質問主意書

第202回国会(臨時会)

答弁書


内閣参質二〇二第四二号
  令和二年十月二日
内閣総理大臣 菅 義偉


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員小西洋之君提出陸上配備型イージス・システムに係る経緯に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出陸上配備型イージス・システムに係る経緯に関する質問に対する答弁書

一について

 令和二年九月四日に防衛省が公表した「イージス・アショアに係る経緯について」(以下「防衛省公表文書」という。)については、陸上自衛隊むつみ演習場及び再調査の対象としていた陸上自衛隊新屋演習場を含む二十箇所の国有地への陸上配備型イージス・システムの配備に関するプロセスを停止することに至った経緯の事実関係等を確認したものであり、同省としては、これ以上の確認を行うことは考えていない。

二について

 御指摘の「安倍前総理の主導で決まったイージス・アショアの導入ありきで、前に進めるしかなかった状況が引き起こしたもの」及び「安倍前総理への忖度」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねについては、防衛省公表文書において「我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中、イージス・アショアの導入・配備を急ぐ必要があると考えていた。このため、米側との協議やそれを踏まえた安全措置の検討と地元説明を並行的に実施することとなった。結果的に地元に対して約束していたことが実現できなくなり、慎重さ、誠実さを欠いた対応となった。」と述べているとおりである。

三の前段について

 お尋ねについては、防衛省公表文書において「令和二(二千二十)年の早い時期に、米側との協議や米側が実施した技術的な分析・評価から得られたより精度の高い情報をもとに防衛省において検討を行った。その結果として、ブースターをむつみ演習場内(新屋演習場など沿岸部の場所にあっては海上)に確実に落下させるためには、それまで防衛省側が想定していたイージス・システムのソフトウェアの改修のみでは不十分なおそれがあり、SM―三のハードウェアを含め、システム全体の大幅な改修が必要ではないかとの懸念が生じ、更に米側と協議を進めた。」、「防衛省としては、従前からイージス・システムのソフトウェアの改修をもってブースターをむつみ演習場内又は海上に落下させるための措置をとることを考えてきたところであり、これを実現するための方策は他にないのか、日米間での協議を通じて確認を行った。」及び「その結果、同年五月下旬、SM―三の飛翔経路をコントロールし、ブースターを演習場内又は海上に確実に落下させるためには、ソフトウェアのみならず、ハードウェアを含むシステム全体の大幅な改修が必要な状況が判明した。」と述べているとおりであり、こうした経緯を経て、令和二年六月三日に防衛大臣への報告がなされたものである。

三の後段について

 お尋ねについては、防衛大臣から、防衛省の事務次官を通じて、同省内の意思疎通や情報共有の在り方等を含めて、風通しの良い業務環境の整備に取り組んでいくよう、業務上の指導がなされたところである。

四について

 防衛省公表文書における御指摘の記載の意味するところについては、「イージス・アショアがSM―三を発射する事態は、弾道ミサイルが我が国に向けて発射されているような状況であり、このような極限の状況を想定していることに理解を得つつ、当初から住民避難等の国民保護措置を含めて安全対策に万全を期すとの考えに立って、丁寧な説明を実施することも検討されるべきであった。」と述べているとおりである。

五について

 政府としては、現在、陸上配備型イージス・システムの代替案について検討の途上であるため、お尋ねの見解についてお答えすることは差し控えたい。

六について

 お尋ねについては、防衛省公表文書において、「我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中、イージス・アショアの導入・配備を急ぐ必要があると考えていた。このため、米側との協議やそれを踏まえた安全措置の検討と地元説明を並行的に実施することとなった。結果的に地元に対して約束していたことが実現できなくなり、慎重さ、誠実さを欠いた対応となった。」と述べているとおりである。いずれにせよ、陸上配備型イージス・システムの代替案については、陸上自衛隊むつみ演習場及び再調査の対象としていた陸上自衛隊新屋演習場を含む二十箇所の国有地への陸上配備型イージス・システムの配備を断念したことを受け、検討しているものである。

七について

 一についてで述べたとおり、防衛省公表文書については、陸上自衛隊むつみ演習場及び再調査の対象としていた陸上自衛隊新屋演習場を含む二十箇所の国有地への陸上配備型イージス・システムの配備に関するプロセスを停止することに至った経緯の事実関係等を確認したものであり、防衛省としては、これ以上の確認を行うことは考えていない。いずれにせよ、陸上配備型イージス・システムの代替案を含め、我が国を取り巻く安全保障環境に対応していくためのあるべき方策については、令和二年九月十一日の内閣総理大臣の談話も踏まえ、引き続き検討を行っていく考えである。