質問主意書

第203回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二二号

横浜地方裁判所相模原支部における合議制導入に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年十一月二十四日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   横浜地方裁判所相模原支部における合議制導入に関する質問主意書

 横浜地方裁判所相模原支部は、相模原市と座間市を管轄する裁判所支部である。神奈川県相模原市は平成二十二年四月に政令指定都市に移行し、座間市と合わせると、管内人口は八十五万人を超える。同地域の地方自治体、弁護士会は、最高裁判所あるいは横浜地方裁判所相模原支部に対し、同支部において裁判官三名による合議制裁判(裁判所法第二十六条第二項及び第三項。以下「合議制裁判」という。)の実施を繰り返し求めてきたが、現在に至るまで実施は見送られている。その結果、二十市ある政令指定都市を管内に抱える裁判所のうち、合議制裁判が行われていない裁判所は、横浜地方裁判所相模原支部のみとなっている。
 一方で、政府は、平成十四年三月十九日に「司法制度改革推進計画」を閣議決定し、「Ⅲ 司法制度を支える体制の充実強化」の「第五 裁判官制度の改革」において、「裁判所運営について、国民の意見を反映することが可能となるような仕組みを整備することに関し、最高裁における検討状況を踏まえた上で検討し、なお必要な場合には、本部設置期限までに、所要の措置を講ずる。」としている。
 国民の意見が反映される裁判所運営が、国民に身近で信頼される司法の構築にとって重要であるという考え方は、司法制度改革推進本部解散後の現在においても、政府の基本的立場として維持されていると考えられるところ、国民の意見が反映される裁判所運営がなされているとは到底評価できない現状及び合議制裁判が横浜地方裁判所相模原支部において一向に導入されない事態に対し、政府の認識、見解について、以下のとおり質問する。

一 日本国憲法第三十二条において「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない」と規定されている。すなわち、すべての国民は平等に公平な裁判所の裁判を受ける権利が保障されている。その点から考えると、国民間の司法アクセスについての不合理な差異は、国として縮小していくよう努めるべきではないかと考えるが、政府の見解如何。

二 横浜地方裁判所相模原支部に合議制裁判を導入するために、管内の地方自治体及び弁護士会が以下の決議や声明を発出している事実を政府は把握しているか。

1 平成二十年三月二十六日、平成二十二年十二月二十二日及び平成二十七年九月三十日に相模原市議会が横浜地方裁判所相模原支部において合議制裁判の実施を求める決議を行った事実。

2 平成二十年六月二十日に座間市議会が横浜地方裁判所相模原支部において合議制裁判の実施を求める決議を行った事実。

3 平成二十四年から令和二年まで、相模原市の市長あるいは副市長並びに弁護士会会長以下担当役員等が毎年、横浜地方裁判所に対し、横浜地方裁判所相模原支部において合議制裁判の実施を行うよう、陳情している事実。

4 平成二十三年九月三十日に関東弁護士会連合会が、横浜地方裁判所相模原支部において合議制裁判の実施を求める決議を行った事実。

5 平成二十四年十一月十四日及び平成二十八年三月十一日に横浜弁護士会(現在の神奈川県弁護士会)が横浜地方裁判所相模原支部において合議制裁判の実施を求める会長声明を発出している事実。

6 横浜弁護士会相模原支部が、平成二十七年七月十七日付で、横浜地方裁判所相模原支部に合議制の実現を求める支部決議を行った事実。

7 平成二十八年一月十八日に日本弁護士連合会が最高裁判所と協議し、横浜地方裁判所相模原支部を含む全国の十支部での合議制裁判の実施を求めた結果、最高裁判所により全て見送られ、現在まで横浜地方裁判所相模原支部において合議制裁判の実施が実現していない事実。

8 平成二十八年三月十六日の衆議院法務委員会において、畑野委員の「相模原支部は、本庁までの時間は四十七分、二〇一三年の民事新受件数は五百五十七件となっております。」、「一方、合議制が行われている横浜地方裁判所管内のほかの支部の状況を伺いますと、川崎は二十七分、千七十五件、小田原、一時間七分、七百九十件、横須賀四十四分、四百一件。ですから、どのような基準で決まっているのかよくわからないという声があるんですね。」という指摘に対し、中村最高裁判所長官代理者が「相模原支部につきましては、管内人口は少ないわけではございませんし、事件数も決して少ないわけではございません。そういう中で、現時点においては、先ほど申し上げましたように、合議を取り扱う必要性はないというふうに考えておりますが」とだけ述べ、合議制裁判を取り扱わない具体的理由を答弁しなかった事実。

9 最高裁判所あるいは横浜地方裁判所は、裁判所内で合議制裁判の導入を求める決議や声明、陳情に対し、いつ、どこで、どのような会議を開き、どのような検討を行ったかを公表していない事実。

三 国会や地方自治体の議会、あるいは各審議会と異なり、合議制裁判の実施、労働審判、裁判員裁判の導入のような国民の司法サービスに直結する事柄についてさえ、裁判所はその具体的な検討内容を公表しない。
 政府として、「裁判所運営について、国民の意見を反映することが可能となるような仕組みを整備する。」という立場から、透明性のある裁判所運営について、国民の司法サービスに直結する一定の事柄に対し、国民が裁判所運営について検証を行える形、例えば、裁判所内での具体的な検討結果に関する審議録の作成、公表等を義務付けるなどの立法措置を講じ、あるいはそのような制度作りについて最高裁判所と協議を行っていく具体的な計画があるのか。現時点で具体的な計画がないのであれば、今後行うつもりがあるのか明らかにされたい。

四 司法制度改革推進計画の「Ⅱ 国民の期待に応える司法制度の構築」中、「第一 民事司法制度の改革」の「七 裁判所へのアクセスの拡充」の「(三)裁判所の利便性の向上」のイにおいて、裁判所の配置について、人口、交通事情、事件数等を考慮し、見直しに関する検討を行うとあるが、具体的にどのような見直しを行ったのか回答されたい。
 また、人口や交通事情、事件数は日々変動するところ、定期的に裁判所の配置の見直しを行う制度は設置したのか。設置したのであれば、どの組織が担当しているのか回答されたい。

  右質問する。