質問主意書

第202回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一六号

羽田空港の新飛行ルートに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年九月十八日

山添 拓


       参議院議長 山東 昭子 殿



   羽田空港の新飛行ルートに関する質問主意書

 政府は、羽田空港における国際線の発着回数を従来の一日八十便からさらに五十便増便するためとして、本年三月二十九日以降、都心を含む人口密集地の上空を超低空かつ多頻度で飛行させる新経路(以下「新飛行ルート」という。)の運用を開始した。
 新飛行ルート周辺の住民からは、騒音や落下物、墜落の危険をはじめ、様々な懸念が表明されてきた。本年六月には、国土交通省が新飛行ルートを認めたのは違法であるなどとして東京都や川崎市の住民計二十九人が東京地裁に取消しを求める行政訴訟を提起したほか、品川区では「羽田新飛行ルート運用の賛否を問う品川区民投票」をめざし、区民投票条例の制定に向けた運動も行われている。また、複数の区議会で、新飛行ルートの見直し等を求める声が上げられており、このうち品川区議会は、二〇一九年九月二十日の決議において、「早急かつ具体的にルートの再考および固定化を避ける取り組みを示し、実行に移すことを強く求める」としていた。
 さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、世界的にも国内的にも人の移動そのものが制限されたことから航空需要が激減し、特に日本を発着する国際線は九割減便が続いている。その結果、新飛行ルートは、運用開始以降、予定された上限便数による運用が一度も行われることのないまま今日に至っている。
 住民の理解を得られないまま、政府が主張した必要性も欠いたまま、新飛行ルートありきで運用を継続することは許されず、直ちに中止すべきである。
 そこで、以下質問する。

一 新飛行ルートのうち、離陸・着陸ともに都心上空を低空で飛行し影響の大きい南風運用について、国交省は「南風運用の割合は、運用全体の約四割(年間平均)」としてきた(「羽田空港のこれから」)。
 ところが、本年二月の実機飛行確認では、二月二日から三月十一日までの期間内に七日間程度実施するとされていた南風運用が二月十二日までに所期の目的を達したとして終了している。十一日間で七日実施であるから、約六三%が南風運用であった。また、本格運用が始まった三月二十九日以降でみると、三月の三日間は運用がなかったものの、四月は十七日(約五七%)、五月は二十日(約六四%)、六月は二十一日(七〇%)と、運用頻度が高く、十日間連続となった週もある。従来の南風運用の割合と比較しても、多い傾向にある。

1 七月及び八月の南風運用の日数を明らかにされたい。

2 季節を問わず、南風運用の比率が高い状況が見られる。年間平均四割との見通しは妥当性を欠くのではないかと考えるが、認識を示されたい。

二 国交省は、本年六月、「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」(以下「同検討会」という。)を設置し、「羽田新経路の固定化を回避するための方策について、最近の航空管制や航空機器の技術革新を踏まえ、技術的観点から検討を行う」としている。六月三十日に第一回検討会が開かれたが、その後は開催されていない。

1 同検討会の今後のスケジュールは、「羽田新経路の固定化回避に向けて考えられる技術的選択肢について多角的な検討を行い、今年度中にそれぞれの方策のメリット・デメリットを整理予定」とされる。
 第二回以降の同検討会の開催計画、選択肢の整理を踏まえて結論を得る時期の見通し、及び、今後検討を予定しているテーマについて明らかにされたい。

2 新飛行ルートがもたらす騒音、落下物、事故の危険など周辺住民のくらしと健康への影響を軽減しようとすれば、都心上空を低空で飛行する離着陸ルートそのものを見直すことが避けられないと考える。
 同検討会における検討は、新飛行ルートにおける滑走路運用及び発着便数の変更を含めて行うのか。
 仮に、現在の新飛行ルートにおける滑走路運用及び発着便数を前提とするのであれば、同検討会が掲げる「新経路の固定化回避」とはなにを意味するのか。説明されたい。

3 新飛行ルートにおける騒音の影響は、南風時B滑走路からの離陸における東京都大田区、川崎市などで甚大である。ところが、同検討会においては、離陸ルートの固定化回避は検討対象とされていない。これはなぜか。

4 固定化回避を検討するのであれば、新型コロナウイルスの影響による減便等の状況も踏まえて、新飛行ルートの滑走路運用及び発着便数そのものを再検討すべきではないかと考えるが、認識を伺う。

三 赤羽国土交通大臣は、新飛行ルートの運用時には従来の飛行ルートを運用しない旨、千葉県及び県下市町と「確認をとれている」とし(本年五月十八日参議院決算委員会)、あたかも新飛行ルートが千葉県の騒音負担軽減のために運用されているかのように説明している。
 しかし、二〇一〇年の羽田空港第四滑走路の運用開始に当たって、千葉県及び県下市町の連絡協議会と交わされた「羽田再拡張後の飛行ルート等に関する確認書」(二〇〇五年九月二日及び二〇一〇年三月十九日)では、「将来の管制技術等の進展に合わせ検討する事項」に、都心上空における低空飛行を行うこととなる新飛行ルートは想定されていない。
 また、首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間取りまとめ(二〇一四年)においては、首都圏空港の機能強化、すなわち増便を前提として、新飛行ルートを運用した場合には、従来の到着経路下にある千葉県や東京都における騒音影響がなくなるとしている。機能強化の検討は、空港処理能力の拡大が目的であり、騒音負担軽減のために進められたものではない。

1 こうした点を踏まえれば、国土交通省と千葉県の「羽田再拡張事業に関する県・市町村連絡協議会」による「羽田再拡張後の飛行ルート等に関する確認書」(二〇一九年十二月二十五日)が、「今般、国土交通省は、「羽田空港の機能強化」に際して、千葉県下の騒音影響を増やすことなく更に軽減を進めるため、新たな飛行ルートの設定をはじめとする多面的な方策を講じることを表明した」などとするのは、新飛行ルートの必要性についての政府の従来の説明と矛盾する。どのような認識か、伺う。

2 新型コロナウイルスの影響により、羽田空港は新飛行ルートを運用する必要のない発着回数となるどころか、国際線は九割減便し、国際線・国内線を問わず小型化・軽量化している。また、この状況が早期に変化する見込みは乏しい。一方、前述の千葉県との確認書(二〇一九年十二月二十五日)は、新型コロナウイルスの影響が顕在化する前に交わされたものであり、今般の状況を考慮したものではない。
 国土交通省は、現下の状況を踏まえ、千葉県に限らず、東京都、神奈川県、埼玉県など新飛行ルート下の関係自治体、議会、そして住民の意見を改めて聴取し、新飛行ルートの運用を継続することの是非について再検討すべきである。
 関係自治体や議会、住民から現状についてどのような意見が寄せられているか。また、再検討の必要性についてはどのような認識か、伺う。

四 政府は、入国制限の緩和に向けて空港検疫を強化するとし、現在、羽田、成田、関空で一日四千三百件の検査能力を九月中に一万三百件に引き上げるとしている。
 仮に、新飛行ルートを上限いっぱいの発着回数で運用し、国際線を一日百三十便まで増便した場合、羽田空港において想定される一日あたりの入国者数は最大何人か。今後、そのために必要な検査能力を確保していく方針か、明らかにされたい。

  右質問する。