質問主意書

第202回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二四号

敵基地攻撃能力に関する「内閣総理大臣の談話」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年九月十八日

小西 洋之


       参議院議長 山東 昭子 殿



   敵基地攻撃能力に関する「内閣総理大臣の談話」に関する質問主意書

 令和二年九月十一日、安倍前総理は、「内閣総理大臣の談話」(以下「安倍談話」という。)を発表した。
 以下、安倍談話について質問する。

一 安倍談話を発表した目的は何か。

二 安倍談話は、閣議において付議された案件として、閣議決定、閣議了解等がなされた上で発表されたものか否かを明らかにされたい。また、安倍談話が閣議において決定、了解等がなされたものではない場合、安倍談話は政府内でどのような効力を有するものなのか。菅政権は、事後、安倍談話の内容に拘束されることとなるのか。政府の見解を示されたい。

三 安倍談話が発表される以前に、国家安全保障会議において、安倍談話に関する審議や決定等が行われたのか否かを明らかにされたい。安倍談話が発表される前に、国家安全保障会議において、安倍談話に関する当該審議等が行われた場合は、当該審議等が行われた国家安全保障会議の開催日時、出席者(議長、議員、その他関係者等)、当該議論の概要を示されたい。

四 安倍談話においては、「これらについて、与党ともしっかり協議させていただきながら、今年末までに、あるべき方策を示し、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境に対応していくことといたします。」と記されているが、令和二年八月二十八日の記者会見において、内閣総理大臣の職を辞することを発表した安倍前総理が、なぜ自らの辞職後のことについて、「・・・協議させていただきながら、・・・対応していくことといたします。」と断言することができるのか。安倍前総理が、安倍談話の公表時点において、自らの辞職後の与党との協議及び今年末までの政府としての対応を行うことを断言することができる法的根拠を示されたい。

五 そもそも、「これらについて、与党ともしっかり協議させていただきながら、今年末までに、あるべき方策を示し、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境に対応していくことといたします。」の主語は何であるのか。政府以外のものが主語である場合は、具体的に示されたい。

六 安倍談話においては、「我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。」と記されており、その例として、北朝鮮による弾道ミサイル能力の向上等を挙げているが、「厳しさを増してい」るとされる「我が国を取り巻く安全保障環境」には、中国やロシアといった他の周辺国の軍事動向が含まれているのか。政府の認識を示されたい。

七 安倍談話においては、「抑止力」との単語が用いられているが、政府として、「抑止力」をどのように定義しているのか。政府の見解を示されたい。

八 安倍談話においては、「・・・もとより、この検討は、憲法の範囲内において、国際法を遵守しつつ、行われているものであり、・・・」と記されているが、ここでいう「国際法」とは、具体的に何を指すのか。政府の見解を示されたい。

九 安倍談話においては、「・・・日米間の基本的な役割分担を変えることもありません。」と記されているが、「日米間の基本的な役割分担」とは具体的に何を指すのか。政府の見解を示されたい。

十 安倍談話はいわゆる敵基地攻撃能力に関するものなのか否かを示されたい。また、安倍談話は「ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を検討してまいりました。」とあるところ、この「新たな方針」又は「検討」にはいわゆる敵基地攻撃能力を我が国による限定的な集団的自衛権行使に使用することも内容として含んでいるのかについて示されたい。

十一 安倍談話では「・・・抑止力を強化するため、ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を検討してまいりました。もとより、この検討は、・・・日米の基本的な役割分担を変えることもありません。助け合うことのできる同盟はその絆(きずな)を強くする。これによって、抑止力を高め、我が国への弾道ミサイル等による攻撃の可能性を一層低下させていくことが必要ではないでしょうか。」とされているが、なぜ、「ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針」が「助け合うことのできる同盟」として「その絆(きずな)を強くする」ことに繋がるのかについて、具体的に説明されたい。

十二 安倍談話の「助け合うことのできる同盟はその絆(きずな)を強くする。」との文言は、いわゆる敵基地攻撃能力を我が国による限定的な集団的自衛権行使に使用し、米国を助けることによって日米同盟の絆が強くなるとの趣旨を述べているのか。この文言の趣旨について具体的に説明されたい。

十三 安倍談話においては、「・・・弾道ミサイル等の脅威から、我が国を防衛しうる迎撃能力を確保していくこととしています。」と記される一方で、「しかしながら、迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことが出来るのか。そういった問題意識の下、抑止力を強化するため、ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を検討してまいりました。」と記されているが、「我が国を防衛しうる迎撃能力を確保」するにもかかわらず、なぜ「迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことが出来るのか」といった「問題意識」を有するに至ったのか、その理由を明確に示されたい。

十四 菅政権は今後、我が国がいわゆる敵基地攻撃能力を保有することについて検討を進めていくのか。検討を進める場合は、その進め方やスケジュールの目処を示されたい。

  右質問する。