質問主意書

第201回国会(常会)

答弁書


内閣参質二〇一第一三四号
  令和二年六月十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対する答弁書

一の1の(1)及び(2)について

 令和元年末時点で難民認定申請(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第六十一条の二第一項の難民の認定の申請をいう。以下同じ。)中の者の数及び審査請求(入管法第六十一条の二の九第一項の審査請求をいい、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成二十六年法律第六十九号)第七十五条の規定による改正前の入管法第六十一条の二の九第一項の異議申立てを含む。以下同じ。)中の者の数は、現在集計中であり、現時点でお答えすることは困難である。

一の1の(3)について

 平成三十一年及び令和元年に地方出入国在留管理局等(地方出入国在留管理局及び地方出入国在留管理局支局(出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律(平成三十年法律第百二号)第二条の規定による改正前の法務省設置法(平成十一年法律第九十三号)第二十一条第一項の地方入国管理局及び同法第二十二条第一項の地方入国管理局支局を含む。)をいう。)における振り分けの段階で明らかに濫用・誤用的な案件として振り分けられたB案件又はC案件(「難民認定事務取扱要領」(平成十七年五月十三日付け法務省管総第八百二十三号法務省入国管理局長通知)に「B案件」又は「C案件」として記載されているものをいう。以下同じ。)の数は、B案件が二百八十一件であり、C案件が四百九件である。

一の2の(1)、(2)及び(4)並びに二の3について

 平成二十八年から平成三十年までの間に難民と認定した者(審査請求手続において認定した者を含む。)九十人のうち、二回目以降の難民認定申請に対して難民と認定したものの数は五人(速報値)であり、退去強制令書発付後に難民と認定したものの数は八人(速報値)である。
 また、平成二十八年から平成三十年までの間に難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めた者百八十二人のうち、二回目以降の難民認定申請に対して難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものの数は五十七人(速報値)であり、退去強制令書発付後に在留を特別に許可したものの数は八十五人(速報値)である。
 平成三十一年及び令和元年に係るその余のお尋ねについては、通常の業務において集計しておらず、集計に当たっては難民認定申請の受付及び処分を行う地方出入国在留管理局等(地方出入国在留管理局及び地方出入国在留管理局支局をいう。以下同じ。)に調査を行わせ、その結果を精査するなどの作業に膨大な時間を要することから、お答えすることは困難である。

一の2の(3)及び二の2について

 お尋ねについては、通常の業務において集計しておらず、集計に当たっては難民認定申請の受付及び処分を行う地方出入国在留管理局等に調査を行わせ、その結果を精査するなどの作業に膨大な時間を要することから、お答えすることは困難であり、また、御指摘のような統計をとることは、現時点では考えていない。

一の2の(5)について

 御指摘の「いわゆる「新しい形態の迫害」」に係る御指摘の「仕組み」の内容については、難民審査参与員からの提言や諸外国の実例なども参考にしながら、現在においても引き続き検討中であり、この「いわゆる「新しい形態の迫害」」を受けたことを理由に平成三十一年及び令和元年に難民の認定を受けた者はいない。

一の3の(1)について

 平成三十一年及び令和元年に難民不認定処分をした者について、難民調査官が行った入管法第六十一条の二の十四第一項に規定する事実の調査において、難民認定申請をした者に対する事情聴取を実施したか否かは網羅的には把握していないが、二回目以降の難民認定申請において、それ以前とは異なる新たな難民の地位に関する条約(昭和五十六年条約第二十一号)上の迫害事由に該当する事情を主張していない場合であって、難民認定申請をした者が難民調査官による事情聴取を希望せず、かつ、過去の記録や申請書等の提出資料により難民の認定をするかしないかを判断できる等の理由により、事情聴取を行わなかった事案があることは把握している。

一の3の(2)について

 前段のお尋ねについては、平成三十年一月十五日に行った「難民認定制度の運用の更なる見直し」によって、濫用・誤用的な難民認定申請が激減したと考えられるところ、平成三十一年及び令和元年に処理した案件では、平成三十年の処理案件の多数を占めた、比較的審査に時間を要しない濫用・誤用的な案件が減少した一方、難民の地位に関する条約上の迫害事由に明らかに該当しないとはいえず、審査に時間を要する案件が増加したことが、処理数減少の主たる理由であると考えている。
 後段のお尋ねについては、御指摘の「処理数を一昨年の水準に戻すために」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにしても、真の難民の迅速かつ確実な庇護のため、引き続き迅速な案件処理に努めていく考えである。

一の4について

 出入国在留管理庁において把握しているところでは、難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、平成三十一年及び令和元年に提起された件数は十五件、令和元年末時点までに終局裁判がなされた件数は第一審、控訴審及び上告審の合計で六十八件である。
 また、平成三十一年及び令和元年において、難民不認定処分取消請求訴訟、難民不認定処分無効確認請求訴訟又は難民認定義務付け訴訟における国の敗訴が確定した事案はない。

二の1について

 お尋ねについては、現在集計中であり、現時点でお答えすることは困難である。

三の1について

 令和元年末時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数は千五十四人(速報値)であり、このうち、難民認定申請中のものの数は百三十三人、審査請求中のものの数は二百七十三人(いずれも速報値)であるが、難民不認定処分取消請求訴訟係属中のものの数については、統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

三の2について

 平成三十一年及び令和元年の出入国在留管理庁の収容施設における入所人員の総数は、現在集計中であり、現時点でお答えすることは困難である。また、「そのうち、空港から移送された者の数」に関するお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

四の1について

 令和元年度において、難民認定申請をしている者のうち生活に困窮するものに対する支援としてする保護費の支給(以下「保護措置」という。)の申請をした者の数は、五百七十四人であり、保護措置を受けた者の数は、三百六十二人である。

四の2について

 外務省においては、難民認定申請者保護事業等の実施を公益財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部(以下「委託先」という。)に委託しているところ、令和元年度における、委託先が保護措置の申請を受け付けてから保護措置を開始して差し支えない旨の結果通知を委託先が外務省から受けるまでの期間の平均は、約五十六日である。
 また、令和元年度における保護措置を受けた者の平均受給期間は、約十一箇月である。

四の3について

 平成三十一年及び令和元年において、保護措置の申請をしたものの保護措置の開始が不適当と判断された者の数は、百十五人であり、その国籍は、アフガニスタン、アルジェリア、アルメニア、イエメン、イラク、イラン、インド、ウガンダ、エジプト、ガーナ、カメルーン、ガンビア、ギニア、コンゴ民主共和国、スリランカ、セネガル、中華人民共和国、チュニジア、トルコ、ナイジェリア、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブルキナファソ、マリ、ヨルダン及びリベリアである。
 また、平成三十一年及び令和元年における、委託先が当該申請を受け付けてから保護措置の開始が不適当である旨の結果通知を委託先が外務省から受けるまでの期間の平均は、約五十一日である。

四の4について

 令和元年度において、保護措置の対象者のうち直ちに住居を確保する必要があるものに対する支援として提供している難民認定申請者緊急宿泊施設(以下「緊急宿泊施設」という。)を利用した者の数は、三十人であり、その男女別の内訳は、男性が二十三人、女性が七人であり、国籍別の内訳は、イランが一人、エチオピアが三人、カメルーンが五人、コンゴ共和国が一人、コンゴ民主共和国が十一人、チュニジアが六人、トルコが一人、モロッコが一人、リベリアが一人である。
 また、保護措置の申請から緊急宿泊施設の利用開始までの平均日数は約七日、最短日数は零日、最長日数は四十九日である。

四の5について

 お尋ねの令和元年度の支給額は、①保護費が一億三千四百二十五万三千六百六十三円、②生活費が八千八百四十六万七千九十七円、③住居費が三千九百七十九万四千七百五円、④医療費が五百九十九万千八百六十一円である。
 また、緊急宿泊施設の予算額は、平成三十年度は二百九十五万四千八百八十円、令和元年度は三百四十四万四十円であり、執行額は、平成三十年度は三百十万七千百三十五円、令和元年度は三百五十六万三千百九十一円である。

五について

 平成三十年十月三十一日以降、御指摘の有識者会議の委員による会議は開催されておらず、また、今後の開催は未定である。
 現在、難民認定制度の濫用・誤用的な申請の迅速処理等の対象となる案件の振り分けは、同会議による検証結果における指摘を踏まえて適正に行っているところであり、引き続き、案件の適正な振り分けに努めてまいりたい。