質問主意書

第205回国会(臨時会)

質問主意書

質問第三七号

河井夫妻の選挙買収と自民党本部資金の関係に係る岸田総理の答弁の欺まんに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十月十三日

小西 洋之


       参議院議長 山東 昭子 殿



   河井夫妻の選挙買収と自民党本部資金の関係に係る岸田総理の答弁の欺まんに関する質問主意書

 令和三年十月十一日の衆議院本会議において、「さて、先日、自民党広島県連は、河井克行、案里夫妻の買収事件の自民党の調査について、このままでは広島県民や国民は納得していないとして再調査を求めました。広島県の自民党の人たちが納得していないのに、全国の国民が納得するはずがありません。総理のお膝元からのろしが上がった。再調査するのですか。広島県民の皆様に向かってお答えをいただきたいと思います。」との代表質問に対し、岸田総理は、「広島の政治資金の再調査についてお尋ねがありました。本件については、前執行部において、河井夫妻側が作成した収支報告書について、党の公認会計士、税理士が党の内規に照らして監査をし、そして、領収書等の必要書類、これを添付した上で、法令に基づき広島県選挙管理委員会及び総務省に提出が済んでいる、こうした説明をしたと認識しております。甘利現幹事長も前執行部による説明を了とし、私も総裁としてその説明を了とした、こうした次第であります。」と答弁している。

 これに関し、以下を質問する。

一 「党の公認会計士、税理士が党の内規に照らして監査をし」の「監査」とは、政治資金規正法に定める政治資金監査であるのか。また、この自民党の「内規」は「政治資金監査に関する具体的な指針(政治資金監査マニュアル)」(令和三年九月改定版 政治資金適正化委員会)とどのような関係にあるものなのか。

二 当該「内規」は、登録政治資金監査人が行う政治資金監査にとどまらない内容の監査を定めているものなのか。そうである場合は、政治資金監査とは異なるどのような監査対象や監査手法などを定めているのかについて具体的に説明されたい。

三 「党の公認会計士、税理士が党の内規に照らして監査をし」の公認会計士及び税理士は、政治資金規正法第十九条の十三第二項に定める「会計帳簿、明細書、領収書等、領収書等を徴し難かった支出の明細書等及び振込明細書が保存されていること。」、「会計帳簿には国会議員関係政治団体に係るその年における支出の状況が記載されており、かつ、当該国会議員関係政治団体の会計責任者が当該会計帳簿を備えていること。」、「収支報告書は、会計帳簿、明細書、領収書等、領収書等を徴し難かった支出の明細書等及び振込明細書に基づいて支出の状況が表示されていること。」、「領収書等を徴し難かった支出の明細書等は、会計帳簿に基づいて記載されていること。」の事項以外の事項について監査を行っているのか、行っている場合はその具体的な事項について説明されたい。

四 二〇一九年一月一日から同年の参議院選挙の投票日までに河井夫妻がそれぞれ代表を務める政治団体に自民党本部から幾らの政治資金が交付(供与)され、そのうちの幾らが政党交付金の交付(供与)であったのか。

五 岸田総理は「私も総裁としてその説明を了とした」と述べているが、「政治資金監査に関する具体的な指針(政治資金監査マニュアル)」においては、「政治資金監査は、会計事務に対して外形的・定型的に行われるものである。」とされ、具体的には「政治資金監査は、政治資金規正法及び政治資金監査に関する具体的な指針(以下「政治資金監査マニュアル」という。)に基づき、国会議員関係政治団体が管理すべき会計帳簿等の関係書類が保存されているかどうか、それらの書面の記載が整合的かどうかを外形的・定型的に確認する業務である。また、政治資金監査を行うに当たっては、いうまでもなく国会議員関係政治団体の政治活動の自由を尊重することが求められるものであり、政治資金の使途の妥当性を評価するものではない。」とされているところ、当該「外形的・定型的に確認する業務」に過ぎない政治資金監査を「河井夫妻側が作成した収支報告書」に対して行ったことが、なぜ、河井夫妻それぞれが代表を務める政治団体に対して自民党本部から交付(供与)された政党交付金を含む政治資金をそれぞれの選挙買収の犯罪行為に使用していないと言えることになるのか。

六 政治資金監査は「政治資金監査に関する具体的な指針(政治資金監査マニュアル)」において「登録政治資金監査人は、第三者に対する調査や資料要求を行う権限を付与されていないことから、もっぱら会計責任者の責任において作成、提出された資料及び会計責任者の説明に基づき、支出の状況を確認することが期待される。」などともされている、政治団体の領収書の真実性に係る調査を第三者や資料要求等を行って遂行するといった実質的な調査権限を付与されていないものであるのであり、このような政治資金監査を受けたことを理由として、あたかも、河井夫妻の選挙買収の犯罪行為に自民党本部が交付した政党交付金を含む政治資金が使用されていないように岸田総理が説明することは自民党広島県連を含む国民と国会を欺く行為ではないか。

七 岸田総理は、「そして、民主主義の危機についてお尋ねがありました。総裁就任の会見でも、国民の声が政治に届かない、政治の説明が国民の心に響かない、こういった状況を捉えて、今まさに我が国の民主主義そのものが危機である、このように申し上げた次第です。国民の信頼と共感を最優先する政治姿勢を堅持し、丁寧な対話を積み重ねることで、真に国民が必要とする政策に取り組んでいく、こうしたことによってのみ、民主主義の危機を乗り越えていけるものと信じております。」と答弁しているところであるが、政治資金監査を受けたことを理由として自民党広島県連を始めとする国民が求める河井夫妻の選挙買収の犯罪行為に自民党本部が交付した政党交付金を含む政治資金が使用されていないかに係る再調査を拒否することは、国民の心に響かず、国民の信頼と共感を裏切り、我が国の民主主義そのものを危機に陥れる答弁ではないのか。

  右質問する。