質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第一八五号

検察庁法改正案の勤務延長等の立法事実が虚偽であることに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年六月十七日

小西 洋之


       参議院議長 山東 昭子 殿



   検察庁法改正案の勤務延長等の立法事実が虚偽であることに関する質問主意書

 国家公務員法等の一部を改正する法律案のうち検察庁法の一部改正部分(以下「検察庁法改正案」という。)において検察官に勤務延長を措置するべく昨年に内閣法制局部長審査を終了していた法律案から方針を変更した理由、すなわち、「検察官の勤務延長の必要性についての令和元年十月末頃時点での考えを改めることとした理由」について、法務省は「(1)国家公務員法に勤務延長制度が導入された昭和五十六年当時と比べ、例えば、国際間を含めた交通事情は飛躍的に進歩し、人や物の移動は容易になっている上、インターネットの普及に伴い、実際に人が移動しなくても、各種情報の交換や諸々の手続などが簡単に行えるようになっているなど、社会経済情勢は大きく変化し、多様化・複雑化している。(2)これに伴い、犯罪の性質も、例えば、海外に拠点を置いた国際的な組織犯罪や捜査手法に工夫を要するサイバー犯罪なども多く発生している状況にあり、複雑困難化している というように、犯罪の捜査等に当たる検察官を取り巻く情勢は、昭和五十六年当時と比べ、大きく変化しており、検察官についても、業務の性質上、退職等による担当者の交替が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずることが、一般の国家公務員と同様にあると考えられたものである。」との見解を示している。
 これに関し、以下質問する。

一 法務省は検察庁法改正案について、昨年に内閣法制局の部長審査が終了した段階の法律案では検察官の勤務延長を認めるための改正を行うこととはしていなかったにもかかわらず、閣議決定された法律案についてはそれを認めるための改正が行われているが、検察官に勤務延長を認めることが政策的に必要であると変更する理由とした立法事実を具体的に示されたい。

二 検察官出身である法務省刑事局長及びその配下の官僚らにおいて、「(1)国家公務員法に勤務延長制度が導入された昭和五十六年当時と比べ、例えば、国際間を含めた交通事情は飛躍的に進歩し、人や物の移動は容易になっている上、インターネットの普及に伴い、実際に人が移動しなくても、各種情報の交換や諸々の手続などが簡単に行えるようになっているなど、社会経済情勢は大きく変化し、多様化・複雑化している」との事実を認識した時期は昨年のいつ頃であるかを示されたい。また、その事実を検察官出身である法務省刑事局長及びその配下の官僚らが認識した契機はどのようなものであったのかについて示されたい。

三 検察官出身である法務省刑事局長及びその配下の官僚らにおいて、「(2)これに伴い、犯罪の性質も、例えば、海外に拠点を置いた国際的な組織犯罪や捜査手法に工夫を要するサイバー犯罪なども多く発生している状況にあり、複雑困難化している というように、犯罪の捜査等に当たる検察官を取り巻く情勢は、昭和五十六年当時と比べ、大きく変化しており、」との事実を認識した時期は昨年のいつ頃であるかを示されたい。また、その事実を検察官出身である法務省刑事局長及びその配下の官僚らが認識した契機はどのようなものであったのかについて示されたい。

四 前述の(1)の「国家公務員法に勤務延長制度が導入された昭和五十六年当時と比べ」ての「社会経済情勢」の変化やその「多様化・複雑化」や、前述の(2)のこれに伴う「犯罪の性質」の「複雑困難化」は、検察官を取り巻く情勢の変化として当たり前のことであり、こうした事項を昨年の法律案にはなかった検察官の勤務延長を措置する条文の立法事実として主張すること自体が、この勤務延長の法改正は立法事実なき暴挙であることを示しているのではないか。政府の見解を示されたい。

五 前記二から四について、東京高等検察庁黒川弘務検事長(当時)の違法な勤務延長を正当化するための立法事実をでっち上げて、検察官に勤務延長や役降り特例を可能とする法改正を行うことは、刑事司法を預かる法務省として準司法官たる検察官のあり方を、容易に政治介入を受け得るものへと変質させ、検察の独立を毀損する万死に値する暴挙ではないか。

  右質問する。