質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第一四六号

満員電車をなくすためのダイナミック・プライシングの実施に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年六月十一日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   満員電車をなくすためのダイナミック・プライシングの実施に関する質問主意書

 新型コロナウイルス感染症の感染予防対策として、満員電車をなくすことは、所謂、政府が推進している「新しい生活様式」の一つとしても重要なことであると考える。政府がテレワークを推進していることも、満員電車をなくすための施策の一つだと理解している。一方で、テレワークだけでは遂行できない業務・業種があることも理解している。
 しかし、緊急事態宣言が解除されてから、東京都内の電車の乗客数は、随分増加していることは明らかである。
 二〇一六年の東京都知事選挙で、小池百合子氏(現東京都知事)は「満員電車ゼロ」の公約の実現方策として「二階建ての車両を導入する」ことを掲げた。あれから四年が経過するわけだが、湘南新宿ラインの一部車両に見られるような二階建て電車が大増設される動きもなければ、満員電車も一向に解消されていない。
 そこで、満員電車対策として「ダイナミック・プライシング」によって解決したらどうだろうか。「ダイナミック・プライシング」とは、商品やサービスの価格について、一定の標準価格を設定し、その商品・サービスの売れ行きにより価格を随時変動させる仕組みである。かねてより、サービスの分野では、集客が見込めるサービス(例えば、スポーツ観戦チケットにおける、人気チームとの対戦カード)の価格を高めに設定し収益を増やす一方、集客の見込めないサービスは価格を下げて集客数を増やす戦略が行われており、これが「ダイナミック・プライシング」の端緒ともいえるが、近年ではこれを進化させ、過去の販売実績データなどのビッグデータを人工知能(AI)が学習して売れ行きを予測し、販売状況に応じて収益最大化が見込める最適価格をシステムが推奨し、その推奨価格を参考にして価格を随時変動させる仕組みが導入されている。
 今回提案する「ダイナミック・プライシング」のやり方はいたって簡単で、新幹線のグリーン車やグランクラスを普通席より高く、飛行機のビジネスクラスの値段をエコノミークラスの五倍程度にするのと同じように、満員になる時間帯の乗車券を高く設定するだけである。通勤・通学ラッシュの時間帯でのダイナミック・プライシングは、一、二時間限定で構わない。大勢の人が殺到する朝と夕刻の時間帯に限定して、電車賃を高くする。需要が高まれば高くなる、当たり前の市場原理である。
 このように時間帯によって料金を高くすることで、交通費支給額を低く抑えたい企業側の思惑と相まって、満員電車は緩和されるだろうし、高い料金を避けることが結果として、満員電車を緩和し、分散通勤・分散通学、さらには、テレワークの推進・働き方改革にもつながるのではないだろうか。
 現行制度上でこのような運賃の決定方法を鉄道事業者が実現するには、まず現行運賃の上限引き上げを鉄道事業法十六条一項に基づき国土交通大臣に認可申請を行い、認可を受けた後、運賃引き下げの方法を同法十六条三項に基づき国土交通大臣に届け出る、という方法を取ることになると思われる。
 右を踏まえて、以下質問する。

一 政府が現在検討している満員電車をなくすための具体的な施策、または、これからやろうとしている施策にはどのようなものがあるか。

二 ダイナミック・プライシングの導入は満員電車を解消すると思うか。政府の見解は如何。

三 鉄道事業者がAIを用いて運賃の割引率を決定するため、鉄道事業法施行規則三十三条に基づいて運賃(料金)設定(変更)届出書(以下「届出書」という。)を届け出る際について

1 ビッグデータをもとにAIが日ごとに乗車時点の時刻によって運賃の割引額を決定する場合、AIが学習するためのビッグデータ等を全て紙に印刷することは現実的ではない。ハードディスク等を用いて、ビッグデータ、AIの概要、AIが作成した成果物を届出書に添付しなければならないか。それとも、AIの概要を届出書の別紙に添付すれば足りるか。あるいは、他の手法を取ることになるのか。

2 日ごとに乗車時点の時刻によって運賃の割引額を決定する場合、毎日届出書を国土交通大臣に届け出なければならないのか。それとも、AIによるダイナミック・プライシング導入時に届出書を国土交通大臣に届け出るだけでよいのか。
 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法七十五条二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。また、答弁書の文字がいわゆる青枠の五ミリ以内に収まっていなくてもかまわない。

  右質問する。