質問主意書

第201回国会(常会)

答弁書


内閣参質二〇一第一九四号
  令和二年六月三十日
内閣総理大臣 安倍 晋三


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員小西洋之君提出陸上配備型イージス・システムの配備に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出陸上配備型イージス・システムの配備に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 防衛省においては、陸上配備型イージス・システムの配備に当たっては、地元の皆様の安全を確保するため、弾道ミサイルを迎撃する際に発射する弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル(以下「SM―三」という。)の飛翔経路をコントロールすることにより、SM―三から切り離されるブースター(以下単に「ブースター」という。)を陸上における特定の区域内又は海面に落下させる措置を講ずることとし、これまで関係地方公共団体や地元の皆様に対し、その旨の説明を行ってきたところである。
 しかしながら、米側との協議を行い、同省において検討を進めてきた結果、SM―三の飛翔経路をコントロールし、ブースターを当該特定の区域内又は海面に確実に落下させるためには、SM―三を含めた陸上配備型イージス・システム全体を大幅に改修することが必要となり、相当のコストと期間を要することが、令和二年五月下旬に判明したところである。
 このため、同省においては、陸上自衛隊むつみ演習場及び再調査の対象としていた陸上自衛隊新屋演習場を含む二十箇所の国有地について、同年六月十五日に陸上配備型イージス・システムの配備に関するプロセスを停止することとし、その上で、同月二十四日の国家安全保障会議での議論を踏まえ、これらへの陸上配備型イージス・システムの配備を断念することを同月二十五日に公表したところである。

四について

 お尋ねについては、河野防衛大臣が、令和二年六月十九日に山口県を、同月二十一日に秋田県を、それぞれ訪問し、関係地方公共団体や地元の皆様に対し、おわび申し上げたところである。

五から七までについて

 防衛省において、陸上自衛隊むつみ演習場及び再調査の対象としていた陸上自衛隊新屋演習場を含む二十箇所の国有地について、陸上配備型イージス・システムの配備に関するプロセスを停止することとした理由や経緯は、一から三までについてで述べたとおりであるところ、現在の我が国を取り巻く安全保障環境に関する認識や今後の対応については、安倍内閣総理大臣が、令和二年六月十八日の記者会見において、「我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している。その現状には全く変わりはありません。朝鮮半島では今、緊迫の度が高まっています。弾道ミサイルの脅威から国民の命と平和な暮らしを守り抜いていく。これは政府の最も重い責任であります。我が国の防衛に空白を生むことはあってはなりません。平和は人から与えられるものではなく、我々自身の手で勝ち取るものであります。安全保障政策の根幹は、我が国自身の努力にほかなりません。抑止力、対処力を強化するために何をすべきか。日本を守り抜いていくために、我々は何をなすべきか。安全保障戦略のありようについて、この夏、国家安全保障会議で徹底的に議論し、新しい方向性をしっかりと打ち出し、速やかに実行に移していきたい。」と述べているとおりであり、今後の議論の具体的な方向性等について、現時点で予断をもってお答えすることは差し控えたい。

八について

 各年度の予算に係るお尋ねについては、我が国に陸上配備型イージス・システムを導入することを決定した平成二十九年度から令和二年度までの間において①予算に計上された関連する主な経費、②①に係る予算額、③①に係る契約額の契約の相手方別の内訳(契約の変更による金額の増減があった場合は、当該変更後の金額)及び④③のうち支払済額を年度ごとにお示しすると、次のとおりである。
 平成二十九年度
 ①米側からの各種情報等の取得に係る経費 ②約二十八億円 ③米国政府約二十七億円 ④同国政府約二十七億円
 平成三十年度
 ①基本設計に係る経費 ②約四億円 ③候補地(三〇)基本構想等策定業務日本工営・山下設計共同体約四億円 ④同共同体約四億円
 ①地質測量調査に係る経費 ②約三億円 ③株式会社パスコ広島支店約〇・四億円、日本地研株式会社約〇・四億円、日本工営株式会社仙台支店約〇・三億円、アジア航測株式会社仙台支店約〇・三億円 ④株式会社パスコ広島支店約〇・四億円、日本地研株式会社約〇・四億円、日本工営株式会社仙台支店約〇・三億円、アジア航測株式会社仙台支店約〇・三億円
 令和元年度
 ①レーダーを除く陸上配備型イージス・システム本体の取得に係る経費 ②約千三百八十二億円 ③米国政府約千三百八十二億円 ④同国政府約九十七億円
 ①レーダーの取得に係る経費 ②約三百五十一億円 ③三菱商事株式会社約三百五十億円 ④同社約六十五億円
 ①人材育成に係る経費 ②約十七億円 ③米国政府約十七億円 ④同国政府零円
 ①標準設計に係る経費 ②約七億円 ③株式会社山下設計約五億円 ④同社約〇・六億円
 令和二年度
 ①垂直発射装置の取得に係る経費 ②約百十五億円 ③及び④未契約
 ①国内システムとの連接に関する調査に係る経費 ②約十四億円 ③及び④未契約
 その上で、「今後どのような措置をとるのか」とのお尋ねについては、五から七までについてで述べた今後の議論の具体的な方向性等を踏まえて検討していくこととしているため、現時点で予断をもってお答えすることは差し控えたい。

九について

 御指摘の防衛省資料にいう「相当のコストと期間」の具体的な内容については、米側の協力を得て見積もることが必要なものであるため、確たることを申し上げることは困難である。