質問主意書

第201回国会(常会)

答弁書


内閣参質二〇一第一五七号
  令和二年六月二十六日
内閣総理大臣 安倍 晋三


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員紙智子君提出アイヌ施策推進法に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出アイヌ施策推進法に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねに関し、アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成三十一年法律第十六号。以下「アイヌ施策推進法」という。)の法案(以下単に「法案」という。)の検討に際してのアイヌの人々からの意見聴取は、内閣官房において、計三十六回の意見交換の会合を開催して行ったものであるが、これらの会合において意見を聴取したアイヌ関係団体の実数は少なくとも五十五団体、その延べ数は少なくとも八十五団体、意見を聴取したアイヌの人々の延べ人数は五百三十名である。
 お尋ねの「政府が意見を聞いたアイヌの実人数」及び「各地のアイヌ協会の会員でないアイヌから政府が意見を聞いた回数、実人数および延べ人数」については、各回の個別の参加者の属性を網羅的には把握しておらず、お答えすることは困難である。
 また、聴取した意見のうち、例えば、法律でアイヌを先住民族と位置付けること、儀式等に必要な材料を国有林野で採取できるようにすること、手続が煩雑なさけの特別採捕制度を改善すること等の意見については、法案に取り入れたところである。

二について

 お尋ねの「四十六条ある先住民族の権利宣言を日本国内において具体化するためにどのような議論をしたのか」及び「権利をどのように具体化したのか」については、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(以下「宣言」という。)は法的拘束力を有するものではなく、政府としては、宣言の各条について網羅的に国内措置を講ずるという観点からの検討は行っていないが、平成二十年六月六日に衆議院及び参議院の本会議において採択された「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」において「宣言における関連条項を参照しつつ、・・・総合的な施策の確立に取り組むこと」とされたことも踏まえ、宣言のうち、差別を受けない権利の規定、国民の理解の促進に関する規定、土地資源に関する権利の規定及び先住民族の文化に関する権利の規定を参照し、これらの趣旨に対応する措置として、アイヌの人々に対する差別の禁止に関する基本理念、国及び地方公共団体の教育活動、広報活動等の責務、国有林野における林産物の採取及び内水面におけるさけの採捕に関する特別の措置等を法案に盛り込んだものである。
 また、お尋ねの「諸権利を、今後、どのように具体化するのか」については、政府としては、宣言に示されている国の果たすべき責務は、憲法との課題整理を図る必要があるものを除き、アイヌ施策推進法及び関連法令により、おおむね措置されたものと考えているが、引き続き、アイヌ施策推進法の規定及び附帯決議を踏まえ、アイヌの人々に関する施策の更なる検討に努めてまいりたい。

三について

 御指摘の「アイヌの遺骨問題」に関しては、政府としては、関係者の理解及び協力の下で、アイヌの人々への遺骨等の返還を進め、直ちに返還できない遺骨等については、民族共生象徴空間に集約し、アイヌの人々による尊厳ある慰霊の実現を図るとともに、アイヌの人々による受入体制が整うまでの間の適切な管理を行うこととしており、御指摘の「個人が特定されたアイヌ遺骨等の返還手続に関するガイドライン」(平成二十六年六月二日付け閣副第三六三号、二六文科振第一二六号)及び「大学の保管するアイヌ遺骨等の出土地域への返還手続に関するガイドライン」(平成三十年十二月二十六日付け閣副第八三一号、三〇文科振第三三六号、国北総第九一号)に基づき、発掘又は発見がされた場所、性別、年齢等の遺骨に関する情報を関係大学及び文部科学省において公表するなど、返還手続を進めているところである。

四について

 アイヌ施策推進法第八条第一項に規定する都道府県方針を定めた都道府県は、北海道である。
 また、アイヌ施策推進法第十条第一項に規定するアイヌ施策推進地域計画を作成し、内閣総理大臣の認定を受けた市町村は、北海道札幌市、旭川市、室蘭市、釧路市、帯広市、苫小牧市、根室市、千歳市、登別市、恵庭市、伊達市、八雲町、長万部町、豊浦町、白老町、洞爺湖町、むかわ町、平取町、新ひだか町、上士幌町、釧路町、弟子屈町、白糠町及び標津町並びに三重県松阪市である。

五について

 お尋ねの「「内閣府令」で定めた事業」として定めたものはない。
 また、お尋ねの「アイヌ民族が地域計画の作成に参画する仕組み」としては、アイヌ施策推進法第七条第一項に規定する基本方針である「アイヌ施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本的な方針」(令和元年九月六日閣議決定)において、「市町村が計画を作成する際には、・・・アイヌの人々の要望等を反映するよう努めることとする」としているほか、アイヌ施策推進法第十条第九項の認定に関する実施要綱において、同項の認定の基準の細目として「アイヌの人々を含めた地域住民からの意見聴取を行っているなど、事業の実施が円滑かつ確実であると見込まれること」を定めており、アイヌの人々の意見が適切に反映されていると認められない計画については同項の認定をしないこととしているところである。