質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第九号

PCR検査の陰性が新型コロナウイルスに感染していないことの証明にはならないことに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年一月二十七日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   PCR検査の陰性が新型コロナウイルスに感染していないことの証明にはならないことに関する質問主意書

 令和二年から令和三年にかけての年末年始においては、帰省前にPCR検査の陰性を信じた者が新型コロナウイルス感染症に罹患していた事例がみられた。
 徳島県小松島市の男子学生は、大学の寮内で感染者が発生したため、濃厚接触者ではないものの、念のため、大学でPCR検査を受け、陰性であることを確認してから帰省した。しかし、陰性を確認した三日後に発熱、咳等の症状が出たため、医療機関を受診し、再度PCR検査を受けたところ陽性と判明し、新型コロナウイルスに感染していたことが分かり、帰省先の家族が濃厚接触者となってしまった。また、浜松市においても、未成年の学生が県外から帰省前にPCR検査を受け、陰性だったが、その後、咽頭痛の症状があり、再度PCR検査を受けたところ、陽性となってしまった事例がある。
 いずれの事例においても、学生を責めることはできない。なぜなら、PCR検査の陰性が意味するものを国民は必ずしも理解しているとは思えないからである。日本においてもPCR検査の自費検査ができるようになったが、厚生労働省が定める「新型コロナウイルス感染症に関する自費検査を提供する機関が利用者に情報提供すべき事項」(以下「情報提供すべき事項」という。)には「偽陽性・偽陰性の可能性があること」及び「検査結果は検査時点での感染状況に関するものであって、陰性であっても、感染早期のためウイルスが検知されない可能性やその後の感染の可能性があり、感染予防に努める注意が必要であること」としか定められておらず、その提供方法も「わかりやすく」としか定められていない。自費検査を行う検査機関の中には、自費検査に関する広告で大々的に検査の利便性や「陰性証明書」なるものが発行可能であることのみを宣伝して、肝心の「偽陽性・偽陰性の可能性があること」に関しては、まるで保険約款でよく使われる米粒のような大きさの文字でしか表示されておらず、「検査結果は検査時点での感染状況に関するものであって、陰性であっても、感染早期のためウイルスが検知されない可能性やその後の感染の可能性があり、感染予防に努める注意が必要であること」に至っては、広告にそのような表示がないものもある。
 右を踏まえて、以下質問する。

一 現行のルールにおいては、情報提供すべき事項のうち、最重要事項である「偽陽性・偽陰性の可能性があること」及び「検査結果は検査時点での感染状況に関するものであって、陰性であっても、感染早期のためウイルスが検知されない可能性やその後の感染の可能性があり、感染予防に努める注意が必要であること」は、ウェブサイトの片隅に記載されていればよく、広告に記載する必要はないが、このルールでよいと政府が判断した理由如何。また、これらの事項について、広告及び検査結果を通知する文書に大きな文字で記載することを義務付けるルールを作るべきであると思慮するが、政府の見解如何。

二 「偽陽性・偽陰性の可能性があること」及び「検査結果は検査時点での感染状況に関するものであって、陰性であっても、感染早期のためウイルスが検知されない可能性やその後の感染の可能性があり、感染予防に努める注意が必要であること」は、自費検査の広告が広がった今、自費検査を受ける者のみならず、広く国民に周知する必要があるため、ウェブサイトでの周知のみならず、政府広報等を使用し広く国民に周知してはどうかと思慮するが、政府の見解如何。また、現状で既に取り組んでいるのであればその取組も教えていただきたい。

三 PCR検査の感度については、一概に何パーセントであると言い切れないのが実情であるが、例えば、一般社団法人日本疫学会が引用した論文を利用して、「PCR検査は、本当は陽性であったとしても、陰性と出てしまう確率が、検査環境をかなりよくしたとしても約十二~三十パーセントあります。自覚症状がない場合この確率はもっと高くなります。従って、自覚症状がない場合のPCR検査陰性はあまり信用できませんから、陰性であっても三密回避やマスク着用・手指消毒などを引き続きお願いします。」とPCR検査広告に大きな文字で書いてあれば、自費検査の検査結果が陰性であったとしても偽陰性である可能性も考慮し、帰省を思いとどまった人はこれまでもいたと思われる。民間検査を行う者が発行する「陰性証明書」なるかりそめの安心材料の提供により、偽陰性の者が帰省し、普段同居していない家族が濃厚接触者となることを防ぐことが今後の大きな課題であると思慮するが、政府の見解如何。
 なお、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。