質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第一五一号

羽田空港新飛行経路が視覚障がい者等に与える影響に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年六月十六日

木村 英子


       参議院議長 山東 昭子 殿



   羽田空港新飛行経路が視覚障がい者等に与える影響に関する質問主意書

 二〇二〇年三月二十九日より羽田空港において、新飛行経路(以下「新ルート」という。)の運用を開始しましたが、この新ルートは、都心の真上を飛行するものであり、その安全性や騒音への懸念が多く残るものとなっております。
 実際に、新ルートの運用開始に対しては、五月末までに騒音などの苦情が二千五百件以上寄せられたとの報道もなされており、六月十二日には住民の一部が国に対して提訴をしています。このように、新ルートに対しては、住民らの反対をはじめ、新ルートの影響を受ける複数の地方公共団体(港区や品川区)の議会で反対の決議がなされるなど、見直しを求める声が多数寄せられている状況です。
 特に騒音による問題としては、障がい者への影響が大きいことが挙げられます。「障がい」といっても、障がいの種別・程度は多様で、社会環境によってその身体的、精神的反応は異なります。
 特に視覚障がい者の人は、生活のすべてにわたり、耳で聞く音を頼りにしており、一つ聞き間違えただけでも、命の危険にさらされてしまいます。
 例えば、視覚障がい者の人が単独で歩行する場合、自動車のエンジン音やマンホールの下水音、自動販売機のモーター音、道行く人の会話の声、コンビニの入口のチャイム等々、街中を歩く際には、周囲の音すべてを頼りにして行動をしていますが、その頼りの音が、新ルートの飛行機による騒音によってかき消されてしまい、視覚障がい者の行動や生活に著しく支障をきたし、自動車への衝突などの危険を生じることがあります。
 この様な危険を回避し視覚障がい者の命を守るためには、横断歩道の信号機を音響式にする必要があります。実際に、信号機が音響式になっていないために、音の判断を誤って、事故に遭ってしまった人もいます。
 また、騒音の影響を受けるのは、外にいるときだけではありません。家の中においても視覚障がい者は様々な音を頼りに行動していますが、騒音により、会話、ラジオやパソコン等が聞こえにくくなるため、情報の遮断がなされ、方向の見当違いなどの行動障がいも生じます。
 これに伴う精神的なストレスは相当なものです。飛行ルート直下の住宅であれば二重窓等の防音対策を得られますが、少しでもルートから離れた住宅ではその対象とはなっていませんし、そもそも生活をしていて窓を自由に開けられないこと自体が強いストレスになります。
 以上のように、騒音によって多くの障がい者が困難を強いられ、生活を壊される状況を放置し、安全性や騒音の問題を解決しないまま、新ルートの運用開始を断行したことには大いに疑問がありますので、新ルート運用開始の必要性や騒音対策等の現状について質問いたします。

一 新ルートの運用開始の必要性について伺います。

1 新ルート運用の目的は、国際線増便による首都圏の国際競争力の強化、東京オリンピック・パラリンピック開催の円滑化などが挙げられています。しかし、新型コロナウイルスの影響により国際線の需要は著しく落ち込み、大幅な減便をしているうえ、東京オリンピック・パラリンピックの延期が予定されています。様々な懸念を抱えている現状において、再検討が必要な状況にあると考えます。
 なぜこの状況において新ルートの運用を開始したのか、その理由と必要性についてお答えください。

2 住民や地方公共団体から反対の声が上がっており、住民の健康被害などの懸念があるにもかかわらず、なお市街地の真上を通る新ルートの運用を開始しなければならない理由があるのかお答えください。

3 障がい者の方々から、健康や生活への影響を懸念する声を聞いておりますが、新ルートの運用開始にあたり、地域住民に対する説明会を行った中で、国土交通省として聞き取った障がい者の団体や個人からの意見・苦情・不安の声など、その具体的な内容をお答えください。

4 障がい者の方々からの反対や不安の声に対し、合理的配慮を含めて、どのような検討をし、新ルート運用の開始を決めたのかお答えください。

二 障がい者に関する騒音対策について、伺います。

1 国土交通省として障がい者に対する騒音の影響について、専門家及び厚生労働省担当部局とどのようなご検討をされたのか、具体的な検討内容についてお答えください。

2 国として、新ルートの運用開始にあたり、視覚障がい者の社会参加を保障するための騒音に対する合理的配慮として、横断歩道に音響信号機を設置するために関係省庁等にどのような要請と予算措置を講じたか、実際に何機の音響信号機を新設したのかについて、具体的にお答えください。

3 家の中でも騒音によって視覚障がい者の人が方向感覚を失うなど、生活に支障をきたしてしまうことを踏まえ、どのような是正措置を検討し、どのような対策を実際に行ったかをお答えください。

三 今後の新ルートについて伺います。
 令和二年六月三日、衆議院の国土交通委員会での質疑において、赤羽国土交通大臣が「新経路の固定化を回避するための方策を早急に検討するための有識者及び専門家による検討会議を今月中にも立ち上げるよう指示をした。」旨の発言をしております。
 予定されている検討会議では、より実態を反映させた議論となるように、現に新ルートによる影響を受けている障がい者、住民、地方公共団体の代表を委員として入れることが必要と考えますが、どのような立場の委員を含める予定かお示しください。

  右質問する。