質問主意書

第205回国会(臨時会)

質問主意書

質問第二八号

偽装滞在者に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十月八日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   偽装滞在者に関する質問主意書

 令和三年七月に参議院行政監視委員会に対して不適正な永住審査等に関する苦情が申し立てられたとの報告が私のもとに届いている。苦情の概要は「不適正な永住審査によって意に反して永住許可の身元保証人にされている」というものであった。また、「出入国在留管理庁に対して不正な手段をもって永住許可申請が行われたことについて情報提供を行ったが、特段の対応はなされていない」という内容も含まれていた。

 偽装滞在者については、出入国在留管理基本計画において「適正な出入国在留管理を行う上で看過できない問題」とされ、出入国在留管理庁職員を中心に作成された出入国在留管理実務六法においても偽装滞在は「偽装旅券を使用した不法入国や上陸審査を受けずに上陸した不法上陸の事案と比べても、行為の悪質性や結果の重大性において劣るものではない」とされている。この偽装滞在者には「永住者」の在留資格を有する者(以下「偽装永住者」という。)も含まれる。偽装永住者は形式的には永住者であるため、在留活動や在留期間に制限がなく、他の外国人が永住許可申請を行う際の身元保証人になることもできる。したがって、偽装滞在者の中でも偽装永住者は特に看過できない存在であるといえる。

 「永住者」の在留資格も出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)第二十二条の四に定める在留資格の取消し対象であるが、偽装永住者の把握は極めて困難である。法務省の広報資料によると、平成二十九年から令和二年の間に入管法第二十二条の四第一項第二号の取消事由によって取り消された在留資格は三百二十五件であるが、そのうち「永住者」はわずか二件である。このことは偽装永住者の把握がいかに難しいかを示すものであり、一般人からの情報提供は偽装永住者の実態を解明するための有力な端緒情報であるといえる。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 偽装滞在者について、政府で規定している定義があれば示されたい。

二 偽装滞在の悪質性や行為の重大性について、政府の見解如何。

三 婚姻関係の実態を偽装して日本人の配偶者等の在留資格を取得する「偽装結婚」は代表的な偽装滞在の一つとされる。これに関連して、婚姻当初は日本人配偶者と良好な婚姻関係にあったものの、その後、婚姻関係が悪化した外国人が、婚姻関係が良好であるかのように偽装して日本人の配偶者等の在留資格の在留期間更新許可または永住許可を受けた場合、当該外国人は偽装滞在者に該当するか。

四 東京地裁平成二十五年十二月三日判決において、入管法第二十二条の四第一項について「当該外国人が現に有する在留資格を取り消すか否かは法務大臣の合理的な裁量に委ねられていると解される」と判示されている。偽装永住者に関する情報提供によって在留資格取消事由が判明した場合に、入管法第二十二条の四第二項に基づく当該外国人に対する意見聴取を行うこともないまま、在留資格取消の手続を開始しない旨の判断をすることは、事実上、偽装永住者の存在を法務大臣が看過するものであるが、これは法務大臣の合理的な裁量の範囲にあるといえるか。

五 外国人が、日本人配偶者から離婚を求められている事実を出入国在留管理庁に秘して日本人の配偶者等の在留資格の在留期間更新許可または永住許可を受けた場合、不利益事実の秘匿という不正の手段によってこれらの許可を受けた者であることから、当該外国人は入管法第七十条第一項第二号の二の在留資格等不正取得罪に該当するか。

六 日本人配偶者の同意を得ずにその氏名を在日身元保証人として永住許可申請書に記載し、これを出入国在留管理庁に提出することで、出入国在留管理庁が管理する保有個人情報等を取り扱う情報システム(出入国在留管理庁保有個人情報等保護管理規程第二条に規定する「情報システム」をいう。)に身元保証人に関する不実の記録をさせる行為は、刑法第百五十七条第一項の電磁的公正証書原本不実記録罪の犯罪の構成要件を満たすか。

七 法務大臣が在留資格取消の手続を開始しない旨の決定をした場合においても、在留資格等不正取得罪または電磁的公正証書原本不実記録罪及びその両方が成立すると考えられる場合に、出入国在留管理庁職員には告発を行う義務が課せられるか。

八 入管法第二十二条の四第一項第二号の取消事由による永住者の取消件数が極端に少ない状況を鑑みるに、偽装永住者の実態を把握するための体制の整備や強化が必要であると考えられる。例えば、偽装滞在者に関する情報提供のうち偽装永住者に関するものを専門に収集・分析する組織や部署を設置する、永住許可後すぐに離婚している場合(離婚調停や離婚裁判の申立を行っている場合を含む)、当該外国人や身元保証人に対して意見聴取や参考となる書類(夫婦関係が記載されている調停調書や訴状、判決文等)の提出を求める等が想定される。このことに関連して、偽装永住者の実態の把握のための体制について、現状はどのようになっているか。また、体制の整備や強化の必要性について、政府の見解如何。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。