質問主意書

第205回国会(臨時会)

質問主意書

質問第三八号

改ざん強要自死のご遺族からの手紙に対する岸田総理の答弁拒否に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十月十三日

小西 洋之


       参議院議長 山東 昭子 殿



   改ざん強要自死のご遺族からの手紙に対する岸田総理の答弁拒否に関する質問主意書

 令和三年十月十一日の衆議院本会議における代表質問において、森友公文書改ざん事件で自死に追い込まれた赤木俊夫氏の配偶者、赤木雅子氏が岸田総理に提出した手紙が、立憲民主党辻元議員の代表質問により、「財務省の調査は行われましたが、夫が改ざんを苦に亡くなったことは、書かれていません。なぜ、書かれていないのですか。赤木ファイルの中で夫は、改ざんや書換えをやるべきではないと本省に訴えています。それに、どのような返事があったのか、まだ分かっておりません。夫が正しいことを、それに対して、財務省がどのように対応したのか、調査してください。そして、新たな調査報告書には、夫が亡くなったいきさつをきちんと書いてください。正しいことが正しいと言えない社会は、おかしいと思います。岸田総理大臣なら、分かってくださると思います。第三者による再調査で真相を明らかにしてください。」と読み上げられた。

 それに対して、岸田総理は、「御指摘の手紙は拝読いたしました。その内容につきましては、しっかりと受け止めさせていただきたいと思います。そして、本件については、現在、民事訴訟において法的プロセスに委ねられております。今現在、原告と被告の立場にありますので、このお返事等については慎重に対応したいと思っています。この裁判の過程において、まずは裁判所の訴訟指揮に従いつつ丁寧に対応するよう、財務省に対して指示を行ったところであります。いずれにせよ、森友学園問題に係る決裁文書の改ざんについては、財務省において、捜査当局の協力も得て、事実を徹底に調査し、そして、自らの非をしっかり認めた調査報告書、これを取りまとめております。さらには、第三者である検察の捜査も行われ、結論が出ております。会計検査院においても、二度のこの調査を行っている、こうしたことです。その上で、本件については、これまでも国会などにおいて、様々なお尋ねに対し説明を行ってきたところであると承知をしており、今後も必要に応じてしっかり説明をしてまいります。」と答弁している。

 これに関し、以下を質問する。

一 岸田総理の答弁にある「財務省において、捜査当局の協力も得て、事実を徹底に調査し」について、財務省による当該「調査」においては、赤木雅子氏の手紙にある「夫が改ざんを苦に亡くなったこと」、「夫は、改ざんや書換えをやるべきではないと本省に訴えています。それに、どのような返事があったのか」、「夫が正しいことを、それに対して、財務省がどのように対応したのか」、「夫が亡くなったいきさつ」との各々の事項について調査をしているのか。仮に、調査をしているのであれば、どのような調査をし、どのような調査結果があるのかについて具体的に示されたい。

二 そもそも、岸田総理を始めとする政府においては、赤木雅子氏の手紙にある「夫が改ざんを苦に亡くなったこと」、「夫は、改ざんや書換えをやるべきではないと本省に訴えています。それに、どのような返事があったのか」、「夫が正しいことを、それに対して、財務省がどのように対応したのか」、「夫が亡くなったいきさつ」との各々の事項に関する事実関係についてどのような事実を承知しているのか。また、政府においてこれら各事項を調査する必要も責任もないと考えているのか。もし、そのように考えているのであれば、その理由を示されたい。

三 赤木雅子氏が「財務省の調査は行われましたが、夫が改ざんを苦に亡くなったことは、書かれていません。なぜ、書かれていないのですか。赤木ファイルの中で夫は、改ざんや書換えをやるべきではないと本省に訴えています。それに、どのような返事があったのか、まだ分かっておりません。夫が正しいことを、それに対して、財務省がどのように対応したのか、調査してください。そして、新たな調査報告書には、夫が亡くなったいきさつをきちんと書いてください。第三者による再調査で真相を明らかにしてください。」と手紙で訴えているのに対し、「財務省において、捜査当局の協力も得て、事実を徹底に調査し、そして、自らの非をしっかり認めた調査報告書、これを取りまとめております。」と答えるのは完全な答弁拒否(聞いていることに対して意図的に答えない答弁をしているもの)であり、「御指摘の手紙は拝読いたしました。その内容につきましては、しっかりと受け止めさせていただきたいと思います」との岸田総理の答弁が何の誠意もない虚偽を語る答弁であることを示しているのではないか。

四 岸田総理の答弁にある「検察の捜査」、「会計検査院においても、二度のこの調査」の「捜査」、「検査」は何を目的としてどのような事実関係の有無について行われたものであると理解しているのか。また、当該「捜査」及び「調査」においては、赤木雅子氏の手紙にある「夫が改ざんを苦に亡くなったこと」、「夫は、改ざんや書換えをやるべきではないと本省に訴えています。それに、どのような返事があったのか」、「夫が正しいことを、それに対して、財務省がどのように対応したのか」、「夫が亡くなったいきさつ」との各々の事項に関する事実関係は調査されていると政府は承知しているのか。もし、承知しているのであれば、どのような事実関係が調査結果としてあると承知しているのかについて具体的に示されたい。

五 岸田総理は「本件については、これまでも国会などにおいて、様々なお尋ねに対し説明を行ってきたところであると承知をしており、今後も必要に応じてしっかり説明をしてまいります」と答弁しているが、赤木雅子氏の手紙にある「夫が改ざんを苦に亡くなったこと」、「夫は、改ざんや書換えをやるべきではないと本省に訴えています。それに、どのような返事があったのか」、「夫が正しいことを、それに対して、財務省がどのように対応したのか」、「夫が亡くなったいきさつ」との各々の事項について、政府はこれまで国会で説明をしてきたことがあるのか、また、今後政府として国会で説明を行うつもりがあるのか。

六 岸田総理は「本件については、現在、民事訴訟において法的プロセスに委ねられております。今現在、原告と被告の立場にありますので、このお返事等については慎重に対応したいと思っています。この裁判の過程において、まずは裁判所の訴訟指揮に従いつつ丁寧に対応するよう、財務省に対して指示を行ったところであります。」と答弁しているが、この答弁は、公文書の改ざんを強要された職員の遺族からの損害賠償請求等の訴訟である被告が、訴訟当事者であることを理由に国会や国民に対する改ざん強要等の事実関係の説明を避けようとする趣旨であるのか。また、民事訴訟の法的プロセスの有無やその状況に関わらず、常に政府は国民・国会と遺族に対して、法令違反であるのみならず、憲法に基づく参議院による国政調査権の行使を欺く憲法違反である改ざん強要等の事実関係について説明する責任を有するのではないか。そもそも、政府が訴訟で不利になるからという主張を行うのは、誠に卑怯であり、行政のあり方として内閣法第一条等の法令の趣旨にも反する暴挙ではないか。

七 岸田総理は、「そして、民主主義の危機についてお尋ねがありました。総裁就任の会見でも、国民の声が政治に届かない、政治の説明が国民の心に響かない、こういった状況を捉えて、今まさに我が国の民主主義そのものが危機である、このように申し上げた次第です。国民の信頼と共感を最優先する政治姿勢を堅持し、丁寧な対話を積み重ねることで、真に国民が必要とする政策に取り組んでいく、こうしたことによってのみ、民主主義の危機を乗り越えていけるものと信じております。」と答弁しているところであるが、岸田総理において、財務省による公文書改ざんとその改ざん文書の国会及び会計検査院への提出は民主主義の危機と考えているのか。

八 前記七について、岸田総理において、財務省内の公文書改ざんの強要によって赤木俊夫氏が自死に追い込まれたことは民主主義の危機であると考えているのか。また、岸田総理において、総理の衆議院本会議の答弁は、赤木俊夫氏及び赤木雅子氏を始めとする国民の心に響かず、その信頼と共感を裏切り、丁寧な対話どころか人間の尊厳及び我が国の民主制を愚弄し、我が国の民主主義そのものを危機に陥れる答弁であると考えないのか。この答弁が、「国民の信頼と共感を最優先する政治姿勢を堅持し、丁寧な対話を積み重ねる」ものであると考える場合はその具体的な理由を示されたい。

  右質問する。