質問主意書

第203回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二八号

障害者の就労に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年十二月三日

田島 麻衣子


       参議院議長 山東 昭子 殿



   障害者の就労に関する質問主意書

 新型コロナウイルスの感染拡大で、企業などを解雇された障害者は、今年九月までの半年間でおよそ千二百人に上り、去年の同じ時期と比べておよそ四〇%増えたことが厚生労働省のまとめでわかったとの報道(NHKニュース「障害者の解雇四〇%増加 企業の業績悪化など理由」令和二年十一月十四日付)に接し、さまざまな障害を抱える人も、安心して地域で暮らせるようにするための環境の整備は、コロナ禍におかれた我が国にあっても重要な課題であると考え、以下質問する。

一 「経済財政運営と改革の基本方針二〇一九」(骨太方針二〇一九)では、「特に精神病床については、認知症である者を含めその入院患者等が地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築など基盤整備への支援等を講ずる。」とあり、これを受けて「新経済・財政再生計画 改革工程表二〇一九」では、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」のKPI(重要業績評価指標。以下同じ。)として、「精神障害者の精神病床から退院後一年以内の地域での平均生活日数」の増加を定めている。
 一方、平成三十年六月二十七日の厚生労働省社会保障審議会障害者部会(以下「部会」という。)において、精神病床から退院した患者の約四割が一年以内に再入院しており、特に精神障害者の職場定着率が低いとの報告があったことに鑑みても、精神障害者の地域移行に際しては、行政等からの支援が特に必要であると認識している。
 これに関連し、令和元年十二月十九日の経済財政諮問会議において、当時の安倍首相は「この改革工程表に沿って、見える化や先進優良事例の全国展開等を引き続き加速、拡大しつつ、着実に改革を実行していただきたいと思います」と述べており(首相官邸ホームページ)、KPIの達成状況の公表を含め、改革工程表に沿った改革の実行について明言している。
 この点、現内閣は、前内閣の方針を継承し、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に際して、これらKPIによる実態把握と達成状況の公表について、従来通りの方針を予定しているか、明らかにされたい。また、KPIによる実態把握と達成状況の公表に際して、都道府県別の集計データを用いるのか、市区町村別の集計データを用いるのかについても、明らかにされたい。

二 令和三年から第六期障害福祉計画が始まることを受け、令和二年一月十七日の部会において、障害福祉計画及び障害児福祉計画に係る成果目標及び活動指標について、議論が行われたと承知している。そこでは、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に関する成果目標として、精神障害者の精神病床から退院後一年以内の地域での平均生活日数は、三百十六日以上とすることを基本とする案が検討されている。
 目標達成に向けては、精神障害者が再入院することなく継続的に地域で就労、生活していけるよう、症状の安定化、生活基盤の強化を図ることが重要である。例えば、精神障害者である統合失調症の患者にとっては、日々の服薬管理には特有の難しさがあり、家族の負担も大きいと聞いている。また、比較的服薬管理が容易である持効性抗精神病薬注射製剤が就労率の増加に寄与したという研究があると承知している。このように、精神障害者の地域移行の推進には、生活基盤としての就労環境の確保と治療環境の確保の両立が鍵になると考えられる。
 この点、精神障害者への支援の強化として、今後、地域における生活基盤としての就労環境の確保と治療環境の確保をどのように進めるか、政府としての見解を明らかにされたい。
 また、具体的には、前述の「新経済・財政再生計画 改革工程表二〇一九」で示されたKPI、地域包括ケアシステムの構築に関する成果目標の達成に向け、どのような対策や支援策を実施していく予定か、見解を明らかにされたい。

  右質問する。