質問主意書

第201回国会(常会)

答弁書


内閣参質二〇一第一八三号
  令和二年六月三十日
内閣総理大臣 安倍 晋三


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員小西洋之君提出検察庁法改正案が東京高等検察庁検事長の勤務延長の解釈変更と因果関係的にも法的に一体である「黒川法案」というべき法の支配を破壊する暴挙であることに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出検察庁法改正案が東京高等検察庁検事長の勤務延長の解釈変更と因果関係的にも法的に一体である「黒川法案」というべき法の支配を破壊する暴挙であることに関する質問に対する答弁書

一について

 検察官の定年引上げ等を内容とする検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)の改正案(以下「検察庁法改正案」という。)については、令和元年十月末頃、その当時の案文について、内閣法制局第二部長の審査を終了したものであるところ、当該案文には御指摘の「検察官の役降り特例、勤務延長」に関する規定は設けられていなかった。

二から四までについて

 検察庁法改正案について、令和元年十月末頃以降にその内容を変更したのは、本年四月二日の参議院法務委員会において、森法務大臣が「法務省においては、検察官の定年引上げに関する法律案策定の過程において、昨年十月末頃時点では、退官や異動により補充すべきポストが一斉に生じるおそれがあるか否かという視点のみから検討し、検察官については勤務延長及び役職定年の特例に相当する規定を設けなくとも公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることは考え難いと結論付けておりました。しかしながら、検察庁法の改正を含む法律案の提出に至りませんでした。本年の通常国会の提出までに時間ができたことから、昨年十二月頃から担当者において改めて検討作業等を行ったものでございます。その際、検察官に勤務延長は適用されないとの従前の解釈を維持するのが妥当かどうかという観点に立ち戻って法務省において検討を行った結果、昭和五十六年当時と比べ、社会経済情勢は大きく変化し、多様化、複雑化しており、これに伴い犯罪の性質も複雑困難化している中、検察官においても、業務の性質上、退職等による担当者の交代が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずることが一般の国家公務員と同様にあると考えて、昨年十月末頃時点の考え方とは別の視点から、検察官にも国家公務員法上の勤務延長制度の適用があるとの見解に至ったものでございます。」と答弁したとおりであり、適正に行われたものである。

五について

 御指摘の法律案は、検察官は、検察庁法第二十二条及び国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第八十一条の二第一項の規定に基づき定年により退官(退職)しているとの理解に基づき立案したものである。

六について

 検察官に国家公務員法第八十一条の三の規定が適用されるという解釈に基づいて立案した条文としては、第二百一回国会に提出した国家公務員法等の一部を改正する法律案(以下「国公法等改正法案」という。)第四条の規定による改正後の検察庁法第二十二条第二項や国公法等改正法案附則第三条第七項等がある。

七について

 一般職の国家公務員の定年制度の導入等を内容とする国家公務員法の一部を改正する法律(昭和五十六年法律第七十七号)が制定された昭和五十六年当時と比べ、社会経済情勢は複雑多様化し、それに伴い、犯罪情勢も複雑困難化するなど、検察官を取り巻く情勢は大きく変化しており、検察官についても、特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合があるという考えに基づき、検察官にも国家公務員法第八十一条の三の規定が適用されるとの解釈を適正に行い、そのような解釈を前提に、国公法等改正法案を立案し、国会に提出したものであり、このことが「我が国の法の支配の破壊となる」との御指摘は当たらない。

八について

 国公法等改正法案は、第二百一回国会で廃案となったところであり、今後の対応については、政府部内で検討を行ってまいりたい。