質問主意書

第201回国会(常会)

答弁書


内閣参質二〇一第一五一号
  令和二年六月二十六日
内閣総理大臣 安倍 晋三


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員木村英子君提出羽田空港新飛行経路が視覚障がい者等に与える影響に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員木村英子君提出羽田空港新飛行経路が視覚障がい者等に与える影響に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 我が国の国際競争力の強化、首都圏における航空機の騒音による影響の分散等のためには、東京国際空港(以下「羽田空港」という。)における新たな飛行経路(以下「新経路」という。)の運用は必要不可欠であるとともに、羽田空港において減便が発生している期間を活用して航空機の騒音対策や安全対策を改めて徹底し、増便した際の円滑な運用に備えたいと考えており、令和二年三月二十九日に新経路の運用を開始したところである。

一の3について

 新経路の運用等による羽田空港の機能強化については、新経路下となる各地で六巡にわたる住民説明会を開催したほか、視覚障害者団体への説明を行ったところである。また、新経路の運用に当たり、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第五十六条第一項の規定に基づき指定されていた羽田空港の円錐表面及び外側水平表面の変更を行っており、同法第五十六条の二第二項において準用する同法第三十九条第二項の規定により開催した当該変更に係る公聴会において、公述人である視覚障害者の方から意見を述べていただいたところである。これらの説明会及び公聴会においては、視覚障害者の方々から、視覚障害者にとっては音の情報が頼りであるとの意見や、航空機の騒音対策や航空機からの落下物対策の着実な実施等に関する要望を頂いてきているところである。
 なお、住民説明会及び視覚障害者団体への説明においては、視覚障害者の方々に対して、点字パンフレットを用いて新経路の概要を説明したほか、航空機の高度や飛行経路からの側方距離に応じた航空機の騒音を体感できる機器(以下「騒音体感機器」という。)を用いて、航空機の騒音と音響式信号機の案内音を組み合わせて作成した横断歩道において想定される音の状況等について情報提供を行ったところである。

一の4について

 国土交通省においては、新経路の関係地域の地方公共団体や視覚障害者の方々を含む住民からの意見や要望を踏まえ、航空機の騒音対策や航空機からの落下物対策を実施してきたところである。
 航空機の騒音対策としては、騒音を軽減する観点から、羽田空港における着陸料について低騒音機の利用を一層促進するため令和二年一月に再度見直しを行ったことに加え、新経路における飛行高度の引上げを行っているところである。現在は、新経路下の地域の騒音を測定するなど騒音の影響を注視しているところであり、測定結果を分析した結果、これまで住民説明会等において示していた騒音レベルを著しく上回った場合等には、原因究明を行い、必要に応じて更なる騒音対策を検討することとしている。
 また、航空機からの落下物対策としては、同省において平成三十年三月に取りまとめた「落下物対策総合パッケージ」を踏まえ、落下物の未然防止策を徹底させる観点から、航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)を改正し航空運送事業者及び航空機使用事業者に対し部品等脱落防止措置の内容について事業計画に記載することを義務付けたことに加え、駐機中の機体を空港管理者がチェックする体制を強化するなどしたところである。

二の1及び3について

 国土交通省においては、新経路の運用に当たり、航空機の騒音に関して御指摘のような「専門家及び厚生労働省担当部局」を交えた検討は行っていないが、一の4についてで述べた航空機の騒音対策を着実に実施しているところである。また、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和四十二年法律第百十号)第五条の規定に基づき、障害者支援施設、障害福祉サービス事業を行う施設等については、航空機の騒音の強度及び頻度が国土交通大臣の定める限度を超える場合には、騒音防止工事の助成を行うこととしている。

二の2について

 国土交通省においては、新経路の運用に当たり、音響式信号機の設置に係るお尋ねのような「要請」は行っておらず、「予算措置」も講じていないが、警察庁に対しては、新経路の概要を説明したほか、騒音体感機器を用いて、航空機の騒音と音響式信号機の案内音を組み合わせて作成した横断歩道において想定される音の状況について情報提供を行ったところである。

三について

 御指摘の検討会議においては、新経路の固定化を回避するための技術的方策について、航空管制及び航空機に係る技術的観点から検討する予定である。このため、お尋ねの委員については、航空管制、航法等に関する専門的知識を有する者及びパイロットを選定したところである。