質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第五六号

行政機関の保有する情報の公開に関する法律の不開示条項の解釈と適用範囲に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年四月八日

田島 麻衣子


       参議院議長 山東 昭子 殿



   行政機関の保有する情報の公開に関する法律の不開示条項の解釈と適用範囲に関する質問主意書

 行政の透明性及び適切な価格での入札の確保の観点から、令和三年三月二十四日の参議院予算委員会の質疑で私が「オリンピック・パラリンピック観客等向けアプリ開発・運用・保守委託契約」と「新型コロナワクチン接種記録登録支援契約」の積算根拠と内訳の開示を求めたところ、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「同法」という。)第五条第二号イ「当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」及び同法第五条第六号ロ「国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」を根拠に内訳及び積算根拠の開示は行われなかった。

 しかし、国民に対し政府の説明責任を全うする観点から行政機関が保有する文書についての開示請求権等を定め、国民に開かれた行政の実現を図るという同法の趣旨に鑑みれば、このような不開示は必ずしも妥当なものとは言えないと考える。

 そこで、「法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益」及び「国の財産上の利益」の解釈と適用範囲について、以下質問する。

一 政府は、「新型コロナワクチン接種記録登録支援契約」について、契約の単価など積算根拠と内訳が、競合する他社は知り得ない情報であるので、「法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益」が害されるとする。

 しかし、本件は新型コロナワクチンの予防接種に伴う特殊な事例であり「競合する他社」が生じるものではなく、また本件の契約は随意契約なので「競争」がないもので、「法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益」が存在しない。

 また、リース契約に関する決裁伺い文書の開示請求についての奈良地判一〇・一・二六判時一六六五・五二によれば、契約内容の開示により当該法人等の競争上の地位その他正当な利益が損なわれるとするためには、一般の経済的取引における契約内容の開示と異なり、当該開示により、原価、価格ロジック、価格体系等の営業上の秘密やノウハウが明らかになるなどの事情が必要であるとの一般論を提示しているところ、本件の契約単価は、原価、価格ロジック、価格体系等を踏まえて積み上げられ政府に示された合計値から算定されるものであり、この開示により営業上の秘密やノウハウが明らかになるものではないので正当な利益が損なわれるわけではない。

 したがって、同法第五条第二号イの適用は妥当なものとは言えないと考えるが、政府の見解をお答えいただきたい。

二 政府は、「新型コロナワクチン接種記録登録支援契約」について、契約の単価など積算根拠と内訳を公開することにより、国の同種の他の契約の予定価格が類推されるため、「国の財産上の利益」が害されるとする。しかし、モバイル端末に関する技術は日進月歩であるので、本件契約から同種の他の契約の予定価格の類推が不可能で、「国の財産上の利益」が害されることもない。したがって、同法第五条第六号ロの適用は妥当なものとは言えないと考えるが、政府の見解をお答えいただきたい。

三 政府は、「オリンピック・パラリンピック観客等向けアプリ開発・運用・保守委託契約」について、契約の積算根拠と内訳が、競合する他社は知り得ない情報であるので、「法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益」が害されるとする。

 しかし、本件の契約は、令和二年十二月二十八日に公開され、締切は令和三年一月八日で、公募期間の半分以上が年末年始で閉庁日である。また、ヒアリングによれば実際に令和二年十二月二十八日から令和三年一月三日までの間、入札の問合せ対応のために出勤していた職員はいない。加えて、本件に入札するためには、公募期間の間に三百頁もの文書を作成することが要求される。こうしたことから、本件は一般競争入札の形式をとるものの、実質的には他の応札者が現れることを想定しておらず、「競争」がないもので、「法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益」が存在しない。さらに、そもそも本件は政府各省のシステムを連携するものであり「競合」する他社が生じるものではない。

 また、前記一の奈良地判一〇・一・二六判時一六六五・五二に関して、契約の積算根拠と内訳は、原価、価格ロジック、価格体系等を踏まえて積み上げられ政府に示された合計値であり、この開示により営業上の秘密やノウハウが明らかになるものではないので正当な利益が害されるわけではない。

 したがって、同法第五条第二号イの適用は妥当なものとは言えないと考えるが、政府の見解をお答えいただきたい。

四 政府は、「オリンピック・パラリンピック観客等向けアプリ開発・運用・保守委託契約」について、契約の積算根拠と内訳を公開することにより、国の同種の他の契約の予定価格が類推されるため、「国の財産上の利益」が害されるとする。しかし、アプリに関する技術は日進月歩であるので、本件契約から同種の他の契約の予定価格の類推が不可能で、「国の財産上の利益」が害されることもない。したがって、同法第五条第六号ロの適用は妥当なものとは言えないと考えるが、政府の見解をお答えいただきたい。

  右質問する。