質問主意書

第203回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三四号

新型コロナウイルス感染症(COVID―19)と筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の研究に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年十二月四日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   新型コロナウイルス感染症(COVID―19)と筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の研究に関する質問主意書

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は十月三十日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症(以下「COVID―19」という。)は「相当数の人に深刻な後遺症を残す」と警告し、十月二十一日には国立国際医療研究センターより、日本初のCOVID―19の後遺症の研究が報告された。また、米国国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長が、COVID―19発症後に長引く症状は筋痛性脳脊髄炎(ME)の症状に似ていると発言したことがCNNニュースで取り上げられ、世界的にこのことは認知されるようになった。
 以上の状況を前提に、以下のとおり質問する。

一 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(以下「ME/CFS」という。)の集団発生は、歴史的にウイルス性疾患流行後に起きており、ME/CFS患者の大多数はウイルス感染が引き金となって発症しているため、COVID―19がME/CFSの引き金になり患者が多発する可能性があると多くの専門家は警告している。ウイルス感染を契機としてME/CFSを発症するとの報告を、厚生労働省は承知しているのか。

二 以前、ME/CFSの患者団体からの要望に対して厚生労働省は、「COVID―19とME/CFSに関する研究をNPO団体OMF(Open Medicine Foundation)が開始すると発表したことに注目している」、「COVID―19とME/CFSの関連については、海外での研究状況等について、研究者らと情報交換しながら引き続き動向を注視して参りたい」等と回答している。
 その後、海外での研究状況等について、研究者らとどのような情報交換を行い、この問題について、どのような情報を収集されたか、示されたい。

三 今なお感染拡大を続けるCOVID―19に関しては、その後遺症に関しても目配りを行い、後遺症が発生するにしても、その被害を最小化することも国の責務であると考えるが、政府の認識は如何か。

四 また、そのためにはCOVID―19の後遺症に関する研究を積極的に行うとともに、必要に応じて後遺症に関する実態調査を実施すること等により後遺症の実態を迅速に把握し、それらにより得られた医療情報等を医療従事者や国民に周知させるよう努めるべきと考えるが、政府の認識は如何か。

五 ME/CFSの患者団体のアンケート調査により、日本においてもCOVID―19発症後にME/CFSを発症した患者がいることが確認された。
 ME/CFSの集団発生は、歴史的にウイルス疾患の流行後に起きており、EBウイルスのニューヨークでの集団発生、ネバダ州のタホ湖における集団発生、ロンドンのロイヤルフリー病院での集団発生などの実例がある。そのため、COVID―19もME/CFSの引き金になる可能性があると多くの欧米の専門家は警告してきた。
 このような懸念が指摘され、実際に日本においてCOVID―19後にME/CFSを発症した症例が報告されている以上、COVID―19発症後に体調の不調が続いている患者を対象に、ME/CFS発症の可能性を調べる実態調査を、神経免疫の専門家を中心に早急に実施すべきではないのか。

六 また、ME/CFSを発症した患者を受け入れ、診療を行う神経免疫の専門家による外来を開設すべきではないのか。

七 米国においては、国のトップの公衆衛生当局者であるファウチ博士が、COVID―19発症後にME/CFSを発症する可能性について様々な場で発言しており、Nature、TIME、BBC News、The Washington Post、The New York Times、Harvard Universityのホームページ等で取り上げている。日本においても、医療関係者や国民に対して厚生労働省がCOVID―19の後遺症に関する情報を、より広く積極的に発信し周知すべきではないのか。

八 COVID―19後にME/CFSを発症したばかりの患者(発症初期の患者)を集めて研究することができれば、発症のメカニズムを解明するのに非常に役に立ち、ウイルス感染後に発症することが証明できれば、ME/CFSの原因・病態解明、診断基準作成の研究に大いに進む可能性がある。さらに、ME/CFS発症初期の患者を治療することで、治療法開発の研究が大いに進むことが期待される。米国では国立衛生研究所(NIH)をはじめとし、スタンフォード大学やコロンビア大学等で、すでにCOVID―19とME/CFSに焦点を絞った研究が開始されている。日本においても新たなME/CFSが多数生まれる可能性が推測されており、早急にCOVID―19とME/CFSに焦点を当てた研究を行う体制を構築すべきではないか。

  右質問する。