質問主意書

第202回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二七号

いわゆる敵基地攻撃能力に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年九月十八日

小西 洋之


       参議院議長 山東 昭子 殿



   いわゆる敵基地攻撃能力に関する質問主意書

 安倍前総理は、令和二年八月二十八日の記者会見において、同月二十六日の国家安全保障会議において、「ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針」を協議したことを明らかにし、「今後速やかに与党調整に入り、その具体化を進めます。」と発言した。これに先立つ同月四日、自由民主党は、「国民を守るための抑止力向上に関する提言」を公表し、「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取組が必要である」旨提言している。
 これらを踏まえ、以下、いわゆる敵基地攻撃能力に関する菅政権の認識等について質問する。

一 従来、政府は、誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には個別的自衛権の行使である自衛の範囲に含まれ、可能であるとの見解を示している(昭和三十一年二月二十九日衆議院内閣委員会における鳩山内閣総理大臣答弁(船田防衛庁長官代読)等)。また、「日本とアメリカとの間におきましては、国土の防衛につきまして安保条約のあることは御承知の通りであります。・・・行政協定第二十四条の発動によりまして、共同作戦をしなければならぬというような場合になるかと存じます。・・・そういう場合において大作戦をするということは、わが国の自衛隊の力ではできませんし、また自衛の範囲内という問題から、これは問題が起ると思います。さような場合においては、おそらく米国の空軍の活動あるいは艦船の活動ということがあると思いますので、大体においてさような場合においては、いわゆる他に方法があるということになるかと存じます。」との答弁(昭和三十一年二月二十九日衆議院内閣委員会における船田防衛庁長官答弁)もある。政府として、現在もこの答弁を維持するのか。

二 日米同盟に基づき、米国が、我が国に対する武力攻撃を行う国の領域に対し打撃力を行使する場合は、前記一で示した政府答弁にいう「他に方法があるということになる」ため、憲法上は、自衛隊が、我が国に対する武力攻撃を行う国の領域に所在するミサイル発射手段等を攻撃することはできないのではないか。政府の認識を示されたい。

三 安倍前総理は、令和二年一月二十四日の参議院本会議において、「・・・いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で米国に依存しており、今後とも日米間の基本的な役割分担を変更することは考えていません。」と答弁している。政府として、現在もこの答弁を維持するのか。

四 日米同盟の下、「敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で米国に依存して」いるのであれば、自衛隊が、我が国に対する武力攻撃を行う国の領域に所在するミサイル発射手段等を攻撃する必要があるのか。そのような必要がある場合とは、米国が、我が国に対する武力攻撃を行う国の領域に対し打撃力を行使しない状況しかないのではないか。安倍前総理は、第二百一回国会冒頭の施政方針演説において、「日米同盟は、今、かつてなく強固なものとなっています。」と述べているが、そうであるならば、日米同盟に基づき米国が打撃力を行使しない状況は想定されないのではないか。仮に想定されるとする場合は、具体的にどのような状況を考えているのか。政府の認識を示されたい。

五 専守防衛という基本方針に基づく我が国の防衛力の在り方については、「専守防衛ないし専守防御というのは、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行なうということでございまして、これはわが国防衛の基本的な方針であり、この考え方を変えるということは全くありません。」との答弁(昭和四十七年十月三十一日衆議院本会議における田中内閣総理大臣答弁)もあるが、政府として、現在もこの答弁を維持するのか。

  右質問する。