質問主意書

第205回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一三号

イベルメクチン耐性ヒゼンダニが出現した場合における対処法に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十月五日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   イベルメクチン耐性ヒゼンダニが出現した場合における対処法に関する質問主意書

 アムステルダムの老人介護施設で二〇〇七年九月から二〇〇八年三月の間に、入居者やスタッフの間で回帰性の疥癬が発生した。施設内外の感染者は皆、リンデーンとイベルメクチンを投与されたが、その後再発し、ペルメトリン五%の投与によって、ようやく全員の感染が治まり、少なくともその後三か月間の経過観察の中では症状が再発することはなかった。「A PERSISTENT PROBLEM WITH SCABIES IN AND OUTSIDE A NURSING HOME IN AMSTERDAM: INDICATIONS FOR RESISTANCE TO LINDANE AND IVERMECTIN, Eurosurveillance, Volume 13, Issue 48, 27 November 2008」によると、この大量発生についてはリンデーンとイベルメクチンに対する耐性がその原因になっていると考えるのが妥当であると思われるとのことである。

 日本では、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬として、医師がイベルメクチンを処方する場合があるほか、医師による処方なしで個人が輸入して使用している場合もある。しかしながら、欧州医薬品庁が新型コロナウイルス感染症に対する予防・治療を目的としたイベルメクチンの使用を控えるよう勧告したほか、米国疾病予防管理センターも、イベルメクチンを新型コロナウイルス感染症の治療薬として使用しないように注意を呼びかけた。

 国民が新型コロナウイルス感染症に対する予防・治療効果を期待してイベルメクチンを服用し続けることにより、イベルメクチンに耐性を持つヒゼンダニが出現した場合、日本ではアムステルダムの事例で有効性を示したペルメトリンが疥癬に使えないことから、疥癬への対処が困難になる患者が多数発生する可能性がある。

 右を踏まえて、以下質問する。

一 新型コロナウイルス感染症(COVID―19)診療の手引き・第五・二版には「最新のメタ解析(十のランダム化比較試験を対象)では、イベルメクチンによる治療は標準治療やプラセボと比較して、軽症患者における全死亡、入院期間、ウイルス消失時間を改善させなかったと報告されている。」とある。一方、「新型コロナウイルス感染症の治療に際しての医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて(依頼)」(厚生労働省保険局医療課令和二年四月九日事務連絡)には、「診療報酬明細書の摘要欄に記載されている投与の理由(診療の手引き(※)、ガイドライン等における現時点での知見や治療上の有益性と危険性を考慮した上で慎重に使用の適否が判断されたことなど)等も参考に、個々の症例に応じて医学的に判断していただくようお願いいたします」とある。

1 新型コロナウイルス感染症に対する予防・治療薬としてイベルメクチンを使用することに対し、政府の見解如何。

2 新型コロナウイルス感染症に対する予防・治療薬としてイベルメクチンを医師が処方した場合、現在、国民健康保険または社会保険の適用はされるのか。

二 政府は、欧州医薬品庁が新型コロナウイルス感染症に対する予防・治療を目的としたイベルメクチンの使用を控えるよう勧告した事実及び米国疾病予防管理センターがイベルメクチンを新型コロナウイルス感染症の治療薬として使用しないように注意を呼びかけた事実を認識しているか。

三 疥癬に対しペルメトリンを薬事承認していない理由如何。また、今後ペルメトリンを薬事承認する予定はあるか。

四 イベルメクチンに対する耐性を持ったヒゼンダニが出現した場合、医師はペルメトリンなしでどのような治療を行えばよいか。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。