質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第一一六号

日本軍「慰安婦」関連文書に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年六月十五日

紙 智子


       参議院議長 山東 昭子 殿



   日本軍「慰安婦」関連文書に関する質問主意書

 一九九六年七月二十四日に発出された「いわゆる従軍慰安婦問題に関連する資料等(依頼)」によってこの度、法務省から内閣官房副長官補付に「長崎地裁及び長崎控訴院における国外移送誘拐被告事件判決概要」(以下「国外移送誘拐被告事件判決概要」という。)が送られたことを踏まえて、以下質問する。

一 内閣官房副長官補付が、法務省から国外移送誘拐被告事件判決概要を受け取った年月日を明らかにされたい。

二 法務省から国外移送誘拐被告事件判決概要を受け取るに当たり、法務省と内閣官房副長官補付との間で協議、相談、検討を行なったと聞いているが、それは事実か。事実であるとすれば、どのような内容の協議、相談、検討を行ったのか。どのような内容の協議、相談、検討を行ったのかが分かる文書が内閣官房副長官補付や法務省に存在しているか。

三 法務省が、この度送付した国外移送誘拐被告事件判決概要を作成した時期、作成した理由、法務省が行政文書として今日まで保有していた理由、何故今日になって提出に至ったのかの経緯を明らかにされたい。

四 この国外移送誘拐被告事件判決概要には判決理由として「いわゆる上海事件の勃発により多数帝国海軍軍人の駐屯を見るに至ったことをもって、海軍指定慰安所なる名称の下に従来の営業を拡張することを欲し、(中略)、当該営業所において醜業に従事すべき日本婦女を日本内地において雇入れ移送することを担当し、(中略)、婦女雇入れに際しては専ら醜業に従事するものであることの情を秘し、単に女給又は女中として雇うもののように欺罔し勧説誘惑して上海に移送することを謀議し、(中略)、長崎港出帆の船舶にa女ないしo女十五名を順次乗船させ、もって同女等を帝国外に移送したものである」と述べられているか示されたい。

五 この国外移送誘拐被告事件の判決は、起訴された被告ら十人に対し、当時の刑法第二百二十六条第一項の「帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス」などの条項を適用して全員に法的責任を認め有罪判決を下したものであると認められるが政府の見解は如何か。

六 藤田幸久議員が二〇一四年五月十二日提出した「「慰安婦」問題に関する質問主意書」(第百八十六回国会質問第九七号)で、「戦前、中国・上海の旧日本軍海軍慰安所で「従軍慰安婦」として働かせるため、日本人女性十五人をだまし、長崎から移送した慰安所の日本人経営者らを当時の刑法の国外移送誘拐罪に当たるとして、有罪とした長崎地裁判決文(國外移送誘拐被告事件に関する長崎地方裁判所刑事部昭和十一年二月十四日判決)と同控訴審判決文(控訴審長崎控訴院第一刑事部昭和十一年九月二十八日判決)が現存することが二〇〇四年六月十五日に新聞で報じられているが、政府はこの判決文を入手し、調査したのか。慰安婦問題の真相究明のために重要な戦前の公文書であるので、同上告審の大審院判決(昭和十二年三月五日第四刑事部)も含めて内容を示されたい」とし、これに対する答弁書(内閣参質一八六第九七号)では「長崎地方検察庁において現在保存されているこれらの判決に係る判決書の内容を確認したところ、それぞれの要旨は、被告人ら十名が、雇入れに係る婦女をして中華民国上海駐屯の帝国海軍軍人を顧客として醜業に従事させる営業のための婦女雇入れに際して専ら醜業に従事するものであることの情を秘し単に女給又は女中と欺罔して勧説誘惑して上海に移送することを共謀し、昭和七年、長崎市内等において、十五名の婦女に対し、行き先は食堂であるなどと虚言を構えて誘惑するなどし、長崎港出帆の船に乗船させて誘拐し、上海に上陸させて、もって被拐取者を帝国外に移送したことを理由に、被告人三名を各懲役三年六月に、被告人二名を各懲役二年六月に、被告人二名を各懲役二年に、被告人三名を各懲役一年六月に処するとともに、懲役一年六月に処する被告人三名に対しては、三年間その刑の執行を猶予するというもの、長崎地方裁判所が懲役三年六月に処した被告人三名を各懲役二年六月に、同裁判所が懲役二年六月に処した被告人二名及び懲役二年に処した被告人二名を各懲役二年に処し、同裁判所が懲役一年六月に処するとともに三年間その刑の執行を猶予した被告人一名を懲役一年六月に処するとともに三年間その刑の執行を猶予するというもの及び上告はいずれも棄却するというものであった」とあるが、今回送られた「国外移送誘拐被告事件判決概要」では、上告審の内容が含まれていないが、その理由は何か。

七 「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」について、本年五月二十六日の衆議院文部科学委員会において、日本共産党の畑野君枝議員の質疑に対し、政府は「政府の基本的立場でございますけれども、この平成五年八月四日の内閣官房長官談話を全体として継承しているというものでございます」と答弁している。

 同内閣官房長官談話では、「政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい」としているが、政府として「民間の研究」に基づく資料の収集も行うべきではないか。また、民間の研究者からの「慰安婦」関連文書の提供の申し出がある場合は、政府として受け入れることにしているか。

八 本年四月二十七日に閣議決定した「衆議院議員馬場伸幸君提出「従軍慰安婦」等の表現に関する質問に対する答弁書」において、政府は「平成四年七月六日及び平成五年八月四日の二度にわたり公表された政府による慰安婦問題に関する調査において、調査対象としたその当時の公文書等の資料の中には、「慰安婦」又は「特殊慰安婦」との用語は用いられているものの」と答弁しているが「特殊慰安婦」という用語を使っている文書名を明らかにされたい。また、その文書の収集年月日を明らかにされたい。

九 本年五月三十一日の参議院決算委員会における自由民主党の有村治子議員の質疑に対し、加藤勝信内閣官房長官が「これまで日本政府が発見した資料の中に軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見付かっておらず」と答弁しているが、このような資料の調査・研究を行っている政府の部署はどこか。政府が発見した資料を保管している内閣官房内閣副長官補室は、保管資料の記述などについて調査・検証を行っているか。

十 「慰安婦」関連文書として、政府関係機関から新たな情報が内閣官房に届けられた場合に、どのようにそれを公表しているのか。

  右質問する。