質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第八四号

六ケ所再処理工場アクティブ試験等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年六月七日

福島 みずほ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   六ケ所再処理工場アクティブ試験等に関する質問主意書

 日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)六ケ所再処理工場で実際の使用済ウラン燃料(以下「使用済燃料」という。)を使用し、プルトニウムやウランを得る試験が二〇〇六年三月三十一日から開始され、使用済燃料のせん断溶解は二〇〇八年十月に終了した。

 現在、アクティブ試験の総合進捗率は九十六%であり、未だ試験中である。試験計画書にはアクティブ試験の終了条件として、使用前検査を受け、福島第一原発事故前の使用済燃料の再処理の事業に関する規則(以下「再処理規則」という。)第六条の二(性能の技術上の基準)の七項目を満たすことが明記されていた。しかし、二〇一二年と二〇一七年の法改正により使用前検査の実施者は国から事業者に変更され、性能の技術上の基準の七項目については二項目が削除され、他の項目については各条文にあった「事業者の申請内容が満たされているか」どうかについて不問にされていることが分かった。

 六ヶ所再処理工場の安全審査が二〇二〇年七月三十一日に終了し、稼働へ向けて次の審査最終段階になってきたが、前述のような国の責任回避や、検査の手抜きとなる安全軽視の法改悪としか言いようがない理解し難い動きが見られる。六ケ所再処理工場及び東海再処理工場には冷却が止まると、蒸発乾固、溶融揮発爆発を起こし、大量の放射能が放出されることにより国の存在すら危うくする超危険な高レベル放射性廃液(以下「高レベル廃液」という。)がある。また、六ケ所再処理工場には三千トンの使用済燃料が貯蔵されている。これらの再処理工場で、絶対に重大事故を起こさせないことは国の最大の使命であろう。この国を二度と放射能で汚染させてはいけない、二度と悲惨な避難民を出してはいけない。人々に安全と安心な生活を保障する国の責任がある。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 核廃棄物の情報公開について

1 二〇一三年二月に川田龍平議員が提出した「東海再処理工場、六ヶ所再処理工場の安全規制等に関する質問主意書」に対する答弁書(内閣参質一八三第三一号)では、保有する高レベル廃液の量と、含まれる核種とその濃度についての質問に対し、東海再処理工場の事業主体である国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)のホームページに公表されている旨答弁があり、二十五の含有核種を確認した。一方、六ケ所再処理工場の事業主体である日本原燃は七核種についてのみの回答で、しかも大量に含まれるストロンチウム九〇については答えがなかった。この件について、二〇二〇年九月、市民団体が日本原燃に対し、なぜ公開しなかったのか尋ねたところ、「商業機密で公開できない」との回答があったと聞いている。また、高レベル廃液に含まれ、超長半減期であるウランやプルトニウムについては、その同位体が大量に含まれているはずであるにもかかわらず、原子力機構及び日本原燃は答えていなかった。

 重要な核種を「商業機密」として隠蔽するようなことでは国民の信頼がいつまで経っても得られないのではないか。また、事業者の受け売りでは答弁書として適正と信頼を欠くものであり、いつまでも事業者の情報隠しを不問にしておいてよいのか、見解を示されたい。

2 現在、高レベル廃液を閉じ込めたガラス固化体の最終処分場の建設候補地が現れ、文献調査中である。国民の生活や環境へ将来にわたり影響を与える核廃棄物に関わる情報公開は、事業者の商業機密に優先されるものではないのか。高レベル廃液やガラス固化体の含有放射性核種の組成や量等は、国が責任を持って明らかにし、情報を公開して民主的な判断に委ねるべきであると考えるが、見解を示されたい。

二 プルトニウムとウランの回収率の公開について

 六ケ所再処理工場のプルトニウムとウランの回収率は、「アクティブ試験経過報告書第四ステップ」(二〇〇八年二月二十七日)で両核種とも事業申請目標の九十八・二%を達成したと報告されていた。この報告ではBWR使用済燃料を約四・五トン再処理した場合の回収率であった。これはアクティブ試験全体で使用した使用済燃料四百二十五トンのわずか一%程度であり、この一度だけの収支で目標を達成したと言えるのか。日本原燃の六ケ所再処理工場に係る定期報告書では使用済燃料は約四百二十五トンが再処理され、ウラン製品が約三百六十六トン、プルトニウム製品が約六千六百五十八キログラム生産されたと明記されている。アクティブ試験全体で回収されたウランとプルトニウム各々の回収率をその計算根拠とともに示されたい。

三 使用前検査条件からプルトニウムとウランの回収率を外したことについて

 前記二のプルトニウムとウランの回収率に関して、福島第一原発事故前の再処理規則第六条の二(性能の技術上の基準)の第七項目に事業者の申請回収率を達成することが使用前検査合格の条件と規定されていた。しかし、二〇一二年の法改正で廃止され、二〇二〇年四月から施行されている「再処理施設の技術基準に関する規則」からも外したことを国は認めているが、この第七項目を外した趣旨と事業者申請回収率を不問にして済ませるようにした理由は何かを明示されたい。

四 ガラス固化の使用前検査について

1 二〇二〇年八月三十一日に行われた新規制基準適合性に係る審査会合に関し、ガラス固化試験については「事業者が行う使用前検査を終えた後に設備の動作確認をする方針」との報道があった。本来、実廃液(高レベル廃液と不溶解残渣廃液。以下同じ。)を使用したアクティブ試験中に使用前検査を行う(「再処理施設試験運転全体計画書」七頁。二〇〇五年七月六日付け。)はずであったが、行われたのか。もし行われていないのならば、なぜ使用前検査を行わずに終了報告書が政府へ提出されることになったのか、見解を示されたい。

2 二〇一三年五月にA系列ガラス溶融炉試験が終了してから約八年が経過した今、炉も傷んでおり、動作確認を伴わない使用前検査はありえないのではないか。このガラス固化に係る使用前検査は高レベル廃液の安定化上最も重要なものであり、実廃液を使用し、動作確認を含む厳重な使用前検査を行うことが重大事故防止のための必須条件であると考えるが、見解を示されたい。

五 旧基準「使用前検査」の具体的取り扱いについて

 「再処理施設アクティブ試験計画書(使用済燃料による総合試験)」(二〇一一年十月十三日付け)三十三頁の八.アクティブ試験の終了条件に、(二)使用前検査の終了、(三)その他・使用前検査に合格していることとある。この時点では、使用前検査は当時国が行う使用前検査であったはずである。それが、福島第一原発事故後、法改正され、事業者が行う使用前事業者検査に変更されていた。(二)使用前検査の終了には、福島第一原発事故前の再処理規則第六条の二(性能の技術上の基準)の七項目が明記されている。この中の「製品中の原子核分裂生成物の含有率測定検査」や「製品の回収率測定検査」は、どの機関がどのように行うのか、この事業者作成の試験計画書の「使用前検査」の具体的取り扱いはどうなるのか、法律との整合性はどうなのか、見解を示されたい。

六 ガラス固化体製造について

 六ヶ所再処理工場でガラス固化体は、二〇〇七年十一月から二〇〇八年一月までに五十七本(廃液約三十立方メートル)、二〇〇八年二月から二〇一三年七月に二百八十九本(廃液約九十五立方メートル)が製造された。後者の廃液の閉込率は〇・三三立方メートル/本となり日本原燃が当初予定していた〇・五二立方メートル/本の約六割の閉込率になる。六ヶ所再処理工場製のガラス固化体と英国セラフィールド工場製の返還固化体である二十八本のセシウム一三七(二〇〇三年から二〇〇五年に製造)の閉込量を比較すると、六ケ所再処理工場製のガラス固化体は英国セラフィールドで製造された固化体の約二割の閉込率であった。これでは当初の目標や英国の固化体を大きく下回る廃液の閉込率であり、六ケ所再処理工場のガラス固化は失敗だったことになるのではないか。見解を示されたい。

七 ガラス固化体製造のトラブル原因について

 六ケ所再処理工場のプルトニウムとウランの回収目標率は九十八・二%であり、未回収の一・八%分の多くは高レベル廃液に含まれるものと推察される。この高レベル廃液中に両元素と他の超ウラン元素(Np、Am、Cm)の量は、白金族元素(Ru、Rh、Pd)よりも圧倒的に多く含まれているのではないか。ウランやプルトニウムの比重は二十近い値であり、これら白金族元素(比重約十二)よりもはるかに重く、不溶解残渣にも多量に混入してくるのではないか。ガラス固化がうまくいかないのは、このウラン・超ウラン元素が主たる影響を及ぼしているからではないか。ガラス溶融炉モックアップ試験の模擬廃液は非放射性物質を使用していると聞くが、そのような廃液を使用して試験をしても全てが放射性であるウラン・超ウラン元素を含む廃液のガラス固化の成否を判断できないと思われるが、見解を示されたい。

八 ガラス固化方式の英仏方式(AVM)への変更について

 二〇〇八年十二月に下田敦子議員が提出した「日本原燃(株)六ケ所再処理工場の安全に関する質問主意書」に対する答弁書(内閣参質一七〇第一二三号)で、高レベル廃液のガラス固化技術について、外部専門家により技術の成立性が実証された核燃料サイクル開発機構(当時)が開発した技術である旨答弁があった。しかし、核燃料サイクル開発機構の後継組織である原子力機構の東海再処理工場では、現在、ガラス固化はトラブル続きで止まっている。そのため、大事故があれば北半球へ大きな影響を与える潜在的危険が甚だしい高レベル廃液が減少せず、そのままの量が保管されている。一九九五年一月、東海再処理工場でガラス固化が開始されて以来二十六年経過し、未だガラス固化はトラブル続きである。原子力機構が技術開発したガラス固化技術は根本的な欠陥が未だ解決されていないのではないか。六ケ所再処理工場、東海再処理工場のガラス固化体製造LFCM方式にいつまでもこだわらず、英仏方式(AVM)に切り替える時期ではないか。

 人々が安心して暮らすため高レベル廃液を一日も早く減らすべきである。東海再処理工場が大津波の襲来を受けていたならば首都圏は壊滅だったはずだ。もういつまでも我慢しているわけにはいかない状況である。英仏方式(AVM)に切り替えるべきと考えるが、見解を示されたい。

  右質問する。