質問主意書

第202回国会(臨時会)

答弁書


内閣参質二〇二第一二号
  令和二年十月二日
内閣総理大臣 菅 義偉


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員紙智子君提出コロナ禍における牛肉価格の下落から肉用牛肥育農家の経営を守り、地域経済の支援を求めることに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出コロナ禍における牛肉価格の下落から肉用牛肥育農家の経営を守り、地域経済の支援を求めることに関する質問に対する答弁書

一について

 政府としては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う経済への影響により、令和二年二月以降、和牛肉の枝肉の価格が低下し、肥育農家(肥育牛の飼養を行う農家をいう。以下同じ。)は厳しい経営状況にあったが、畜産経営の安定に関する法律(昭和三十六年法律第百八十三号。以下「法」という。)第三条第一項の規定による肉用牛の生産者の経営に及ぼす影響を緩和するための交付金(以下単に「交付金」という。)が交付されたことにより、肥育農家の資金繰りを知るために参考となる、肥育農家が購買する和牛の子牛の価格が令和二年五月以降上昇していることから、肥育農家の資金繰りは改善してきていると認識している。

二について

 生産者が交付金の交付を受けるためには、法第三条第一項第一号の規定に基づいて生産者があらかじめ積立金の積立てのための負担金(以下「生産者負担金」という。)の納付をしなければならないが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う経済への影響に対して令和二年四月七日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」のうち、肥育農家に対する国の支援策である肥育牛経営等緊急支援特別対策事業において、当該納付を猶予することとした。その上で、交付金の交付に当たっては、猶予された生産者負担金の納付の額を交付金の額の四分の一に当たる額とし、当該納付が交付金の交付と同時に行われ、相殺されたものとすることで、生産者に対して交付金の額の四分の三に当たる額を交付しており、同号の規定に基づく交付金の交付を受けるための要件である生産者負担金の納付が満たされているものである。したがって、同号の規定に照らして、御指摘のように交付金の「生産者負担分」を補助することは適当でない。
 また、御指摘のような「生産者負担分」を補助している地方公共団体の取組については、政府としては、把握していない。

三について

 政府としては、肥育農家への国の支援策として、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」のうち、肥育牛経営等緊急支援特別対策事業において、二についてで述べた交付金の生産者負担金の納付猶予のほか、経営体質の強化への取組を行った肥育農家に対する奨励金を交付する肥育生産支援、生産者集団がやむを得ず計画的に出荷時期を調整した場合に係る経費を交付する計画出荷支援、通常の貸付日に加え毎月末を貸付日として追加する畜産特別資金の緊急貸付けを措置している。

四について

 お尋ねの法第三条第一項第一号に規定する積立金が不足している都道府県は、令和二年八月末時点で三十五都道府県であり、具体的には、北海道、青森県、岩手県、宮城県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、福井県、山梨県、静岡県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、佐賀県、長崎県、宮崎県及び沖縄県となっている。
 また、今後の交付金に係る肥育農家に対する国の支援策としては、同年九月まで措置することとしていた生産者負担金の納付猶予を、肥育農家の資金繰りを支援する観点から、同年十月以降も継続することとした。

五について

 政府としては、お尋ねの事業の実施後、和牛肉の需要については、経済活動の再開に伴い徐々に回復しつつあると認識しているが、当該事業における学校給食への和牛肉の提供回数の見直しについては、今後の和牛肉の需要の動向を注視した上で判断する必要があるものと考えている。