質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇三号

金融庁法令等遵守調査室のメンバーの選出・任命に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年六月十一日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   金融庁法令等遵守調査室のメンバーの選出・任命に関する質問主意書

 金融機関の不正に関する公益通報を受け付ける金融庁法令等遵守調査室のメンバー等が大手金融機関の取締役や監査役等を務める弁護士の事務所から選出されており、不正を調査する側の人物が不正を調査される側の大手金融機関から間接的な利益供与を受けている関係にある(証券取引等監視委員会においても同様)との指摘が私のもとに寄せられた。金融庁はそれら利益相反関係を国民に開示しておらず、金融庁及び証券取引等監視委員会の職員による大手金融機関に対する忖度・癒着・情報漏洩の原因となる可能性がある。ここ数年だけでも大手金融機関による不正が相次いでおり、過去にも、金融庁は大手金融機関に関する公益通報を受理することなく、参議院財政金融委員会で公益通報事案が公になった後に公益通報として受理したという事案がある(二〇一四年の第一生命保険株式会社による不払い隠し及び虚偽報告等)。

 令和三年四月十二日現在の金融庁法令等遵守調査室のメンバーは、室長の田中豊氏(総合政策局参事)ほか十一名となっている。法令等遵守調査室は、大手金融機関の取締役等を務める若しくは顧問契約を結んでいる弁護士の事務所から出向してきた弁護士が金融機関の法令違反等について公益通報として受理するか否かを検討しており、金融庁及び証券取引等監視委員会の他の部門においても同様の事案が散見される。これは、日本生命保険相互会社から金銭的な利益供与を受けている弁護士の事務所から選出された人物が日本生命保険相互会社の不正を調査する可能性があるなど、重大な利益相反関係といえる。

 例えば、法令等遵守調査室の伊藤侑也氏は牛島総合法律事務所に所属する弁護士であり、その牛島総合法律事務所の代表の牛島信氏は日本生命保険相互会社の社外取締役を務めている人物である。その他の人物に関しても、大手金融機関の取締役や監査役、顧問弁護士、取引先弁護士の事務所から金融庁及び証券取引等監視委員会に出向し、金融機関の不正の検査等に関与している。金融機関の不正を調査するかどうかを決定する権限を持つ人物若しくはそれを調査する人物が、不正の調査を受ける金融機関から多額の利益供与を受けている弁護士の事務所から選出されていることは重大な利益相反ではないかと考える。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 公益通報者保護法を踏まえた国の行政機関の通報対応に関するガイドライン(内部の職員等からの通報)(平成二十九年三月二十一日一部改正)によれば、利益相反関係の排除について次のように定められている。

「(五)利益相反関係の排除

  ① 各行政機関の職員は、自らが関係する通報事案への対応に関与してはならない。

  ② 各行政機関は、通報対応の各段階において、通報事案への対応に関与する者が当該通報事案に利益相反関係を有していないかどうかを確認するものとする。」

 この「利益相反関係」、「自らが関係する通報事案」とは具体的にどのような関係を想定しているか。また、どの程度の関係であれば利益相反にないと判断しているのか。金融庁及び証券取引等監視委員会による行政指導等が開示されている事件について弁護士が関与したものについては関与した弁護士名、その出向元事務所名及び利益相反関係の有無について示されたい。

二 大手金融機関の取締役等を務める人物が代表を務める弁護士事務所等から、金融庁及び証券取引等監視委員会に出向している弁護士が公益通報内容の審査や金融機関に対する調査等を担当することは利益相反関係にないとの認識か。その事実を何故国民に開示していないのか。税金で運営されている金融庁及び証券取引等監視委員会の重大な利益相反関係を国民に開示する必要はないとの認識か。政府の見解を伺いたい。

三 利益相反関係の排除のために、金融庁及び証券取引等監視委員会において、職員及び出向元の弁護士事務所等と金融機関の人材(役職員)、資金(融資等)、取引関係などについて調べているか。調べているならば、どのように調べ、何を把握したか。

四 前記一のガイドラインには「通報対応の各段階において、通報事案への対応に関与する者が当該通報事案に利益相反関係を有していないかどうかを確認するもの」と定められているが、金融庁法令等遵守調査室及びその窓口は、その後の各段階のうち、どの段階でどのように、利益相反関係を有していないかどうかを確認しているか。また、国民から公益通報を受ける第一段階の法令等遵守調査室に、大手金融機関の弁護士がいる時点で、既に利益相反関係にあるのではないか。政府の見解を伺いたい。

五 金融庁及び証券取引等監視委員会は公益通報の各段階において議事録等を作成しているか。作成しているのであれば、いつから議事録の作成を始めたか。また、過去において議事録等を作成しておらず、「公益通報進捗状況表」等の結果欄に数行程度のコメントを残しているだけであるならば、公益通報から受理・不受理を決定するまでに、審査に数か月間の時間を費やした事案については、審査の進捗状況等を振り返ることや過去に議論された詳細な審査内容等を把握することができないが、どのようにして、過去に議論した内容等を把握しているのか。また、役職員個人が保有している議事録等の資料はあるか。政府の見解を伺いたい。

六 金融庁及び証券取引等監視委員会は、公益通報の各段階において関与した職員の全ての名前を記録するなどし、問題発生時及び重大な利益相反関係が明らかになった場合に備え、トレーサビリティを確保しているか。

七 金融庁及び証券取引等監視委員会の職員に金融機関の利害関係者が多くいる中で、それぞれの各部門は利益相反関係にある人物に対して、具体的にどのように情報隔壁を構築しているか。利益相反関係にある人物が公益通報情報にアクセスできないような、コンピュータシステムの構築、会議からの除外、公益通報資料の閲覧及びコピー等の防止等の具体的な対応について示されたい。また、金融機関の取締役等を務める弁護士の事務所から出向してきた弁護士らに対して、出向時に内部情報及び公益通報事案等に関する口外禁止条項等を書面で締結しているか、伺いたい。

八 金融庁及び証券取引等監視委員会に弁護士事務所等から弁護士の出向を受け入れる場合、どのようなプロセスで出向元の弁護士事務所やその出向者を決定しているか。具体的にその選考プロセスの各段階における議事録等を残しているか。何故、官僚・検事総長の天下り先や大手金融機関と関係のある弁護士の事務所ばかりから選出されているのか。政府の見解を伺いたい。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。