調査終了後、遅滞なく通知することとしている。具体的にどのような調査結果を通知するかについては、個別の事案ごとに判断するものであり、一概にお答えすることは困難である。

二について

 ガイドラインに基づき、検査及び監督の適切かつ効果的な実施、適切な法執行の確保のほか、金融機関等利害関係人の営業秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がない範囲において、調査終了後、遅滞なく通知したものである。

三の1について

 御指摘の「一切の回答を拒絶する公益通報者保護に反する行為」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、お尋ねの「弁護士会照会」については、公務員の守秘義務の関係上、内容を明らかにすることはできず、回答を差し控えさせていただいたものである。

三の2について

 お尋ねについては、個別具体的な状況を踏まえ金融庁等において判断すべきものであり、一概にお答えすることは困難である。

三の3及び4について

 お尋ねの、弁護士会照会よりも公務員の守秘義務が優先されるのかについては、個別具体的な状況を踏まえ金融庁等において判断するものであり、一概にお答えすることは困難である。

三の5について

 お尋ねについては、関係する資料の保存期間が経過しているものもあることから、網羅的にお答えすることは困難であるが、平成二十八年度以降に金融庁等が受けた公益通報に関する弁護士会照会については、令和三年十月十三日現在一件あり、それは開示していない。

三の6について

 個別具体的な状況を踏まえ判断するものであり、一概にお答えすることは困難である。

三の7から9までについて

 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号。以下「行政機関個人情報保護法」という。)第十二条に規定する開示請求と、弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第二十三条の二に規定する報告の請求とは、制度の趣旨や目的が異なっており、お答えすることは困難である。

三の10について

 御指摘の開示資料における記載内容は、公益通報者が公益通報してきた内容等を記載したものであり、「公務員の守秘義務に反しているのではないか」との御指摘は当たらないものと考えている。

 また、「証監委第四二五三号に係る資料」は、証券取引等監視委員会が保有する資料であり、金融庁は当該資料を保有していないことから、弁護士会照会をされても開示することはできない。

四の1について

 お尋ねについては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号。以下「情報公開法」という。)第七条の規定による行政文書の開示を行うのは、情報公開法第五条各号(同条第一号の二を除く。以下同じ。)に掲げる不開示情報が記録されている場合であっても、行政機関の長が、個別具体的な事実関係を踏まえて、当該情報を公にすることに、同条各号の規定により保護すべき利益を上回る公益上の必要性があると判断するときである。

四の2について

 お尋ねについては、情報公開法第四条第一項に規定する開示請求を受けた行政機関の長において、個別具体的な事実関係に即して適切に判断されるべき事柄であり、お答えすることは困難である。

四の3について

 お尋ねについては、関係する資料の保存期間が経過しているものもあることから、網羅的にお答えすることは困難であるが、平成二十八年度以降に金融庁等が情報公開法第七条に規定する「開示請求に係る行政文書に不開示情報(第五条第一号の二に掲げる情報を除く。)が記録されている場合」に係る開示をしたものは、令和三年十月十三日現在ない。

四の4について

 お尋ねについては、情報公開法第七条の規定を踏まえて適切に判断したものである。

四の5について

 お尋ねについては、行政機関個人情報保護法第十六条の規定による保有個人情報の開示を行うのは、行政機関個人情報保護法第十四条に規定する不開示情報が記録されている場合であっても、行政機関の長が、個別具体的な事実関係を踏まえて、同条各号の規定により保護すべき利益を上回る個人の権利利益を保護するため、当該情報を開示する必要性があると判断するときである。

四の6及び7について

 お尋ねについては、行政機関個人情報保護法第十二条に規定する開示請求を受けた行政機関の長において、個別具体的な事実関係に即して適切に判断されるべき事柄であり、お答えすることは困難である。

四の8について

 お尋ねについては、関係する資料の保存期間が経過しているものもあることから、網羅的にお答えすることは困難であるが、平成二十八年度以降に金融庁等が行政機関個人情報保護法第十六条に規定する「開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合」に係る開示をしたものは、令和三年十月十三日現在ない。

四の9について

 お尋ねについては、行政機関個人情報保護法第十六条の規定を踏まえて適切に判断したものである。

四の10について

 情報公開法及び行政機関個人情報保護法の規定に基づいて開示を行うことは、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百条第一項の「秘密を漏ら」すには該当せず、同条の秘密を守る義務との抵触の問題は生じないものであり、御指摘のような優先順位の問題は生じない。

四の11について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、情報公開法、行政機関個人情報保護法及び国家公務員法の規定に基づいて対応したものである。

五について

 ガイドラインにおいて、通報又は相談に関する秘密保持及び個人情報保護の徹底を図っており、企業名を明らかにすることや結果通知を明らかにすることは困難である。

六の1について

 金融庁等では、弁護士資格を持つ任期付職員の採用時において、任期終了後の再就職先が既に決定しているかの確認は行っていない。

六の2について

 利益相反の確認については、公益通報を受理するかを検討する段階において、通報事案への対応に関与する者に対して通報事案との関係を自己申告させるとともに、過去の勤務経歴等の確認を通じて、個別の事案ごとに金融庁等において確認を行っている。当該確認により利益相反関係を排除しており、御指摘のような「自己申告に虚偽の事実がないか調査」を行う必要はないほか、「金融庁等管轄の全金融機関に対して、顧問弁護士事務所及び取締役・監査役等を務める弁護士が所属する弁護士事務所等を開示させ」る必要はないと考えている。

六の3について

 お尋ねの「二〇一〇年度から二〇二一年度において金融庁等に弁護士資格を持つ任期付職員として採用された弁護士が何名おり」について、採用された人数は、平成二十二年度十八名、平成二十三年度十七名、平成二十四年度十九名、平成二十五年度十九名、平成二十六年度十八名、平成二十七年度十二名、平成二十八年度十九名、平成二十九年度十三名、平成三十年度十八名、令和元年度十七名、令和二年度十九名、令和三年度十三名(十月一日時点)である。

 また、「何名が前職と同じ法律事務所等に再就職したのか」については、行政文書の保存年限が三年である再就職の届出で再就職先が把握できる範囲でお答えすると、平成二十八年度採用者のうち現在までに十九名が退職し、うち再就職の届出により再就職が確認できた者が十名、うち前職と同じ法律事務所等に再就職した者が八名、平成二十九年度採用者のうち現在までに十二名が退職し、うち再就職の届出により再就職が確認できた者が十一名、うち前職と同じ法律事務所等に再就職した者が十名、平成三十年度採用者のうち現在まで十六名が退職し、うち再就職の届出により再就職が確認できた者が八名、うち前職と同じ法律事務所等に再就職した者が七名、令和元年度採用者のうち現在まで八名が退職し、うち再就職の届出により再就職が確認できた者が三名、うち前職と同じ法律事務所等に再就職した者が三名である。

六の4について

 お尋ねの「二〇一〇年度から二〇二一年度に、金融庁等において、弁護士資格を持つ職員としての採用に対して、年間何件の応募(書類の提出)があり、それぞれ何人を採用したのか。」については、応募件数に関する記録は残されておらず、お答えすることは困難である。

 また、「二〇一〇年度から二〇二一年度に採用された弁護士の直前の勤務先法律事務所名及び当該弁護士事務所から累計でそれぞれ何名採用されているか」については、同期間に金融庁等に採用された弁護士資格を持つ任期付職員が採用直前に勤務していた弁護士事務所の数は六十三である。このうち、直前に勤務していた職員が同期間累計で十名以上の事務所の数は五、弁護士数は九十八名であり、内訳は、森・濱田松本法律事務所二十八名、西村あさひ法律事務所二十三名、長島・大野・常松法律事務所二十名、アンダーソン・毛利・友常法律事務所十七名、TMI総合法律事務所十名である。

六の5について

 お尋ねの「二〇一〇年度から二〇二一年度までに弁護士資格を持つ職員として採用された職員に対して支払ったそれぞれの役職(課長補佐や係長等)ごとの一人当たりの年間の給与等の総額の平均値及び中央値」については、作業時間の制約から、実際の支給額を基にした数字を算出できないため、一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第百二十五号)等にのっとり、一律任期二年とし、通勤手当を除外して算出した数字をお示しすると、課長補佐等の平均値は約八百三十六万円であり、中央値は約七百八十六万円である。なお、室長等については、採用数が少なく個人が特定されるおそれがあり、個人情報に該当することから、お答えすることはできない。

六の6について

 お尋ねの「もし、大手法律事務所の弁護士らが金融庁等の任期付職員となることを前提に特別な契約(有利な条件での再雇用含む)や給与等の差額の補填(再雇用における年収の増額及び昇格・昇給等の埋め合わせ等の全てを含む)、その他福利厚生の継続等を受けていた場合、国家公務員に対する贈収賄若しくは、法令違反、規程違反、その他の財産上の利益供与等に該当するか。もし、このような行為が行われていた場合、政府は問題行為であると認識を示すか。」については、国家公務員は国家公務員倫理規程(平成十二年政令第百一号)により、在職中に社会通念上相当と認められる程度を超えて利益供与を受けることは禁止されているため、その態様によっては該当する場合がある。

六の7について

 お尋ねの「もし、金融庁等の任期付職員として採用されている弁護士が任期期間中において、前職の法律事務所等の福利厚生のサービス等を利用したか否かを問わず利用できる状況が継続していた場合や前職の法律事務所が福利厚生費を継続的に拠出していた場合、国家公務員に対する贈収賄若しくは特別利益・財産上利益の提供、規程違反、その他、不適切行為等に該当するか。」については、国家公務員は国家公務員倫理規程により、在職中に社会通念上相当と認められる程度を超えて利益供与を受けることは禁止されているため、その態様によっては該当する場合がある。

六の8について

 お尋ねの「任期付職員として採用されている弁護士が前職から、特別な契約(再雇用含む)や給与等の差額の補填(再雇用における年収の増額及び昇格・昇給等の埋め合わせ等の全てを含む)、その他福利厚生の継続等を受けているかどうかを採用の段階において確認しているか。」については、在職中は当然に国家公務員倫理法(平成十一年法律第百二十九号)や国家公務員倫理規程の適用を受け、社会通念上相当と認められる程度を超えて利益供与を受けることは禁止されている。

 また、弁護士資格を持つ者に限らず、任期付職員を採用する際には、国家公務員倫理に関する関係法令等の遵守について説明している。

 そのため、現在そのような確認は行っておらず、今後も一律に確認を行うことは考えていない。