質問主意書

第203回国会(臨時会)

答弁書


内閣参質二〇三第四四号
  令和二年十二月十五日
内閣総理大臣 菅 義偉


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員小西洋之君提出昭和四十四年の高辻内閣法制局長官答弁を日本学術会議会員の任命拒否の合法根拠とすることが詭弁であることに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出昭和四十四年の高辻内閣法制局長官答弁を日本学術会議会員の任命拒否の合法根拠とすることが詭弁であることに関する質問に対する答弁書

一及び二について

 「形式的任命権」及び「実質的任命権」については、これらを用いる者によって、その具体的に意味するところが異なるものと認識しており、御指摘の高辻内閣法制局長官(当時)の「形式的な任命権あるいは実質的な任命権というようなことばで言いますと、非常に一義的に形式的任命権ならもう手も足も出ないのじゃないか、実質的任命権なら何んでもできるではないかというふうになりがちでございます」との答弁も、当時の国立大学の学長の任命に関する議論を踏まえて、これと同様の認識に基づいて述べられたものであると考えている。

三について

 お尋ねの「会議録や内閣法制局における審査資料等」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、教育公務員特例法(昭和二十四年法律第一号)制定当時における国立大学の学長の任命に係る同法の規定の「内容(制度の趣旨)」について説明したものとして、国会の会議録が存在するものと承知している。また、同法の立案当時において、内閣提出の法律案及び政令案の審議立案に関する事項を所管していた法務庁(当時)における審議資料については、文部科学省及び内閣法制局において調査した限りではその保管を確認できなかった。

四について

 御指摘の高辻内閣法制局長官(当時)の答弁は、申出や推薦に基づく公務員の任命であっても、憲法第十五条第一項において公務員の選定が国民固有の権利であるとされていることからすれば、任命権者において国民に対して責任を負えない場合には、任命権者は申出や推薦のとおりに任命しなければならないわけではないという基本的な考え方を前提に、教育公務員特例法第十条(当時)の規定の解釈について答弁したものであると認識しており、この答弁でも明らかにされている基本的な考え方は、内閣総理大臣が必ず日本学術会議法(昭和二十三年法律第百二十一号)第十七条の規定に基づく推薦のとおりに日本学術会議会員(以下「会員」という。)に任命しなければならないわけではないという同法第七条第二項の解釈においても、前提となるものであることから、御指摘は当たらないと考えている。

五について

 お尋ねの「基準(場合)」については、政府として定めていない。

六及び七について

 お尋ねの「場合をどのように考えているのか」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、憲法第十五条第一項において公務員の選定が国民固有の権利であるとされていることからすれば、会員の任命権者である内閣総理大臣において、当該任命が国民に対して責任を負えない場合においてまで、日本学術会議法第十七条に基づく推薦のとおりに会員に任命しなければならないわけではないと考えている。このような考え方は、内閣府日本学術会議事務局が作成し、内閣法制局がその内容を確認した平成三十年十一月十三日付け文書「日本学術会議法第十七条による推薦と内閣総理大臣による会員の任命との関係について」においても記載されており、今般の会員の任命に当たっても、同様の考え方に基づき判断したものである。