質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第一八二号

検察官への勤務延長制度の適用の「解釈変更」が政府の法令解釈の考え方(ルール)を逸脱した違法無効の暴挙であることに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年六月十七日

小西 洋之


       参議院議長 山東 昭子 殿



   検察官への勤務延長制度の適用の「解釈変更」が政府の法令解釈の考え方(ルール)を逸脱した違法無効の暴挙であることに関する質問主意書

一 令和二年二月十九日の衆議院予算委員会において近藤内閣法制局長官から答弁のあったように歴代政府が答弁している法令解釈についての政府としての考え方(ルール)における「当該法令の規定の文言、趣旨、立案者の意図、立案の背景となる社会情勢、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意」等の条件に照らして、なぜ、検察官に勤務延長制度を適用する解釈変更が至当として合法になるのかについて、当該条件に係る具体的な政府の認識を当該法令解釈の考え方(ルール)に当てはめて論理的に説明されたい。

二 歴代政府が答弁している法令解釈についての政府としての考え方(ルール)における「当該法令の規定の文言、趣旨、立案者の意図、立案の背景となる社会情勢、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意」等の条件に照らして、なぜ、検察官に勤務延長制度を適用する解釈変更が、国家公務員法第八十一条の二の「法律に別段の定めのある場合を除き」の規定を踏まえても至当として合法になるのかについて、当該条件に係る具体的な政府の認識を当該法令解釈の考え方(ルール)に当てはめて論理的に説明されたい。

三 前記一について、法務省は「社会経済情勢の多様化、複雑化に伴い犯罪の性質も複雑困難化する状況下において、国家公務員一般の定年の引上げに関する検討の一環として、検察官への勤務延長制度の適用について改めて検討したところ、勤務延長制度の導入当時の検討の過程や理由等については現時点では必ずしも詳らかではなく、また、○検察庁法上、検察官について勤務延長を認めない旨の特例は定められていないこと ○検察庁法で定められる検察官の定年による退職の特例は、定年年齢と退職時期の2点であり、国家公務員が定年により退職するという規範そのものは、検察官であっても一般法たる国家公務員法に拠っているというべきであること ○特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に、定年制度の趣旨を損なわない範囲で定年を超えて勤務の延長を認めるとの勤務延長制度の趣旨は、検察官にも等しく及ぶというべきであること などからすれば、検察官に国家公務員法上の勤務延長の規定が適用されるとの解釈変更は許されるものと考えている。」との見解を示しているが、「勤務延長制度の導入当時の検討の過程や理由等については現時点では必ずしも詳らかではなく、」の趣旨について「当該法令の規定の文言、趣旨、立案者の意図、立案の背景となる社会情勢、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意」との関係を示しながら説明されたい。

四 前記一について、「勤務延長制度の導入当時の検討の過程や理由等については現時点では必ずしも詳らかではなく、」ということは、「当該法令の規定の文言、趣旨、立案者の意図、立案の背景となる社会情勢」について政府として具体的に把握(認識)しておらず、また、それが故に「議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意」についても政府として判断できないということであり、それはすなわち、検察官への勤務延長制度を適用する解釈が合法であることの説明の論理的な根拠を欠くことを意味するのではないか。政府の見解を示されたい。

五 前記二について、「勤務延長制度の導入当時の検討の過程や理由等については現時点では必ずしも詳らかではなく、」ということは、国家公務員法第八十一条の二の「法律に別段の定めのある場合を除き」の規定について「当該法令の規定の文言、趣旨、立案者の意図、立案の背景となる社会情勢」について政府として具体的に把握(認識)しておらず、また、それが故に当該規定に関する「議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意」についても政府として判断できないということであり、それはすなわち、検察官への勤務延長制度を適用する解釈が合法であることの説明の論理的な根拠を欠くことを意味するのではないか。政府の見解を示されたい。

六 前記二について、前記三の中で掲記した「○検察庁法上、検察官について勤務延長を認めない旨の特例は定められていないこと ○検察庁法で定められる検察官の定年による退職の特例は、定年年齢と退職時期の2点であり、国家公務員が定年により退職するという規範そのものは、検察官であっても一般法たる国家公務員法に拠っているというべきであること ○特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に、定年制度の趣旨を損なわない範囲で定年を超えて勤務の延長を認めるとの勤務延長制度の趣旨は、検察官にも等しく及ぶというべきであること」との事項は、国家公務員法第八十一条の二の「法律に別段の定めのある場合を除き」の規定に係る「当該法令の規定の文言、趣旨、立案者の意図、立案の背景となる社会情勢、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意」等に関しての論理的な説明とはなっていないものであるのではないか。政府の見解を示されたい。

七 前記一から六について、検察官にも勤務延長制度を適用できるという政府の法令解釈は、「憲法を始めとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものであり、」との考え方を逸脱し、非論理的な法の支配に反する追求行為の結果として示されたものであり、まさに当該考え方を離れて政府が自由に解釈を変更したものであって、まさに政府による法令解釈の便宜的かつ意図的な変更そのものであるのであり、それが故に、政府の法令解釈及び法規範そのものに対する国民の信頼を回復不能なまでに損なわせしめる暴挙ではないか。政府の見解を示されたい。

八 一般論として、政府の法令解釈において、「制度の導入当時の検討の過程や理由等については現時点では必ずしも詳らかではなく、」という見解にあるにもかかわらず、従来は法律的に許容されていないと解されてきた制度の適用を「適用できる」とするなど従来と真逆の解釈に変更した例があるのか。具体的に示されたい。

  右質問する。