質問主意書

第203回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六号

政治活動の自由と道路使用許可に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年十月二十八日

熊谷 裕人


       参議院議長 山東 昭子 殿



   政治活動の自由と道路使用許可に関する質問主意書

 日本国憲法第二十一条では「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と明示されている。もっとも表現の自由といえども無制約ではなく、「その限界は、表現の形態、規制の目的・手段を具体的に検討して決めなければならない」(芦部信喜「憲法」)ものと考えられている。
 国会議員のみならず政治活動を行う者にとって、国民と直接向き合う機会である街頭での演説は政治活動の欠かせない機会であり、日本国憲法第二十一条で保障される「表現の自由」の一形態である。
 他方、道路交通法第一条でいうように「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止」を図ることは公共的利益に資するもので尊重されなければならない。
 一般的に「道路において工事若しくは作業をしようとする者」(道路交通法第七十七条第一項第一号)などについては、同条に「次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長の許可を受けなければならない」と規定され、同条第一項各号に、許可を受けなければならない行為が例示されている。
 右を踏まえて、以下質問する。

一 現在、政治活動を行う者が道路交通法第二条でいうところの「道路」や「歩道」など(以下「「道路」等」という。)で街頭演説を行う場合、事前に所管する警察署長に申請して道路使用許可を取得しているが、通常、街頭での演説のような行為等の全ては、「道路において工事若しくは作業」や「場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする」行為、「道路において祭礼行事」、「ロケーシヨンをする」等の「一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」に該当せず、道路交通法第七十七条第一項各号の例示に該当しないと解されるが、政府の見解如何。

二 前記一に関連して、政治活動を行う者が「道路」等で街頭演説を行う場合、事前に所管する警察署長に申請して道路使用許可を取得しなければならないと政府は考えているのか。それとも必ずしも一律に道路使用許可の取得を求めていないのか。政府の見解如何。

三 政治活動を行う者が「道路」等を大勢で長時間占有したり、大型の拡声機器を設置する等して、「道路における危険」を喚起する場合は日本国憲法が保障する表現の自由を必ずしも享有するには至らないものの、道路交通法が政治活動の自由を制約するとすれば、道路交通法第一条でいう目的を達成するために「その限界は、表現の形態、規制の目的・手段を具体的に検討して決めなければならない」と考えるが、法令上、「規制の目的・手段を具体的に検討」した指針等を政府は持っているのか。

四 前記三に関連して、道路使用許可の可否については所管する警察署長の判断に任されており、政府による具体的な指針等は存在しないのではないのか。道路使用許可の可否の根拠となるものがあれば明示されたい。

五 政府が「道路」等で政治活動を行う者が道路使用許可を取得するのが望ましいと考えるなら、今後、法令の根拠に基づく「規制の目的・手段を具体的に検討」した指針を示すべきと考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。