第203回国会(臨時会)
質問第四三号 いわゆる「赤木ファイル」に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和二年十二月四日 小西 洋之
参議院議長 山東 昭子 殿 いわゆる「赤木ファイル」に関する質問主意書 近畿財務局管財部の上席国有財産管理官であった赤木俊夫氏の妻は、国と佐川元財務省理財局長を被告として損害賠償を求める民事訴訟を大阪地方裁判所に提起した(以下「本件訴訟」という。)。同氏の妻の代理人が公表(令和二年三月十八日)した訴状では、森友学園案件に係る決裁文書の改ざんに至る財務省本省から近畿財務局への指示、修正箇所と改ざんの過程を一目で分からしめるというファイル(以下「赤木ファイル」という。)を同氏が作成したことが指摘されている。本件訴訟では、原告側は国側に、赤木ファイルの存在の有無を明らかにした上で提出するよう求めている。 一方、衆議院調査局が令和二年十一月に取りまとめた「森友学園問題に係る財務省による文書改ざん等に関する予備的調査(川内博史君外一二七名提出、令和二年衆予調第一号)についての報告書」では、同予備的調査(以下「本調査」という。)において衆議院調査局が財務省に対して赤木ファイルの提出及び赤木ファイルの探索先の回答を求めたところ、同省は「訴訟に関わることであるため回答を差し控えたい」としたことが明らかとなっている。 一 衆議院調査局によれば、過去実施された予備的調査において、民事訴訟を理由として資料の提出や回答がなされなかった事例は存在しないという。本調査において、赤木ファイルについて、財務省が資料の提出及び回答を拒否した法的根拠を法律名及び条文を具体的に示した上で明らかにされたい。 二 過去実施された予備的調査において民事訴訟の係属中にもかかわらず資料の提出や回答を行った事例があるか明らかにされたい。当該事例がある場合、当該事例と、本調査において財務省が拒否したこととの間でどのような差異があるため、資料の提出や回答の態様が異なっているのか明らかにされたい。 三 内閣法制局は「現に裁判所に係属中の事件であるからといって、およそ国政調査の行使が許されなくなるわけではございませんが、一般論としては、民事、刑事を問わず、裁判所に係属中の事件について裁判所と同様の目的で行われるなど、当該事件に係る裁判に不当な影響を及ぼすような国政調査については、その要求を拒み得ると解されております。」と答弁している。 1 右の内閣法制局見解において、「裁判所と同様の目的で行われる」ことは「当該事件に係る裁判に不当な影響を及ぼす」ことの例示であるのか、それとも、「裁判所と同様の目的で行われる」ことと「当該事件に係る裁判に不当な影響を及ぼす」こととは別個の要件であるのか明らかにされたい。 2 前記三の1において、例示である場合、「裁判所と同様の目的」で行われれば、必ず「当該事件に係る裁判に不当な影響を及ぼす」こととなると考えているのか明らかにされたい。 四 国政調査の行使たる本調査において赤木ファイルの提出を求めることと、本件訴訟において赤木ファイルの提出を求めることが、いかなる点で「同様の目的で行われる」と判断しているのか明らかにされたい。 五 国政調査の行使たる本調査において赤木ファイルの提出を求めることが、いかなる点で本件訴訟に「不当な影響を及ぼす」と考えているのか、その不当性を個別具体的な事例として明らかされたい。 六 前記三の内閣法制局見解は、国政調査権が司法権の独立との関係において制限に服する場合についてのものである。司法権の独立の要請から、国政調査の行使が裁判官の裁判活動に重大な影響を及ぼすことのないようにすることが求められ、このような制限に服するものであるとすると、国政調査の行使が「当該事件に係る裁判に不当な影響」を及ぼしているか否かを判断する主体は、当該裁判の原告及び被告ではなく、裁判所であると考えるが見解を明らかにされたい。また、裁判所自身が、裁判所と併行している立法府の調査が適法な目的の下で行われていると判断している限りにおいては、立法府による併行調査は許容されると解するのが相当であると考えるが見解を明らかにされたい。 七 前記六において、裁判所自身が、裁判所と併行している立法府の調査が適法な目的の下で行われていると判断している限りにおいては、立法府による併行調査は許容されると解するのが相当であるとすると、裁判所が本調査に対して何ら見解を表明していないにもかかわらず、本調査において財務省が赤木ファイルの提出及び赤木ファイルの探索先の回答を拒否したことは甚だ失当であり、国政調査権の侵害である。財務省は赤木ファイルを直ちに国会に提出するべきと考えるが見解を明らかにされたい。 右質問する。 |