質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第一二七号

ケアリーバーの支援の拡充に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年六月十六日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   ケアリーバーの支援の拡充に関する質問主意書

 児童養護施設や里親家庭等で育った社会的養護の経験者であるケアリーバーに関しては、児童福祉法の制度上、対象が十八歳までで支援に切れ目が生じるのが最大の課題である。厚生労働省は二十二歳の年度末まで児童養護施設や里親家庭等の支援が受けられる社会的養護自立支援事業の充実を図っているが、未だ十分とは評価し得ない。

 生まれや育ちで格差が生じることを容認するのは適切ではない。自己責任ではなく、公助や共助により機会の平等や健康で文化的な最低限度の生活が守られなければならないと考える。

 以上の認識を前提に以下質問する。

一 児童養護施設には、「措置延長」という制度がある。進学など必要に応じて二十歳まで施設にいられる制度である。ケアリーバーの現状から勘案し、この制度は積極的に活用されるべきと考えるが、この措置延長制度の利用割合を示されたい。

二 社会的養護の経験者は、児童養護施設等の退所に先立ち、社会に出た時のための準備を行っておくことが非常に重要である。具体的には、社会常識、一人暮らしの注意点、ビジネスマナー、金銭感覚、家計のやりくり、日々の食事や健康管理など、身に着けなければならない素養は非常に多岐にわたる。

 社会的養護を受けている者が、このような社会一般常識を学ぶ機会を確保するのは重要と考えるが、この点に関する政府の見解を示されたい。

 また、この点に関し、現在どのような取組がなされているか、併せて明らかにされたい。

三 前記一及び二に関連し、退所後の支援の重要性もさることながら、支援情報の周知やケアリーバーが自分の意思で相談先や進路を選べる環境整備など、自立後を見据えた事前のサポートも劣らず重要との見解があるが、それに関する政府の見解を示されたい。

四 厚生労働省による調査は児童養護施設の職員や里親に対しても実施されている。直近一年間の交流状況では一回もないが最多の三十一・一%、次いで半年に一回以上が十八・六%だった。退所後に「サポートを受けていない」と答えたケアリーバーの割合は十九・四%に上るとされる。

 また、そもそも連絡先が不明で調査票を渡せたのは四十五・一%で、全体の回答率は二割を下回っている。

 ケアリーバー支援の前提となるケアリーバーの現況把握においてすら心許ない状況を示していると考えるが、このような状況について政府はどのように評価しているか。

五 厚生労働省も退所後の支援の重要性は認識しているが、退所後支援の軸となる相談支援の専門家「支援コーディネーター」を配置していない児童相談所が、七十三設置自治体の内、三十五・六%であることが明らかになった。必置すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

六 退所後支援について施設については不十分ながらもそれなりの対応がなされているケースが多いが、里親委託に関しては個々の家庭単位という性質もあり、社会的養護終了後の里親委託出身者へのサポートについては大きな懸念が指摘される。

 里親委託終了後の支援についてはどのようなスキームが用意されているか。また、里親委託終了後の支援の現状について、政府はどのように評価しているか。

七 「社会的養護の終了後も、長期間社会的養護の経験者と定期的に関わる仕組みを自治体が作ることが必要」との有識者の提言があるが、これに関する政府の見解を示されたい。

  右質問する。