質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇四号

金融庁及び証券取引等監視委員会の公益通報制度が機能不全に陥っているとの指摘に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年六月十一日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   金融庁及び証券取引等監視委員会の公益通報制度が機能不全に陥っているとの指摘に関する質問主意書

 金融庁や証券取引等監視委員会などの行政機関は、公益通報者保護法及び公益通報者保護法を踏まえた国の行政機関の通報対応に関するガイドライン(内部の職員等からの通報)(平成二十九年三月二十一日一部改正)等に基づいて公益通報の手続きを進める。しかし、実際には、当該ガイドラインや規則等に則った運営を行っておらず公益通報者が著しい不利益を被っているとの指摘が私のもとに寄せられた。

 証券取引等監視委員会が公益通報として受理した「証監委第四二五三号」(甲一)の「ファンドの運用における日本生命への不当な利益提供、発注伝票への法令で定められた記載事項の不記載、発注ミスにより顧客に損失を与えたことに対する不適切な対応」について、証券取引等監視委員会は公益通報者に対して調査結果を通知していない。

 前述のガイドラインの「三.通報への対応」中、「(二)調査の実施」の④において、「適正な業務の遂行及び利害関係人の秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がある場合を除き、調査中は、調査の進捗状況について、通報者に対し、適宜通知するとともに、調査結果は可及的速やかに取りまとめ、その結果を、遅滞なく通知する」と定められている。

 しかし、証券取引等監視委員会は、公益通報者に対して「調査が終了した」旨の通知のみで、調査結果を通知することなく証監委第四二五三号の公益通報案件を終わらせた。その後、公益通報者が金融庁に対して別件を公益通報した際に、保有個人情報の開示請求をしたことにより開示された資料に、「過去に伝票未作成の事例があったことも踏まえると、通報内容には真実相当性があると考えられる」との記載があった。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 行政機関は、公益通報を受理した場合、公益通報者に対して「調査結果は可及的速やかに取りまとめ、その結果を、遅滞なく通知」しなければならないにもかかわらず、実際には、調査結果の通知が行われていない。証券取引等監視委員会は「当該調査が終了いたしましたので、お知らせいたします」という調査終了の通知をもって、公益通報の対応を終わらせている。公益通報事案に関しては、公益通報者からの具体的な法令違反等の証拠資料を基に、行政機関が公益通報として受理し、調査を行うものである。そのため金融庁及び証券取引等監視委員会が公益通報者に、公益通報事実の有無等の結果通知をすることにより、被公益通報者の適正な業務の遂行及び利害関係人の秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障があるとは考えられない。その一方で、公益通報者は公益通報した事実及び個人名等が企業に開示及び推認される状況に置かれているならば、公益通報したことを理由に解雇や不利益取扱いを受けないためにも、行政機関は公益通報の調査結果及び是正措置の内容を公益通報者に通知するべきであり、通知をしないことは、行政が公益通報者を見捨てることと同義であり、公益通報者保護に反するのではないかと考えるが、政府の見解を伺いたい。

二 実際に金融庁及び証券取引等監視委員会に公益通報したことを理由に公益通報者が解雇されるという事案が発生しており、どのような場合に、公益通報者に調査結果及び是正措置の内容を通知するのか。また、具体的にどのような場合に、調査結果の通知や是正措置の内容の通知が、「適正な業務の遂行及び利害関係人の秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がある」と判断するのか。そもそも、公益通報者が法令違反等に関する具体的な証拠資料を金融庁及び証券取引等監視委員会に提出している状況では、調査により、その事実の確認が取れた場合は、最初から公益通報者が具体的な不正の内容を認識している以上、適正な業務の遂行及び利害関係人の秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がないのではないかと考えるが、政府の見解を伺いたい。

三 実際に金融庁及び証券取引等監視委員会に公益通報したことを理由に公益通報者が解雇されるという事案が発生しており、被公益通報者により、公益通報者が、「虚偽の公益通報を行った」として解雇された場合に、公益通報者は裁判において公益通報内容の真実相当性を争わなければならない。金融庁及び証券取引等監視委員会が公益通報者に対して、調査結果及び是正措置の内容を通知せずに、被公益通報者が「金融庁及び証券取引等監視委員会からの指摘事項はない」旨を強弁した場合、公益通報者が公益通報の真実相当性を証明することは困難である。その状況においても、金融庁及び証券取引等監視委員会が公益通報の調査結果及び是正措置の内容を公益通報者に通知しないのは、公益通報者を見捨てることと同義であり、公益通報者に著しい不利益を与えるのではないか。公益通報者に解雇若しくは不利益取扱いが行われた場合に、調査結果及び是正措置の内容を開示するように対応するか。政府の見解を伺いたい。

四 金融庁及び証券取引等監視委員会において、それぞれ、二〇一八年四月から二〇二一年三月までの間に年間何件の公益通報があり、何件を公益通報として受理し、そのうち、何件を結果通知及び是正措置の内容を公益通報者に通知せず、調査が終了したという通知のみを行ったか、何件を結果通知及び是正措置の内容を公益通報者に通知したのか示されたい。

 また、結果及び是正措置の内容を公益通報に通知しなかった場合と通知した場合の被公益通報企業の従業員数等の事業規模、株式上場の有無、国家公務員の再就職の件数を示されたい。

五 金融庁及び証券取引等監視委員会における公益通報に関する保有個人情報の開示請求とは、開示請求者に関する情報のみを開示するという理解で良いか。開示請求者と関係なく被公益通報者において、過去に行われた法令違反の事実が開示されることはあるのか。また、開示請求において不開示とする場合に「監査・検査方法が漏洩するおそれがある」とあるが、大手金融機関の関係先弁護士が調査に関与している時点で、調査方法等が大手金融機関側に漏洩するリスクがあるのではないか。何故国民には不開示としておきながら大手金融機関には漏洩する可能性のある体制をとっているのか。政府の見解を伺いたい。

六 金融庁及び証券取引等監視委員会は、金融機関で行われた法令違反について調査結果の如何によっては、検察へ刑事告発することもある。刑事罰のある重大な法令違反に関する公益通報を受理していたにもかかわらず、行政運営上の遅延、不適切、怠慢、不注意、能力不足などの不適正行政によって公訴時効を迎え、行政及び国民が刑事告発又は告訴をする権利が侵害されることがないよう、どのような対応を取っているか。また、公益通報者から具体的な法令違反の証拠資料を受領していたにもかかわらず、公益通報を受理した事案について公訴時効を迎えた場合は、金融庁及び証券取引等監視委員会の行政運営上の遅延、不適切、怠慢、不注意、能力不足などの不適正行政に該当するか。政府の見解を伺いたい。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。