質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第一三四号

我が国における難民認定の状況に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年六月二日

石橋 通宏


       参議院議長 山東 昭子 殿



   我が国における難民認定の状況に関する質問主意書

一 難民認定の実態について

1 難民認定申請者について

(1) 二〇一九年末時点で、難民認定申請中の者の数を示されたい。

(2) 二〇一九年末時点で、審査請求(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の九第一項の規定による異議申立てを含む。以下同じ。)中の者の数を示されたい。

(3) 二〇一九年の難民認定制度の「濫用」の件数を示されたい。

2 難民認定者及び人道配慮による在留許可者について

(1) 二〇一六年から二〇一九年に難民として認定された者(審査請求手続における認定者を含む。以下同じ。)百三十四人のうち、複数回申請者及び退去強制令書発付後に難民として認定された者の数を示されたい。

(2) 二〇一六年から二〇一九年に難民としては認定されなかったものの、人道的な配慮により在留を認められた者(審査請求手続の結果、在留を認められた者を含む。)二百十九人のうち、複数回申請者および退去強制令書発付後に在留特別許可された者の数を示されたい。

(3) 二〇一七年から二〇一九年に難民として認定された者全てについて、難民認定申請から難民の認定を受けるまでに要した期間を示されたい。仮に統計がとられていないのであれば、二〇一五年九月に公表された「難民認定制度の運用の見直しの概要」で政府が述べているところの「真の難民の迅速かつ確実な庇護の推進」が実現されているか否かを評価することは不可能と考えるが、政府の見解を示されたい。

(4) 難民認定事務取扱要領は、難民認定申請案件を「難民条約上の難民である可能性が高い案件、又は、本国が内戦状況にあることにより人道上の配慮を要する案件」(A案件)、「難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を主張している案件」(B案件)、「再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している案件」(C案件)及び「上記以外の案件」(D案件)の四類型(以下「四類型」という。)に振り分けている。二〇一九年に難民として認定された四十四名について、四類型別の内訳を明らかにされたい。

(5) 法務省は、二〇一五年九月に公表した「難民認定制度の運用の見直しの概要」の5の(1)においていわゆる「新しい形態の迫害」を申し立てる者が難民条約の適用を受ける難民の要件を満たすか否かの判断に関して「難民審査参与員が法務大臣に提言をし、法務大臣がその後の難民審査の判断に用いるようにするための仕組み」を構築するとしている。
 この「仕組み」に関して、参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対する答弁書(内閣参質一九八第六四号)の「一の2の(3)及び九の1について」で「現在においても引き続き検討中」とされていたが、現在の状況を明らかにされたい。
 また、二〇一九年に難民として認定された者のうち、いわゆる「新しい形態の迫害」に当たる者は含まれているか。含まれているのであれば、その人数及びどのような迫害を受けていたのかを明らかにされたい。

3 一次審査について

(1) 二〇一九年に難民不認定処分を受けた者のうち、事情聴取が一度も行われなかった事案はあるか。あれば、その理由を明らかにされたい。

(2) 二〇一九年三月に公表された「令和元年における難民認定申請者数等について」によれば、二〇一九年の一次審査処理数は一昨年と比べて約四十七パーセント減少し、平均処理期間は約十七月と、二〇一〇年以降最長を記録している。本来、難民認定申請は速やかに処理されるべきだが、処理数が大幅に減少している理由は何か。また、処理数を一昨年の水準に戻すために、どのような措置を講じる予定か。政府の見解を示されたい。

4 訴訟について

 難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、二〇一九年に提起された件数及び終局裁判がなされた件数をそれぞれ明らかにされたい。加えて、難民不認定処分の取消し若しくは無効が確定した後、又は、難民認定処分の義務付け訴訟で国側が敗訴した後、難民認定がなされず、在留資格が付与されなかったケースはあるか。あれば、その理由を併せて示されたい。

二 空港等での庇護申請関係の統計について

 前述した通り、政府は二〇一五年九月から「難民の迅速かつ確実な庇護」を推進するための難民認定制度の運用の見直しを行っているという。空港は難民保護のまさに最前線であり、上陸審査時に難民認定申請を希望した者に適切に対処できているかどうかは、「難民を迅速に庇護」できているか否かを示す、重要な指標である。そこで、以下質問する。

1 二〇一九年に一時庇護上陸許可を申請した者の数及び許可状況を国籍別に示されたい。

2 二〇一八年及び二〇一九年の我が国の空港における難民認定申請件数を、申請が行われた空港別に示されたい。仮に二〇一七年までは統計がとられていたのにもかかわらず、二〇一八年以降統計がとられておらず、空港における難民認定申請者の実態が把握されていないとすれば、難民条約第三十三条第一項が定めるノン・ルフールマン原則が遵守されているか否かを検証することすら不可能である。当該統計をとることに対する、政府の見解を示されたい。

3 前記二の2に関し、二〇一九年に空港にて難民認定申請をした者について、仮滞在の許可、不許可別の人数を示されたい。また、仮滞在が不許可となった者について、不許可理由別の人数を明らかにされたい。

三 難民認定申請者の収容について

1 二〇一九年末時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数と、そのうち、難民認定申請中、審査請求中及び難民不認定処分の取消しを求める訴訟係属中の者の数をそれぞれ明らかにされたい。

2 二〇一九年に出入国在留管理庁の収容施設に収容された者の数と、そのうち、空港から移送された者の数を、収容施設別に示されたい。

四 保護費の支給状況について

1 二〇一九年度(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間。以下四の5まで同じ。)について、保護費を申請した者の数、保護費を受給していた者の数をそれぞれ明らかにされたい。

2 二〇一九年度に保護費を受給していた者の申請から受給決定までの平均待機期間、平均受給期間をそれぞれ示されたい。

3 二〇一九年に保護費を申請したが受給できなかった者の数、国籍の内訳、申請から結果が出るまでの平均待機期間を明示されたい。

4 二〇一九年度の難民認定申請者緊急宿泊施設(以下「ESFRA」という。)の利用者数を性別、国籍別に示されたい。また、保護費の申請からESFRAの利用開始までの平均日数、最短日数及び最長日数をそれぞれ示されたい。

5 二〇一九年度について、①保護費、②生活費、③住居費、④医療費のそれぞれの支給額を示されたい。また、二〇一八年度及び二〇一九年度のESFRAの予算額及び執行額をそれぞれ示されたい。

五 難民認定制度運用の見直し状況検証のための有識者会議について

1 二〇一八年十月三十一日の第二回検証結果の公表以降の、難民認定制度運用の見直し状況検証のための有識者会議(以下「有識者会議」という。)の開催状況を明らかにされたい。仮に第二回検証結果の公表以降、有識者会議が開催されず、二〇一六年十二月より後に難民認定手続が終了した案件に関して、有識者会議による検証が全く行われていないとすれば、この間に行われた四類型への振り分けの適正性は担保されていないと考えられるが、政府の見解を示されたい。

2 有識者会議の今後の開催予定を明らかにされたい。

  右質問する。