質問主意書

第204回国会(常会)

答弁書


内閣参質二〇四第九一号
  令和三年六月十八日
内閣総理大臣 菅 義偉


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員石垣のりこ君提出経済連携協定による日本の農林水産物への影響に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石垣のりこ君提出経済連携協定による日本の農林水産物への影響に関する質問に対する答弁書

一について

 前段のお尋ねについては、農林水産物の生産額及び生産量への影響を試算する場合には、現実に起こり得る影響を試算すべきものと考えており、各経済連携協定等自体の発効による効果だけでなく、国内対策の効果も併せて考えることが適切であると考えている。このため、国内対策を講じない場合の試算を行うことは現実に起こり得ることとは異なる場合の試算を行うこととなることから、このような試算を行うことは考えていない。

 また、後段のお尋ねの趣旨が必ずしも明らかでないが、仮に地域的な包括的経済連携協定(以下「本協定」という。)についてのお尋ねであれば、本協定については、御指摘の「重要五品目」を関税削減及び撤廃から除外していること、関税撤廃率は近年締結された二国間の経済連携協定並みの水準であること、譲許した品目についても用途や価格面ですみ分けができていたり、締結済みの経済連携協定と同水準の関税率であること、多くの品目で長期の関税撤廃期間が確保されていること等から、国内農林水産業への特段の影響はないと考えており、影響試算を行う予定はない。

二について

 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定(令和元年条約第十号)及び関税暫定措置法(昭和三十五年法律第三十六号)第七条の八第一項の規定に基づき牛肉のセーフガードが令和二年度に発動した理由については、同年度の我が国の牛肉輸入量は対前年度比で五パーセントの減となっていた中で、米国と並ぶ我が国の牛肉の主要な輸入先国であるオーストラリアにおいて、平成三十年から令和元年までにかけて発生した干ばつの影響により減少した牛の飼養頭数の回復を図るため牛肉輸出量が減少し、令和二年度の我が国のオーストラリア産牛肉輸入量が対前年度比で十二パーセントの大幅な減となり、これを補う形で米国産牛肉が輸入されたことが主な要因であると考えている。

 このため、同協定発効による関税の引下げの影響が牛肉のセーフガードが令和二年度に発動した主な要因であるとは考えていない。

三について

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(平成三十年条約第十五号)、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(平成三十年条約第十六号)及び日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定それぞれに係る農林水産物への影響試算は、各協定を提出した国会における審議に資するよう、その協定についてその審議の時点でのデータに基づき算出したものであり、これらを合計することを含め再度の試算を行う考えはない。