質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第六八号

官僚の働き方に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年五月十二日

伊藤 孝恵


       参議院議長 山東 昭子 殿



   官僚の働き方に関する再質問主意書

 霞が関の国家公務員の長時間労働の解消には、現状の課題や実態の把握及び公表、働き方改革の推進主体者の明確化や職員(一般職の職員の給与に関する法律の規定による超過勤務手当及び休日給の支給対象となる職員。以下同じ。)の人員配置、財源の抜本的見直しが必要との認識から、以下質問する。

一 霞が関の国家公務員の長時間労働の現状把握及びその公表について

1 在庁時間の把握等について

 (1)超過勤務手当や休日給などは、適切な在庁時間管理を前提に支給されるべきであり、各府省本府省及び外局の内部部局(以下「各府省内部部局」という。)職員の残業時間(一般職の職員の給与に関する法律の規定による超過勤務手当が支給された時間。以下同じ。)以外の時間外在庁時間(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律に規定する正規の勤務時間以外に在庁した時間として、職員からの報告に基づき把握している時間。以下同じ。)が不明な状態では、適切な人員配置は不可能であると考える。政府は令和三年八月までに各府省内部部局職員の時間外在庁時間を統一指標で計るとしているが、その具体的方法について示されたい。

 (2)超過勤務手当が適切に支払われていないケースがあるとの民間調査もあることから、統一指標で計られた各府省内部部局職員の毎月の時間外在庁時間の実態については、人事院、内閣人事局及び各府省庁の取組の効果を国民に対して明らかにする必要性も鑑み、各府省庁別に、定期的に公表すべきと考えるが、政府の見解如何。

 (3)各府省内部部局職員の超過勤務手当や休日給が支給された残業時間についても、働き方改革の観点や、行政コストの見える化の観点からも、毎月定期的に公表すべきと考えるが、政府の見解如何。

 (4)現状の国会対応業務(国会議員への説明や資料要求対応、政党の会議への出席、質問取り、答弁作成、委員会等への陪席など、国会に関する業務をいう。以下同じ。)の負担の把握が必要だと考える。国会対応業務をしている職員たちのタイムスタディ(当該職員が分単位で具体的にどのような業務を行っていたか詳細な把握をすること。)をやるなど、実際の国会対応業務の負担を見える化すべきと考えるが、政府の見解如何。

2 霞が関の総合職の自己都合退職者(年代別・省庁別)について

 河野大臣は令和二年十一月に「二〇一九年度の二十代の霞が関の総合職の自己都合退職者数は二〇一三年度から四倍以上に増えている」旨の内容のブログを掲載した。

 (1)河野大臣が述べた霞が関の総合職の自己都合退職者と同様の定義で令和二年度の霞が関の総合職の自己都合退職者数を示されたい。

 (2)令和三年度の国家公務員採用試験について、総合職試験の申込者数は前年度比十四・五%減の一万四千三百十人となり、五年連続の減少で、減少率は過去最大となっている。また、令和元年度の二十代総合職の自己都合退職者は平成二十五年度の四倍になっている。こうした総合職試験の申込者数の減少や若手職員の離職の増加の背景に霞が関の長時間労働があると考えるか。政府の見解如何。

二 霞が関の働き方改革の推進体制・実施主体者について

1 人事院・内閣人事局の役割分担について

 (1)霞が関の働き方改革を政府全体で進めるに当たって、人事院と内閣人事局の役割分担が明確ではないと考えるが、それぞれの役割分担を具体的に示されたい。また、霞が関の働き方改革の課題解決の最終的な責任の所在は人事院と内閣人事局のどちらにあると考えるのか、政府の見解を示されたい。

 (2)霞が関の働き方改革における人事院及び内閣人事局は、各府省庁に対して長時間労働に対する改善指示を行っているのか。人事院及び内閣人事局が、これまでに行った改善指示とその効果分析について、過去五年間の実績をそれぞれ示されたい。

 (3)平成三十一年二月の人事院「超過勤務の上限等に関する措置について」の中で、「上限時間を超えて超過勤務を命じた場合には、その要因の整理、分析及び検証を行うものとする」とあるが、「要因の整理、分析及び検証」はどこに公表され、現在どのように活かされているのか示されたい。

2 人事院の調査権限の詳細について

 人事院は国家公務員法に定められた中央人事行政機関であり、職員の利益保護のために各府省庁から独立した立場で、国家公務員法第十七条に基づき、証人喚問や立入調査等を行う権限を持っている。

 (1)過去五年間に、国家公務員法第十七条に基づく調査が行われたことがあるか示されたい。

 (2)国家公務員法第十七条に基づく調査が行われる基準を示されたい。

 (3)河野大臣は令和二年十二月の記者会見で「サービス残業がないということはおよそ考えられない」旨を述べている。本来、こうした事案については人事院が権限を用いて調査すべきであると考えるが、政府の見解如何。

 (4)今後、国家公務員法第十七条に基づき、サービス残業に関する調査を実施する予定はあるか示されたい。

三 各府省庁の適切な人員配置について

 私が提出した「官僚の働き方に関する質問主意書」(第二百四回国会質問第三八号)に対する答弁(内閣参質二〇四第三八号)で、各府省庁の業務量のバラつきが明らかとなった。

1 府省庁間で大きな偏りがある超過勤務の状況については、各府省庁における業務の見直し等の取組だけでは是正は困難であり、超過勤務の多い府省庁に人員配置を手厚くする必要があると考える。しかし、定員合理化計画に記載されている各府省庁の定員数を基に毎年度調整するやり方では、府省庁間の労働時間のバラつきを排すことは不可能である。現在の労働時間や業務量を把握した上で、各府省庁の人員配置をゼロベースで行う必要があるのではないか。政府の見解如何。

2 昨今の霞が関の過重労働、若手職員の離職増加、国家公務員採用試験申込者数の減少の状況を踏まえると、各府省庁の定員を削減する方針はいったん停止すべきと考えるが、政府の見解如何。

3 令和三年度の国家公務員定員が昭和五十四年度以来四十二年ぶりに前年度比増となるが、その人数及び各府省庁の配置人数の積算根拠を示されたい。また、厚生労働省以外でも超過勤務傾向が見られるが、主に厚生労働省の人員が増員した理由も示されたい。

4 各府省庁の毎月の在庁時間を統一的な方法により把握及び公表することにより、具体的な根拠に基づき年度途中でも府省庁の枠を超えて、業務過多の府省庁に柔軟に応援職員を配置する体制の検討が必要だと考えるが、政府の見解如何。

5 今後、一般職の職員の給与に関する法律や行政機関の職員の定員に関する法律の見直し、労働基準法の適用などは考えないのか。政府の見解如何。

四 超過勤務手当等の財源について

 河野大臣は令和三年一月の記者会見で「残業時間はテレワークを含めて厳密に全部付け、残業手当を全額支払う」旨の発言を行っている。また、令和二年十二月の記者会見では「サービス残業がないということはおよそ考えられない」旨を述べている。

1 超過勤務手当や休日給の予算額と執行率を、各府省内部部局と地方支分部局に分けて府省庁別に過去十年分示されたい。

2 今般の新型コロナウイルス感染症のような事案が起こった場合に、超過勤務手当や休日給の予算が枯渇することも想定されるが、予算が枯渇した場合にどのように予算の確保を行うのか示されたい。

3 霞が関の過重労働を是正し、職員が本来業務に集中できる環境を作るためにも、臨時職員の採用や定型業務の外注、システム化などが必要と考える。また、業務の見直しやマネジメント改革も必要だが、霞が関にはそのようなノウハウが乏しく、また現在の過重労働の状況では取組を進める余裕もないと考えられることから、民間のノウハウを借りる必要があると考える。このため、令和四年度予算編成は、「働き方改革特別枠」を設けて、これまでの延長線上ではなく、抜本的な改革を進めた上で、各府省庁の時間外在庁時間がどの程度減ったかを検証すべきではないかと考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。