質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第一二一号

中央銀行デジタル通貨に対する現状認識と今後の取組方針に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年六月十五日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   中央銀行デジタル通貨に対する現状認識と今後の取組方針に関する質問主意書

 中央銀行デジタル通貨(以下「CBDC」という。)とは、民間銀行が中央銀行に保有する当座預金とは異なる、新たな形態の電子的な中央銀行マネーである。CBDCについては世界的に研究が進み、発行機運が高まっており、特に、中国における「デジタル人民元」発行に向けた積極的対応が目立っている。

 政府は、二〇二〇年七月に策定した「経済財政運営と改革の基本方針二〇二〇」において、「中央銀行デジタル通貨については、日本銀行において技術的な検証を狙いとした実証実験を行うなど、各国と連携しつつ検討を行う」との方針を初めて示した。

 その後、二〇二〇年十月、日本銀行を含む主要中央銀行によるCBDCの活用可能性を評価するためのグループが、幅広い主体が利用可能なCBDCが満たすべき基本原則について示した報告書「中央銀行デジタル通貨:基本的な原則と特性」を公表した。あわせて、日本銀行は、「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を公表し、現時点でCBDCを発行する計画はないものの、様々な環境変化に的確に対応できるよう必要な準備を進めていくとの方針を明らかにした。本年四月からは、実証実験(概念実証フェーズ一)を開始している。

 以上の認識を踏まえて、日本におけるCBDCへの現状認識と今後の取組方針に関して、以下質問する。

一 二〇二〇年十一月二十四日の参議院財政金融委員会で、デジタル通貨に関する民間の動きと一般利用型CBDCへの取組との関係を問い質した私の質疑に対し、黒田日本銀行総裁からは、CBDCを発行する場合には、中央銀行と民間部門による決済システムの二層構造を維持することが適当としており、あくまでも民間の取組を後押しするという考え方に変わりはない旨の答弁があった。

 政府は、一般利用型CBDCを導入した際の民間との棲み分けはどのように実現されるものであると承知しているのか。

二 政府は、日本銀行が実施している実証実験において、解決すべき課題としてどのような事項があると認識しているのか。また、日本銀行による実証実験の今後のスケジュールや実験の内容について、承知するところを示されたい。

三 CBDCを発行するか否かについては、中央銀行の金融政策にとどまらず、その国の経済や社会の在り方にも大きな影響を及ぼす要因となり得る。日本において発行の是非を決定する際には、日本銀行だけではなく政府も含めてしっかりと議論を行った上での政治判断が必要な案件だと考える。

 日本銀行は現時点でCBDCを発行する計画はないとしているが、今回の実証実験の狙いには、他国の動向と照らし合わせて、CBDCの発行が必要と判断すればすぐに発行できる体制を整えておくこともあるものと理解している。

 国際的にCBDCの発行に向けた動きが加速する中で、現時点で日本銀行が予定している実証実験のスケジュールで、仮に日本がCBDCの発行を行うとなった場合に遅れをとることになる可能性はないか。政府の認識を伺う。

四 CBDCは世界各国で研究が進み発行機運が高まっている。特に二〇二二年北京冬季オリンピックまでの「デジタル人民元」発行を目指す中国は、二〇二〇年十月にハイテク都市の深センを皮切りにデジタル人民元の大規模な実証実験をスタートさせるなど、非常に積極的な対応をとっている。

 国際金融の動向にも大きな影響を与える可能性を持つと思われるデジタル人民元の動向について、政府は日本銀行とともにどのような評価を行っているのか示されたい。

五 CBDCを巡る動きに関して米国の動向は無視できない要素だと考えるが、政府は日本銀行とともに米国のCBDCに関する動きをどのように評価し、どのように関係していく方針か。

六 CBDCの存在は国際金融や国際経済の動向に大きな影響を与える可能性もあることを考えると、将来の国際標準等も意識した取組の必要性を考慮すべきかと考えるが、この点についての認識を伺う。

  右質問する。