質問主意書

第204回国会(常会)

答弁書


内閣参質二〇四第一八号
  令和三年三月二日
内閣総理大臣 菅 義偉


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員福島みずほ君提出六ヶ所再処理工場に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出六ヶ所再処理工場に関する質問に対する答弁書

一の1について

 使用済燃料の再処理の事業に関する規則(昭和四十六年総理府令第十号)第一条の三に定める重大な事故(以下「重大事故」という。)のうち、お尋ねの「冷却機能の喪失による蒸発乾固」については、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第四十四条の四第一項の規定に基づき、日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)から平成二十六年一月七日付けでなされた、再処理事業に係る変更の許可を求める申請に対する審査(以下「本件審査」という。)において、再処理施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成二十五年原子力規制委員会規則第二十七号。以下「事業指定基準規則」という。)及び「再処理施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(平成二十五年十一月二十七日原子力規制委員会決定。以下「事業指定基準規則解釈」という。)に基づき、高レベル放射性液体廃棄物(以下「高レベル廃液」という。)等の沸騰を未然に防止するための対策、高レベル廃液等の沸騰を未然に防止できなかった場合に乾燥及び固化に至ることを防止するための対策並びに高レベル廃液等の温度を低下させ沸騰しない状態を維持することで事態を収束させるための対策が有効に機能するかを原子力規制委員会で確認したものであり、御指摘のように「乾固し、事故が収束する」とは認識していない。

一の2について

 本件審査は、事業指定基準規則及び事業指定基準規則解釈に基づき、高レベル廃液等の沸騰を未然に防止するための対策、高レベル廃液等の沸騰を未然に防止できなかった場合に乾燥及び固化に至ることを防止するための対策並びに高レベル廃液等の温度を低下させ沸騰しない状態を維持することで事態を収束させるための対策が有効に機能するかを原子力規制委員会で確認したものであり、御指摘の「蒸発乾固後の揮発や爆発」の対策については対象としていない。

一の3について

 高レベル廃液貯槽及び不溶解残渣廃液貯槽では、臨界事故が発生しないこと及び冷却機能の喪失による蒸発乾固や放射線分解により発生する水素による爆発の発生を仮定した場合においてもこれらの重大事故から臨界事故が連鎖して発生しないことについては、令和元年九月十一日開催の第三百一回核燃料施設等の新規制基準適合性に係る審査会合を始めとする一連の会合において確認している。

一の4について

 お尋ねの「「ばらつき効果」が配慮された数値」の意味するところが必ずしも明らかではないが、日本原燃の再処理事業所再処理施設(以下「六ヶ所再処理施設」という。)の基準地震動(七百ガル)は、敷地に大きな影響を与えると予想される地震として選定された「出戸西方断層による地震」等の「応答スペクトルに基づく地震動評価」により、各種の不確かさを考慮して策定された基準地震動の最大加速度であり、原子力規制委員会は、事業指定基準規則解釈別記二の規定に基づいて適切に策定された地震動であることを確認している。
 なお、御指摘の「地震の基準地震動(七百ガル)の一・二倍(八百四十ガル)」は、事業指定基準規則第三十一条において、事業指定基準規則第一条第二項第六号に規定する重大事故等対処施設の要件として、基準地震動による地震力に対して重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれるおそれがないものであることを規定していることに対し、申請者である日本原燃が基準地震動の一・二倍を考慮して設計するとの方針として示したものである。

一の5について

 本件審査において、お尋ねの「五十五センチメートルもの降灰環境下で人は生きていけるのか」に関して、御指摘の「実証試験が行われたのか」については確認していない。

一の6について

 本件審査において、お尋ねの「燃料の輸送をどのように行うのか」の具体的な手法については確認していない。また、お尋ねの「冷却ができると判断した理由は実証試験に基づくものか」については、本件審査において、日本原燃による「実証試験」の実施は確認していない。

二について

 お尋ねの「当時の再処理規則第六条の二(性能の技術上の基準)に定められていた第一項から第七項までの基準」に規定されていた、安全上必要な事項については、現在、再処理施設の技術基準に関する規則(令和二年原子力規制委員会規則第九号)に規定されている。
 また、原子力利用における安全対策の強化のための核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の一部を改正する法律(平成二十九年法律第十五号)第三条の規定による原子炉等規制法第四十六条第一項の改正により、原子力規制委員会による検査(使用前検査)が使用前事業者検査へ改められたが、その趣旨は、安全確保の第一義的な責任は事業者にあるという基本的な考え方を徹底するものである。なお、同条第三項において、使用前事業者検査についての原子力規制検査により、設置又は変更の工事が認可された設計及び工事の計画に従って行われたものであること並びに原子炉等規制法第四十六条の二の技術上の基準に適合するものであることについて同委員会の確認を受けた後でなければ、再処理事業者は再処理施設を使用してはならないこととしている。

三の1について

 御指摘の「一九五七年九月に旧ソ連で起こった「ウラルの核惨事」が銘記されなければならない。」及び「このような人々の生活を根底から覆し、難民にするような大事故を起こした場合、」の意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に六ヶ所再処理施設において事故が起きた場合、原子力災害の拡大の防止等に必要な措置の実施や原子力損害の賠償等について、その第一義的な責任は、事業者が負うこととなる。さらに、原子力規制委員会を含め、政府としても、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)等の関係法令に基づき、緊急事態応急対策等の実施のために必要な措置を講ずる等の責務を有するものと認識している。

三の2について

 東京電力株式会社の福島第一原子力発電所の事故のような事故を二度と繰り返さないという覚悟の下、原子力規制委員会は、最新の科学的知見や国際原子力機関等の規制基準を参考にしつつ再処理施設の規制に必要な基準を設定し、六ヶ所再処理施設がその基準に適合しているか否かを本件審査で確認したものである。