質問主意書

第204回国会(常会)

答弁書


内閣参質二〇四第一二八号
  令和三年六月二十九日
内閣総理大臣 菅 義偉


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出重要土地等調査規制法案に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出重要土地等調査規制法案に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「思想・良心の自由、表現の自由、プライバシー権などを侵害しないための歯止め」の意味するところが必ずしも明らかではないが、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(令和三年法律第八十四号。以下「法」という。)第七条第一項の規定に基づき内閣総理大臣が提供を求めることができる情報は、「注視区域内にある土地等の利用者その他の関係者に関する情報のうちその者の氏名又は名称、住所その他政令で定めるもの」とされており、政府としては、当該政令において、提供を求めることができる情報として、注視区域内の土地等の利用者その他の関係者の思想及び良心並びに表現行為に関する情報を定めることは考えておらず、また、同項の規定による情報の提供の求めに基づく関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長その他の執行機関から内閣総理大臣に対する情報の提供は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号。以下「行政機関個人情報保護法」という。)又は条例の定めるところにより行われることとなるから、同項の規定による情報の提供の求めにより、お尋ねの「思想・良心の自由、表現の自由、プライバシー権」を不当に侵害することはないものと考えている。

二について

 法に基づく調査によって収集された個人情報は、内閣府が、行政機関個人情報保護法に基づき適切に管理することとなり、内閣府が保有する個人情報については、行政機関個人情報保護法第四章第一節及び第二節の規定により、開示又は訂正を請求することができる。また、法に基づく事務を遂行する過程において作成し、又は取得した個人情報を含む行政文書については、公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)に基づき、保存期間を設定するとともに、保存期間が満了したときには、国立公文書館等への移管又は廃棄の措置をとることとなる。

三の1について

 法第一条の「重要施設」とは、法第二条第二項第一号に規定する防衛関係施設、同項第二号に規定する海上保安庁の施設及び同項第三号に規定する生活関連施設をいう。また、法第一条の「機能を阻害する行為」とは、法第二条第二項第一号に規定する防衛関係施設、同項第二号に規定する海上保安庁の施設若しくは同項第三号に規定する生活関連施設又は同条第三項第一号に規定する離島若しくは同項第二号に規定する有人国境離島地域離島について、それぞれ、同条第四項第一号、第二号若しくは第三号又は第五項第一号若しくは第二号に規定する機能を阻害する行為をいう。

三の2について

 法第三条の「必要な最小限度」とは、注視区域内にある土地等が重要施設の施設機能又は国境離島等の離島機能を阻害する行為の用に供されることを防止するために必要な最小の範囲をいう。

三の3について

 法第四条第二項第二号の「経済的社会的観点から留意すべき事項」とは、法第五条第一項の規定による注視区域の指定又は法第十二条第一項の規定による特別注視区域の指定(以下「区域指定」という。)によって生じ得る経済社会活動への影響その他の区域指定に当たって重要施設等の周辺又は国境離島等の経済社会状況を踏まえて留意する必要がある事項をいう。

三の4について

 法第十条第一項の「通常生ずべき損失」とは、法第九条第一項の規定による勧告又は同条第二項の規定による命令という土地等の所有権その他の使用又は収益をする権利(以下「所有権等」という。)に内在する制約として一般的に当然に受認すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲として所有権等に加えられた制限に係る措置をとったこととの間に相当因果関係が認められる損失をいう。

四について

 区域指定によって、不動産の通常の使用、収益又は処分が制約されるものではないことから、区域指定が土地の価格に影響を及ぼす可能性は小さいものと考えている。また、仮に、区域指定によって当該区域内の土地の価格が下落したとしても、土地等の所有権等に内在する制約として一般的に当然に受認すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課すものではないことから、補償の必要はないと考えている。